2018.09.04 |暮らし    1

大規模災害、その時!「 離れて住む高齢の親」守る知恵

 西日本豪雨で甚大な被害が発生したのはつい2か月前のことだが、最近でも記録的なペースで発生した台風が相次いで上陸するなど、全国各地が大規模な自然災害に襲われている。

 心配の種は「離れて暮らす大切な家族」だ。いざ災害が起きた時、手を取って一緒に避難することができない場合、どうすればいいのか。

西日本豪雨での救助活動

西日本豪雨での救助活動(写真/共同通信)

いざという時の「近くの他人」

 近隣住民とのつながりが、時に人の命を救う。直近の実例で注目されたのが、西日本豪雨の被災地である広島県東広島市の戸建住宅地「洋国団地」だ。

 同地区で策定された防災マニュアルでは、高齢者などの避難を手助けする担当者をあらかじめ決めていたため、土石流が団地を襲う前の晩のうちに避難を済ませるなどし、約50世帯100人の全員が無事だった。

「近くの他人」に助けてもらえるかが、被災者の生死を分ける。離れて住む両親が阪神大震災で被災した66歳男性の証言だ。

「両親の住むアパートでお隣だった若い夫婦に、里帰りした際に小まめにお土産を渡すなどしていた。震災でタンスの下敷きになった母を助け出してくれたのはその若夫婦でした。そうと知らず私がアパートまで駆けつけると、家のドアに避難した先がどこかまで書いてくれていた」

 近隣住民に頼れそうな人が見つからない場合でも、「地域」とつながる努力は必要だ。防災の専門家である危機管理教育研究所代表の国崎信江氏はこういう。

「自治会長や消防団の人の連絡先を調べて、親子で把握しておくという方法があります。そうした人たちの連絡先は自治体を通じて確認ができる。たとえば、災害時に親と連絡がつかない時に、現地で安否を確認してもらえるようお願いもできるわけです」

「必需品」の発送で復旧をサポート

 親に限らず、遠くで暮らす親戚などが被災した場合、安否が確認できた後は、「物資」を送ってサポートすることも考えたい。ただ、”とにかくすぐに必要そうなものを送る”という考え方は禁物だ。寸断された物流網をさらに滞らせることになってしまう恐れもあるし、浸水した被災者宅などの場合、不要不急のものを保管するスペースもない。

「必要なものを聞いて送るのが基本ですが、たとえば台風が通過した後に、自宅やその周辺の片付けをしなければいけない状況だと、長靴や災害用(耐切創)手袋を送ってあげると役に立つと思います。そうした必需品が、近所で売り切れていることもあるので」(前出・国崎氏)

 他にも、阪神大震災の被災者からは「単三、単四の電池は避難所に有り余るほどあったのに、両親の補聴器用のボタン型電池がなかなか手に入らなかった」(60代女性)といった証言もある。“意外なニーズ”が存在するので、直接聞き取り、物流網の回復を確認して発送するのが望ましい。

「福祉避難所」に入れるのかをチェックする

 親が暮らしている自治体のバックアップ体制も確認しておく必要がある。

 自力避難が困難な高齢者らのために、すべての自治体には「避難行動要支援者名簿」の作成が義務づけられている。災害発生時、民生委員や防災組織のメンバーがこの名簿に基づいて、避難をサポートしてくれる仕組みだ。

 ただ、名簿に記載された人への支援態勢は自治体によって異なる。両親が要介護認定を受けているような場合は、行政の窓口にどのような支援が受けられるのかを確認しておいたほうがいい。

「高齢者や障害者を受け入れる福祉避難所の態勢も、自治体によってばらつきがある。どんな条件で要介護者などを受け入れているかをチェックしたうえで、地震や水害が起きた時のためにどんな備えが必要か、ケアマネージャーと相談しておくのがよいでしょう」(前出・江夏氏)

福祉避難所(新潟中越沖地震)

要介護者を受け入れる福祉避難所の態勢も事前にチェックしておきたい。福祉避難所(新潟中越沖地震)(写真/共同通信)

「防災バッグ」の中身は取捨選択を

 発災時、これだけを持ち出せばいいというアイテムを揃えてホームセンターなどで販売されている「防災バッグ」。ただ、高齢の親のために用意する場合、その体力等を加味して考える必要がある。

「一般的に備蓄として『3日分以上の水と食料を』というアドバイスがありますが、成人1日に必要な水3リットルを3日分と食料を合わせれば、それだけで10kgを超えてしまいます。多くの高齢者にとって、背負って歩き回るには重すぎる」(前出・高荷氏)

 最適な重さは当然ながら人によって異なるので、“親と一緒に避難所までのルートを歩いて確認”という作業をし、その際に、実際に背負って移動してみるのが望ましいという。

 試してみた結果、重いものをバッグから取り出さなくてはいけないこともある。ただ、水などの備えが少なくなるのは不安がる高齢者は少なくない。そこで、東日本大震災で被災した40代の男性は、離れて住む両親のためにこんな備えを手配したという。

「水のように重いもの、寝袋のようにかさばるものは親がいつも移動に使っている車に積んでいます。車で避難できるならそれで避難所に向かってもらえばいいし、車が動かせない状況だったとしても、まずは最低限の荷物だけ持って徒歩で避難をして、落ち着いてから駐車場まで取りに戻ることもできる」

 一方で、前出・高荷氏は「メガネ、補聴器、入れ歯、杖、持病の薬など、“これがないと生活できない”というアイテムをきちんと入れておくこと。そうしないと避難所生活が辛いものになる」という。バッグにそれらを入れているかの確認は、遠くから電話一本でもできる。

家族内の「普段のコミュニケーション」こそ大切

 前出・江夏氏はこういう。

「一緒に対策を相談しようにも、子供から唐突に『災害の時のことだけど……』と切り出された親が『俺を年寄り扱いするな』と反発することは少なくありません。大切なのは、日頃からこまめに親子の間でコミュニケーションを取っていることです。会話の流れのなかで自然に切り出せば、高齢の両親も素直に助言を受け入れやすくなります」

 正しい知識があれば、“その時”に住む場所が違っていても家族のためにできることは確実に増える。

※週刊ポスト2018年9月7日号

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  1. 上野えつ より:

    私も一人暮らしなので、自分の身は自分で守れるように、準備を十分にしなくては。隣のお宅は80代のおばあちゃんなので、今からちゃんとコミュニケーション取っておこう。

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