コメント日|2019.02.17
いつも楽しく拝見させていただいてます。 高齢の祖母と、気持ちは若い母の近くで住んでいます。 祖母も、自分の聞…
猫が母になつきません 第136話 「きになる」
「来たよ」「あらぁ!」
都内の施設。母の部屋をのぞくと、嬉しそうな表情で迎えてくれる。私の格好を見て、またそんな男の子みたいなズボン履いて…と昔話を楽しそうに話す母。ふと、そんな会話中、母は私を呼ぶ。
「晴子…」
まさか、ちょっと待って、それは母の妹の名。だから冗談めかして返答する。
「あら、ミキよ、あなたの娘よ、私を忘れたわけじゃないでしょ? いやよ(笑い)」
その瞬間、母の手足の指がきゅうっと委縮するのが目の端に映る。そうか。母は私が娘であることを忘れてしまっていたのだ──あの日私はやっとそう気づいた。
真矢ミキ「あの日を悲しまない」
* * *
9月上旬、情報番組『ビビット』(TBS系)の生放送を終えた真矢ミキ(54才)は取材依頼に、その時の様子を言葉を選びながらゆっくりと語った。
企業戦士の父と専業主婦の母だった。異変を感じ始めたのは2006年、父が亡くなり半年経った時だった。
「兄から電話があったんです。“母親が、ミキから毎日電話がきて大変だって言ってた”って。エッと思いました。なぜならいつも母の方からかかってきていたし、私には、“お兄ちゃんから毎日電話がきて休む暇もないのよ…”ともらしていたから。どうやら話が交錯している。入口はそんなところからでした」(真矢、以下「」内同)
とにかく近くにいなければ――真矢は母を、東京の自宅のマンションに呼び寄せた。
2人の同居生活が4年くらい続いた。そんな中2008年、真矢はバレエダンサーの西島数博さん(46才)と結婚。母との同居から離れ、徒歩3分の“スープの冷めない距離”に家を借り、母のところに行き来する生活が始まった。
「母は初めて1人生活が始まったものの、“婿”という、突如目の前に現れた予期せぬ息子に喜び、母の生活にも少しづつハリがでてきたように私には見えました」
しかし病状は知らぬ間に進行していた。料理好きの母が食事は「コンビニで済ませた」と話す。違和感をもった真矢が、1年ぶりくらいに母の部屋に入ると、ショックな光景が広がっていた。
「見たことがないくらい散らかっていました。この時初めて、“どうした母!”“気付かないうちに、暫くお部屋の中を見ていないうちに何があったの”と驚愕、そして猛省しました。いつも母を迎えに行っても、夫と私は玄関で待つことが多く、母も“部屋は恥ずかしいから見ないで”と言っていたのを真に受けて…。
見た目も会話も普段と何の変わりも見えないのです。ショックでした。母の異変に気付くどころか、喪失から徐々に楽しみが増え、気持ちが元気になってきていると思い込んでいた自分の浅はかさに嫌気がさしました」
再び新たな3人での同居を始めた。母にも仕事を分担。洗濯とお皿洗いが母の役割で、食事は真矢、夫は舞台や散歩など、母を連れ出す役目をしてくれた。しかしそんな生活から3年の2016年、玄関で尻もちをついた衝撃で母は股関節の一部である大腿骨頸部を骨折、入院することになる。
「結局、一人ではうまく歩けない母のお手洗いのことがあり、朝の仕事が早い私は、その骨折をきっかけに高齢者ホームのお世話になることを決めました。施設にいれば火の元の確認や転倒など心配事はない。一人になる時間も少なくなる。
しかし、認知症にならないためには生きた会話がないといけないと、思ったのも事実。いくら1対1で介護士が付くといっても、YES、NOの会話の連続では、やはり駄目だということも。毎日会いに行くということより、生きた会話をしなければいけなかったんだと今は思います。
母が夫を亡くし、急に1人になった家で、いろいろな悲しみやつらさを抱えきれず、気付けば現実逃避してしまったのだと今は思います。がまん強く子供に迷惑をかけたくない人で、昔から、“私の様子がおかしいな?と思ったら何も考えず老人ホームへ入れてね”と笑っていうのが口癖でした。でもそれも強がりだったり…実際のところは未だ母にしかわかりません」
冒頭の日のことを、真矢はこう振り返る。
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家の父も危うくダメかとなりましたが、復活。今はリハビリです。お見舞い、付き添いどちらにしても、生きた会話が大事なんだと気が付きました。横で座って静かにばかりしていてはダメですね。頑張ろう。
真矢ミキさんの母の介護「私を忘れてしまったあの日」を読んで思い出した。
それはある日のこと。
整形病院の待合席に座っていると、一人の女性が近づいてきて
少し離れた席に座っていた高齢の女性に話しかけた。
「久しぶり~」「どうしてたの~」「しばらく見なかったねえ」
しかし、高齢の女性からは返答がない。
「私だよ~」「やだよ~わすれちゃったんかねえ」
何度か話しかけたが返答がなく罰が悪そうに「困ったもんだねえ」と
そういって女性はリハビリ室へと入っていった。
すると、高齢の女性の隣に座っていた嫁?らしき女性が高齢の女性にこういった。
「○○さんだよ」「うちのほら、○○のうらに住んでる○○さん!」
すると、高齢の女性はこういった。
「知らないんだよ~」「ほんとに知らないんだ」「知らないったら知らない」
それ以上、二人は会話する事はなかった。
しばらく待っていると、先ほどの女性がリハビリを終え戻ってきた。
「思い出したかえ」「いつまで待ってんだい」「早く呼ばれるといいねえ」
その言葉に対し高齢の女性はただ笑顔で応えるだけだった。
きっと、本人も「忘れる」ことに対し罪悪感があるに違いない。
好んで忘れるわけではない。暖かい対応が望まれる。