2018.09.06 |暮らし    5

祖母が徘徊する理由は…「私はここにおっていいんかいな」

 認知症の症状もある祖母(86才)を在宅介護しているライター・奥村シンゴ氏。突然、行き先を知らせず出かけようとすることが増えてきた祖母に、付き添ったり、その後の様子を見たりしているうちに、あることに気づいたという。

後ろ向き老女の肩に人が手を置く様子

理由や行き先もわからず「徘徊」するかのような祖母の外出。実はそれには理由が・・・(写真/アフロ)

 * * *

 介護中の祖母が、突然だまって外に出て行き、あてもなくさまよい歩くように見えた、いわゆる「徘徊」に付き添った記事(※1)を先日書いた。

→(※1)「認知症の祖母の「徘徊」に口出しせず付き添ってみたら…」を読む

 今回は、その後もたびたび出歩くその祖母に付き添ってみて、ある特徴がみえてきたので。そのエピソードを書きたいと思う。

ひたすら歩く祖母の向かった先は・・・

「徘徊」とは、認知症の症状の一つで、見当識障害や記憶障害などの影響で起こることが多いと言われてきたが、最近は、認知症の人が出歩く場合は、「徘徊」と呼ばないという動きもあると聞くが、伝えやすいように、前回同様、祖母の場合は「徘徊」とする。

 数日前の午前8時頃の出来事だ。

 祖母が「私はここにおっていいんかいな?」と言い出した。

 私は「そりゃそうやん、この家ばあちゃんの家やで」と返したのだが、祖母は「ちょっとね、行きたいところあるの付いてきてくれない?」と言う。

「今日は特に暑いし、もう少し涼しくなってからいこ」と説得したが、納得しないで出かけると言うので付いて行った。

 この前寄った郵便局とは真逆の方向、山の方に向かってひたすら歩く祖母。

 朝方とはいえ30度は超えていたはずなので、何度か「ばあちゃん帰ろ、署いし」と声をかけたが、私の思いとは裏腹にスピードを早める。

 祖母は間質性肺炎や変形性膝関節症も患っており、普段は片杖で20分位歩くのがやっと。咳こむことも増えてきたが、その時は一切なくひたすら歩き続けた。

 道順も祖母が「ここを右」、「ここを左」、「ここを真っ直ぐ」と言うのに従い、だまってそのまま付き添い、結局40分近く歩いた。そして、着いた先は駅だった。

 祖母の足がピタッと止まり「ここなの、お父さんとお母さんがいてねえ、ここの家族もいてねえ、あんたを一度連れて来させたかったのよ。よかった」と笑顔で話す。

 私はとっさに「そうか、ここやったんか。来れてよかったな、久しぶりに来れてよかったわ」と話を合わせたが、どうやら第二次世界大戦中に疎開していた故郷の富山と駅を勘違いしているようだった。

目的地に着くなり倒れ込む

 その直後、祖母は私に倒れこむようにもたれかかってきたので、至急タクシーを呼び家まで連れて帰った。

 家に戻ると、祖母は私が差し出したポカリスエットとお茶を紙コップ1杯ずつ飲み、しばらく椅子に座り、テレビを観ていたが「ちょっと少し横になってええかな?」と言い、1時間弱寝た。

 そして、起きてくると「あれ?あんた今日来てたんかいな?」と、同居する私とさっきまで一緒にいたことさえも忘れてしまった様子。

「昨日ね、もう一人の男の子と一緒に富山に行ってきたの、いっぱい歩いたけどね楽しかったわ」と言う。

 もう一人の男の子というは、誰のことなのか謎だが、「ばあちゃん、一緒に行ったのシンゴ(私)やで、覚えといてや」と冗談交じりに答えると、祖母は「あら、そうやったかいな?私も頭がボンくらになっちゃったね」と笑う。

 認知症が進行してくると、30分程寝ただけでも直近の出来事を昨日の事のように言ったり、忘れたり、昼夜逆転も増えてくるという。祖母の例も典型的な症状なのかもしれない。

一緒にいてあげるのが一番の対策かも

 こういった祖母の「徘徊」は半年程前からはじまり、現在週2回、1日で多い時に4~5回発現している。分析すると、必ず朝方かデイサービスなどの介護施設から帰宅した直後のどちらかで、私や時々来る母親が家事などで忙しくしている時間帯だ。

「誰も相手にしてくれない」というところから、祖母の不安が大きくなって混乱し、自分の居場所を求めて、どこかへ出かけて行くのではないか。

 GPSをつけたり、住所や名前を服や靴につけたり、介護施設を利用したり、気持ちを落ち着ける薬を飲ませたりするなど、「徘徊」への対策はいろいろあるだろうが、祖母の場合は、できる限り寄り添って、一緒にいてあげることで、不安な気持ちが落ち着き、結果、「徘徊」そのものを減らすのには、一番の対策になるかもしれない。

