2018.09.07 |暮らし    1

頑張り過ぎて孤立してないですか?介護の自立を考えてみた

 岩手に住む認知症の母を東京から遠距離介護を続けている工藤広伸さん。自身の介護経験の中で、学んだこと、経験したことなどをブログや書籍で広く発信中だ。

 当サイトで執筆中のシリーズ「息子の遠距離介護サバイバル術」でも、介護者ならではの視点が、すぐに役立つと話題だ。

 今回は、テーマは「介護する人の自立」。工藤さんは、ひとりで抱えがちな介護だが、人を手を借りないことが自立なのだろうかと問う。本当の自立とは何だろうか。

パズルのピースを大勢の人の手で合わせている

介護する人が自立するためには・・・

 * * *

 介護する人は、孤立しやすいと言われています。昔ほど近所づきあいもなく、地域とのつながりが薄れ、孤立しやすい部分もありますが、誰の手も借りたくないと、ひとりで家族の介護を背負って孤立する人や、そもそも介護保険サービスの利用方法が分からず、孤立している人もいます。

 介護する人が孤立ではなく、自立した生活を送るにはどうしたらいいか、今日は考えてみたいと思います。

若い頃はひとりで仕事を抱えるタイプだった

 わたしが会社員だった20代、30代の頃は、チームメンバー同士で協力し合いながら仕事を進めるのではなく、自分ひとりで仕事を完結させるタイプでした。リーダー的役割を担う立場でなかったことも、ひとりで仕事ができる理由のひとつだったかもしれません。

 誰かの手を借りるほうが、時間がかかるし、他の人との調整業務も面倒なので、すべて自分で仕事を抱えていました。しかし、この働き方が成り立ったのは、30代前半まででした。

 管理職の立場になってからは、仕事量が急激に増えたため、ひとりで仕事を回せないことに気づきました。それからというもの、チームメンバーに仕事を割り振ったり、任せたりして、仕事をすることを覚えていったような気がします。

誰かの手を借りるから成り立つ遠距離介護

 わたしの管理職時代の経験は、そのまま介護にも活かされました。

 母から「テレビが壊れたけど、どうしたらいい」という電話があっても、東京に居るわたしは何もできません。母と同じ岩手県内に住む妹に電話をして、家まで行って修理してもらいました。

 母がお薬を飲み忘れたり、財布を失くしてしまったりしたときも、岩手に居る医療・介護職の皆さんの力を借りて、解決したこともあります。

 遠距離介護ということもあって、常に誰かの手を借りないと介護が成立しない環境です。もし、誰の手も借りないまま遠距離介護を続けていたら、母の生活は荒れたものになっていたかもしれません。

 わたしは管理職を経験したおかげで、人の手を借りることに抵抗はなくなっていましたが、どうしても人の手を借りたくないと考える介護者もいます。

孤立と自立は違う

 介護を受ける親が、自ら孤立を招いてしまうケースもあります。

 どんなに体が不自由であったとしても、自分ひとりで何とかなると考え、誰の力も借りようとしません。また、他人を家にあげたくないから、介護保険の利用を申請しようともしません。

 自分の子どもに迷惑はかけられないという親としての思いから、経済的・肉体的に大変な状況になっても、子どもに連絡しようとしません。

 こういった積み重ねから、親の健康状態が悪化するだけでなく、周囲から孤立してしまい生活が立ち行かなくなってしまいます。

 このように、介護する人も介護される人も、自ら孤立を望むことがあります。「孤立していること=自立していること」のように見えるのですが、実はそうではありません。

本当の自立は依存先を増やすこと

 東京大学准教授で、小児科医の熊谷晋一郎さんは「自立は、依存先を増やすこと」だと言います。

 わたしは「自立することと依存先を増やすことは、全く逆の意味ではないのか?」と最初は思ったのですが、次のエピソードを読んで、やっと理解ができました。

『東日本大震災のとき、私は職場である5階の研究室から逃げ遅れてしまいました。なぜかというと簡単で、エレベーターが止まってしまったからです。そのとき、逃げるということを可能にする“依存先”が、自分には少なかったことを知りました。エレベーターが止まっても、他の人は階段やはしごで逃げられます。5階から逃げるという行為に対して三つも依存先があります。ところが私にはエレベーターしかなかった』
【引用元:https://www.tokyo-jinken.or.jp/publication/tj_56_interview.html(東京都人権啓発センター)】

 熊谷先生は脳性まひをお持ちで、車椅子生活を送っています。そのため、エレベーターで逃げるしかなかったのですが、健常者は3つも逃げ道がありました。

 3つも逃げ道がある健常者は、依存先がたくさんあるから自立することができます。対して、熊谷先生は依存する先が1つしかないため、自立しているとはいえないということになります。

 わたしは介護者の立場に置き換えて、この話を読んだのですが、介護者にとっての自立とは、介護保険サービス等を利用して、多くの依存先を作ることだと思います。

 孤立したまま、介護を頑張っている人はたくさんいます。そういった人の中に「わたしは誰の手も借りていないから、自立できている」と勘違いしている人はいるかもしれません。

 しかし、本当の自立とは依存先を増やすことなので、孤独に頑張ることは自立しているとは言えないと思います。

 介護者は、介護施設、デイサービス、ショートステイ、ヘルパーなど、とにかくたくさんの依存先を見つけることで、自立した生活を送ることができるのではないでしょうか。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

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  1. Mazda より:

    いつ、自分が介護する側、される側になるかわからない。
    できるだけ、知識を頭に入れることはとても大切なことだと、この記事を読んで思いました。

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