2017.04.21 |ヘルス

もしも親が認知症になったら…本人にどう告知したらいい?

 盛岡に住む認知症の母を東京から遠距離で介護している工藤広伸さんが、自身の経験をブログで発信し、話題になっている。家族の視点で”気づいた”、”学んだ”エピソードは、介護の場で役に立つ情報ばかり。当サイトのシリーズ「息子の遠距離介護サバイバル術」でも、介護中の人へのアドバイスのみならず、介護を始める前の人にも知ってもらいたいことが満載だ。

 今回のテーマは、「親への認知症の告知について」。もし、親や家族が認知症になったら、告知すべきかどうか、するならどうやって…と悩んでしまう人も多いだろう。工藤さんはどうしたのだろうか?

alexraths160700029.jpg - female doctor explaining diagnosis to her senior patient

親に認知症であることを告知する場合どのようにすべきか、悩む人は多いはず(写真/アフロ)

 * * *

「あなたは、アルツハイマー型認知症です」

 もし医師にこう言われたら、どのように感じますか? 認知症に対してどれだけ知識があるかにもよりますが、多くの人はショックを受けると思います。何も分からなくなる、寝たきりになる、早く死んでしまうといった、認知症に対する一部のネガティブな情報が不安にさせるのだと思います。
 
 母(73歳・要介護1)は認知症と診断されてから5年目になりますが、医療・介護職の皆さんの力を借りて、今までと変わらない生活を送っています。分からないことやできないこともありますが、元気にデイサービスに通っています。寝たきりになっていませんし、分かっていることもまだまだあります。必ず全員が、同じように進行するわけではありません。
 
 今日は、認知症という病気を当事者にどう告知するのがいいのか、自分の経験を踏まえてお話したいと思います。

認知症の母への告知はどのように行われたか

 わたしは、母をもの忘れ外来へ連れて行く前に、認知症の勉強をしました。そのおかげで、認知症に対するネガティブイメージはだいぶ和らいでいたのですが、母は自分が認知症だと全く思っていないし、怖いイメージを持っているようでした。

 なので、母が認知症だった場合、告知は慎重に行わないと、ショックを受けると思っていました。そこで、診察の際、医師にもその旨を伝え、告知は家族にのみにしてほしいとお願いしました。
 
 しかし、なんとその医師は「アルツハイマー型認知症です」と、母にはっきり伝えてしまったのです。正直驚いたのですが、医師は続けてこう言いました。
 
「認知症に対する社会の偏見は、まだあると思います。同じ病気でも、風邪をひいた人への偏見はありますか? 認知症の人だけ責めるのはおかしいです」
 
 認知症に対する医師の考えが理解できたので、わたしは信頼できる人だと思えたのですが、母はショックを受けただろうと思いました。

 ところが、母を病院に連れて行く際に、「認知症の診断のため」と伝えていなかったこと、手足が不自由なので、その診察をしていると終始勘違いをしていたことが理由で、結局母は、医師からの告知を自分のことではないと思ったようでした。

「認知症」と伝えず「年相応のもの忘れ」を多用

 その時から、母を介護して5年目になりますが、はっきり「認知症だよ」と伝えたことは一度もありません。
 
 今でも「認知症」という言葉は極力使わないよう意識していて、「年相応のもの忘れ」という言い方を多用しています。その方が、母が安心して暮らせると思うからです。

「認知症」と「年相応のもの忘れ」の間には、言葉の重みに大きな差があるように思います。「認知症」にはネガティブなイメージがあり、「年相応のもの忘れ」には老化のひとつだからしょうがないという「安心感」があるように思います。母には嘘をついていることになりますが、それでも不安をあおるよりはいいと考えて、今もこの言葉を多く使うようにしているのです。
 
 とはいえ、現在、母は自分を認知症だと自覚しているようです。ものわすれ外来への通院が続いたり、認知症の薬を服用したりすることで、何も言わなくても自然と理解し、少しずつ受け入れていったのではないかと思います。
 
 以前このコラムでご紹介した、認知症オススメの本『クロワッサン特別編集 認知症を生きる: 正しく知ることが予防と治療への近道 』(マガジンハウスムック)。この本に登場する医師であり首都大学東京・大学院教授の繁田雅弘さんは、「保留にする」という診断を行うこともあるそうです。

「認知症を認めたくない」、「家族に知られたくない」という本人の気持ちを尊重しながら、告知の仕方を探るそうです。これくらい、認知症ご本人のことを考えてくれる医師に出会えればいいのですが…。  

「早期発見、早期絶望」にならないために…

 NHKの認知症番組で、「早期発見、早期絶望」という言葉を聞いて驚きました。認知症の疑いがあったら、すぐ病院へ連れて行って「早期発見」をしましょうと言われているのに、その結果が「早期絶望」だったというのです。介護する家族ではなく、認知症ご本人にとって医療や介護で助けになる団体やシステムがなく、どう生きて行けばいいか分からず、早期に受診したのに絶望したという話でした。

 今は、「日本認知症ワーキンググループ」という認知症当事者の会ができましたが、それでも認知症当事者の声というのは、まだまだ知られていないのが現状です。

大切なのは「伝える医師の配慮」と「受け取る当事者と家族の心の準備」

 認知症と聞いて、介護するご家族もショックかもしれませんが、一番ショックなのは認知症になったご本人ではないでしょうか?

 そのことを理解しつつ、告知する医師の配慮がとても大切です。わたしのブログに寄せられたコメントで「すぐ娘さんのことが、分からなくなりますよ」と医師に言われ、ショックを受けたご家族から連絡が来ました。「必ずしもそうではないですよ」と、わたしは返信をしました。
 
 ただ告知すればいいわけではなく、ご本人にとってベストな方法を医師と家族で考えるべきです。認知症ご本人にとっても、早期発見、早期絶望にならないよう慎重な対応が必要だと思います。

 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。 ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/

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