2018.11.02 |暮らし   

結果、介護がラクになる!親が元気なうちに始めたい大切なこと

 岩手に住む認知症の母の東京から遠距離で介護を続けている工藤広伸さん。祖母や父の介護経験もあり、その中で学んだこと、実践したことなどをブログや書籍で広く発信中だ。

 当サイトのシリーズ「息子の遠距離介護サバイバル術」でも、家族の介護をする人ならではの視点で語られる介護術が、すぐに役立つと話題。

 今回のテーマは「エンディングノート」。祖母の終末期介護の経験を通して、工藤さんはずっと抱えている後悔があるという。その思いを生かすために、工藤さんが毎年必ず行っていることを明かしてくれた。

「エンディングノート」はなぜ必要なのか…(写真/アフロ)

 * * *

 2013年11月4日。祖母は90歳で亡くなり、あれから5年が経過しました。
 
 命日が近くなると、自分の介護ブログでエンディングノートを題材にした記事を書いたり、母の意思が示してあるエンディングノートを親子で読み直し、更新したりしています。
 
 なぜそこまで、エンディングノートを大切に考えているかについて、今日はお話しします。

祖母が亡くなっても消えぬ後悔

 認知症のテストである、長谷川式認知症スケールで30点満点中5点しか取れないほど、祖母の認知症は進行していました。自分の娘のことを忘れていましたし、財産管理や病院の手続きも、すべて成年後見人であるわたしが代行しなければならないほどでした。

 そのため、祖母の命に関わることまで、わたしが判断する必要がありました。例えば、「子宮頸がんの手術中に心停止した場合、心臓マッサージを行うかどうかを判断して欲しい」と医師から言われました。

 さらに、「心臓マッサージを行った場合、骨が弱い高齢者は肋骨が折れることがある」という説明を受けたわたしは、自分には荷が重すぎると思ったのです。
 
 また、医師から祖母の余命が半年だと宣告されたとき、本人に伝えるべきかどうかも、正直分かりませんでした。余命宣告に心臓マッサージ、介護が始まって1か月目だったわたしに、医師は次々と重要な決断を迫ってきました。

 がんの手術が終わり、いよいよ死が近くなった終末期にも、祖母の延命措置(気管切開、人工呼吸器)を行うかどうか、家族で判断して欲しいと医師に言われ、最期の瞬間もわたしに委ねられることになったのです。

 そこでまず、娘であるわたしの母、そして母の妹の希望を聞いたうえで、自分でも考えてみることにしました。結局、祖母に余命期間を伝えることはしなかったし、心臓マッサージや延命措置も行わずに、自然な形で死を迎えるという選択をしました。

 5年経った今でも、わたしが行った代理判断が本当に正しかったのかと思うことがあります。天国の祖母はひょっとして、認知症であったとしても、余命宣告して欲しかったかもしれない、なぜ延命措置をしなかったのかと思っているかもしれません。

 こういった代理判断は、介護者や家族の精神的負担が大きいことが、経験上分かりました。なので、母が意思表示できるうちに、エンディングノートを使って、母の希望を聞くようになったのです。

元気なときにこそ「エンディングノート」を書くべき

 わが家では、『もしもの時に役立つノート』(コクヨ)を使用しています。

 なぜこのノートを選んだかというと、エンディングノートが話題になった時期に、この商品を見たことがあったからです。他のノートと比較しても見やすく、同じシリーズ商品で『遺言書キット』があったことも理由のひとつです。

 このノートには、余命や病気の告知、延命治療の有無、介護方針、葬儀の中身、お墓、戒名、遺産などについて、記載できます。基本情報として、銀行口座や保険、借金、友人・知人の一覧などの記入ページもあります。

 なぜ、エンディングノートが介護者の精神的負担を減らしてくれるでしょう?

 それは、「本人の意思」という最強のカードを、介護中や終末期、死んだあとなど、あらゆる場面で利用できるようになるからです。

 もし、祖母のエンディングノートを作り、本人の意思が分かっていたら、代理判断の重圧は、もっと軽いものであったはずです。余命宣告も、延命措置も、本人の意思を尊重して、その通り実施していたかもしれません。

 介護者が本人の意思に従って行動することで、介護が終わったときに達成感が得られるような気がしてなりません。答えのない代理判断の場合、亡くなったあとで自問自答する日々が待っています。

 お葬式やお墓、相続の場面でも、故人の遺志を反映することで救われる場面はあると思います。葬儀に誰を呼び、どのくらいの規模で実施するのか、香典は受け取るのか、戒名にお金をかけるのかなど、細かいことで親族同士が争うこともあります。

 そんなとき、エンディングノートで故人の思いが確認できたなら、争いは起きないかもしれません。故人の思いが分からないからこそ、それぞれの故人に対する気持ちがぶつかって、トラブルに発展するのだと思います。

 家族が元気なときにエンディングノートを書くなんて、縁起でもないと思われるかもしれません。しかし、祖母の経験があったからこそ、わたしは瀕死の状態であった父に対して、口頭で本人の意思を確認しました。
 
 字が書ける状態でなかった父を見て、元気なときに本人の意思を確認しておけばと思いました。だから、元気なうちに笑いながらエンディングノートを作成したほうがいいと、わたしは思います。

 親子一緒にノートを作成することで、文字以外の行間部分も読み取ることができるので、話し合いながらエンディングノートを書いてみることを特にオススメします。
 
 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

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