連載

どうやって調べてる? 情報収集能力をあげて介護をラクにするヒント

 東京―盛岡の遠距離で、認知症の母の介護を続けている”くどひろさん”こと工藤広伸さんは、ブログや著書で介護経験やエピソードを公開している。

 息子の視点で“気づいた”“学んだ”数々の「介護心得」を紹介する当サイトの人気シリーズ、今回のテーマは、情報収集について。介護者は、まず情報を集めることが大切と説く工藤さんのアドバイス、必見だ。

 * * *

 近所のスーパーである商品を定価で購入したら、隣のスーパーは値引き中でがっかりしたという経験は誰でもあると思います。同じようなことが、認知症の病院選びでもあります。A病院と隣のB病院、同じ「もの忘れ外来」であっても、診察や薬の処方が違い、認知症介護の大変さが大きく変わってしまうということが、介護家族の間で起きています。

 間違った選択をしないために、介護者のすべき行動は「情報を集めることに尽きる」とわたしは思っていて、「介護者がきちんと情報を集められないと、認知症の人は救えない!」と言っても過言ではないと考えています。今回は、情報収集のコツなど、わたしのやり方をお伝えします。

情報量は、「人」「地域」によって差が生じている

 わたしはブログやコラムを書いているので、毎日認知症に関する情報収集をしています。その中で感じたことは、情報の格差に「地域によるもの」と「人によるもの」の2つが存在するということでした。

 まず、地域格差は確実に存在します。例えば、もの忘れ外来を探すとき、インターネットで病院の口コミを検索すると、母が居る岩手県盛岡市の病院の書き込みは、本当に少ないです。

 しかし、わたしが居る東京の病院を検索すると、Amazonレビュー程は充実していないものの、相当数の口コミを見つけることができます。

 介護施設を探すときも同じで、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの口コミは、都市部と地方ではかなりの差があります。祖母を療養型病床からサ高住に移そうとしたときも口コミを調べたのですが、1件もヒットしませんでした。岩手県の県庁所在地でも、この程度なのかとショックを受けたものです。

 もうひとつは、介護者自身の情報収集能力の差です。病院や介護施設の情報、認知症のお薬、新しいケア方法などの情報を、ご自分で集めているでしょうか? 医師やケアマネージャー任せになってはいないでしょうか?

 わたしのブログへのコメントを見て驚くのは、介護家族で医師・介護職以上に勉強をしているのではないかと思える人がたくさんいらっしゃることです。またその一方、認知症カフェに参加すると、全く情報がなく、何をしたらいいかとまどっている介護者も見受けます。

 このように、地域や個人で情報量に大きな差があり、それによって認知症ご本人の症状の進行や、介護へのストレスも大きく変わるように思います。

 情報量が多く、それをうまく活用できている人は、ストレスも少なくなる傾向にあるのではないでしょうか。

 これら大きな差を埋めるために、いかにして情報収集をするのが良いのか…。今回、わたしがオススメしたいのは『Facebook』の活用です。

実名で情報発信する医師や介護者をFacebookで見つけよう

 わたしはFacebookやTwitterといったSNSをよく活用しています。SNSで繋がった医療・介護職の方もかなり多くなりましたが、そういった方々は、積極的に情報を発信しているのです。

 よく病院や介護施設は、ホームページを開設していますが、診療時間など基本情報のみが多く、ホームページ内で、医師やスタッフがブログを運営しているところは、あまりありません。

 本当はブログなどで、認知症に対する医師の思いや診療方針の発信があり、それを見て、理解することで、病院に対する不安を少しでも減らしたいところなのですが、たとえブログなどがあったとしても、その更新頻度も少なく、中には放置している病院や施設が多いようです。

 Facebookでは、実名で自分の思いを気軽にアップできます。

 ホームページ以上に更新頻度が多い医師が、たくさんいます。また、発信が「自分自身の言葉」でされているという点もオススメの理由です。そこから、医師の日常を垣間みて、人柄を読み取ることができると感じています。

 本など著作のある医師もいますが、Facebookの方がより生の声を拾うことができるのではないでしょうか。今、どんな診察をして、どんな新薬に興味があるか、看護師などスタッフとの交流などもうかがい知ることができます。

 こういった情報は、医師に「友達申請」しなければ、見られないと思っている方もいると思いますが、フォローすれば大丈夫。気になる医師の名前をFacebookで検索して、フォローしてみましょう。また、医療・介護職の方に友達申請することで、「友達の友達」で間接的に情報が入ってくることがあります。わたしも直接知らない医師、介護職の方の情報をたくさん目にする機会があって、面白い医師を見つけることもあります。 

 同じように地域の情報に関しても、口コミサイトを閲覧するよりFacebookのほうが充実した情報を得ることができると実感しています。
 

いい病院選びには、情報取集はかかせない 

 わたしは、SNSを使って自ら発信している医師を尊敬しています。そういう医師は好奇心が高く、新しい治療法やお薬に関しても情報を集める人なのだろうと思っているからです(もちろん、熱心な医師でも残念ながら、全く発信のない方もたくさんいると思います)。

 また、そういった発信している医師とは、初診の時でも以前会ったかのような気持ちがして、安心感があります。

 少しでもいい病院を選ぶために、情報をつかんでおくことは大切だと思います。

 10年前と比較すると、なかなか知る機会がなかった医師の情報を簡単に得られるようになりました。それらをうまく活用することが、認知症の人をいい方向へと導くと信じて行動しています。

 介護者の情報収集能力が今、問われているのだと思います。

 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。 ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/

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