文/奥村シンゴ

プロフィール:大学卒業後、東証一部放送・通信業界で営業や顧客対応などの業務を経験し、6年前から祖母の認知症在宅介護を経験中。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディア、阪神地区のテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。他時折テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。

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▶コメント

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  1. 貧ちゃん より:

    私の父も昨年認知症発覚後3年目の夏から徘徊が酷くなりました。
    冬場は寒いので徘徊はしませんでしたが先日急に「俺はここに居て良いのか?」と言いました。
    そしてその辺りから「もう少しで俺は死ぬんだ」と言うようになりました。
    そして父がデイサービスに行っているうちに買い物に行こうと家族で出掛けたのですが思いの他時間が掛かり父のデイサービスからの帰宅時間に40分程遅れてしまいました。
    まさかこの時には父が自宅に居ないとは思っても居ませんでした。
    玄関の鍵が閉まっていない事に「おやっ?」とは思いましたが夕飯を父の部屋に急いで支度して持って行った時には既に徘徊に出て行った後でした。
    玄関には父の靴は無く家族で急いで探しましたが日が落ちるのが早く焦るばかり。
    警察にもお願いし警察犬も来ましたが手掛かりは見つからず夜中は吹雪になりました。
    一晩不安な夜を過ごし、朝また父を探しに出てお昼になった頃に警察から父を発見した連絡が入りました。
    無事生存で発見されましたが低体温症で今も入院しています。

    この記事を読んで父は大きな不安を抱えて寂しかったんだろうな、と今更ながら気がつきました。
    親子だから認知症だから色々今まであったけどなんでもっと寄り添ってあげられなかったのかと今強く思います。
    昨年秋に父の大好きな釣りに行った事、紅葉を見に行った事、もっと元気なうちにもっと沢山行っておけば良かったと思います。
    今回の徘徊で父はもう自宅に戻る事は無いと思います。
    一緒に居られた間にもっと沢山の思い出を作っておけば良かったと今は後悔の日々です。

    7+

  2. より:

    『最近は、認知症の人が出歩く場合は、「徘徊」と呼ばないという動きもある』というのは、正確な表現ではありません。

    『徘徊=あてもなくさまよう』という意味であり、他の人から見て、合っているように見えなくても本人に明確な目的意識があり、それに向かって移動することを「徘徊」とは言えないということです。

    今回の例も前回と同様で、目的があってそのための行動になっています。
    目的地やその認識が正しいかどうかは問題ではありません。

    細かいようですが、「徘徊」という言葉を用いるだけで、理解不能で意味不明な行動という風に見えてしまいます。
    そうではなく、行きたいところがあり、一緒に行ってくれないかと聞かれている。つまり徘徊ではなく、明確な意思によって、目的を持って行動していると言えるのではないかと思います。

    明確な意思と目的があり、行動していても、必ずしもそれが正確ではないというところに問題があるわけですが、それを否定せず認める。それが大事だと思います。
    自分の思いを訴えを否定されず受け入れてもらえる。
    それが安心に繋がるのだと思います。
    しかし、それは認知症だけに限らないはずです。
    全ての人が同じように感じるはず・・・

    だから、せめて「徘徊」と言わないであげて欲しいなと思います。

    9+

  3. あたし新聞 より:

    >我が家には、90歳になる、大叔母が同居しています。
    性格がとてもキツイ人で、認知症になった今でも自分の意見が通らないと怒り出します。

    面倒を見る必要など無い、
    ネコイラズでもん少しづつ食べさせて、おとなしくなって貰った方が吉(笑)

    6+

  4. 本間克之 より:

    おはようございます。
    興味深く読ませていただきました。
    微笑ましく書いてくださったと理解しました。
    「もうひとりの男の子」は著者のことだと感じます。

    10+

  5. 亜紀子 より:

    我が家には、90歳になる、大叔母が同居しています。
    性格がとてもキツイ人で、認知症になった今でも自分の意見が通らないと怒り出します。自分の両親だったらまだしも、なぜ、私達がこの人の面倒見なくてはならないのかと、余裕のない日は思ってしまいます。
    徘徊もするので、大好きだった旅行にも行けなくなりました。
    寄り添ってあげるのがいいのはわかっていますが、ひどいことをされたし、言われたので、優しくできません。本音は早く、施設にはいってほしい。
    長々と失礼しました。ここに書いたら少しスッキリしました。ストレス発散も大事ですね。。

    14+