2016.07.27 |マネー   

自己負担増の介護費用 介護保険と公的支援の併用を推奨

 老後マネーを取り巻く状況は、激変の最中にある。年金はカットされ、負担増が相次いでいる。たび重なる制度改正によってこれまでの常識が通じなくなる中、安心した老後を送るには、「備え」が必要不可欠だ。

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「要介護認定」でサービスがフル活用できる!

 要介護認定を受けるにあたって、最も重要なのは実情に即した、より重い認定を受けることだ。

 要介護度は「要支援1」から「要介護5」の7段階に分かれる。段階ごとに自己負担1割(一部は2割)で利用できる介護サービスの支給限度額が決まる。限度額が多ければ自己負担1割で使えるサービス量は増え、本人はもちろん、家族の負担も減る。

 重い認定を受けるメリットについて、ケアタウン総合研究所の高室成幸・所長がいう。

「限度額いっぱいまで使う人は稀ですが、枠に余裕があると、家族が病気などで一時的に介護ができなくなった緊急時でも、ショートステイ(短期入所生活介護)などを介護保険で利用できます。また、2015年4月以降、特別養護老人ホームに入れるのは原則、要介護3以上の人になりました。将来、特養に入ることが必要になるかもしれないので、実情に即した要介護認定を受けておいたほうがいいのです」

 認定の流れは次のようなものだ。申請後、調査員(市区町村の職員やケアマネジャー)が訪問調査を行ない、「基本調査」と「特記事項」を作成する。「基本調査」は、50項目以上の質問に対し、本人があてはまる状態を選ぶ。実際に動作を行なうよう求められる場合もある。「特記事項」は、「基本調査」について特記すべき内容や具体的な状況が記入される。「基本調査」をもとにコンピュータによる暫定の判定が行なわれ、「特記事項」や「主治医意見書」などを加味し、複数の専門家による介護認定審査会で要介護度が最終判定される。

 ただ、訪問調査は原則1回しかなく、調査時にたまたま本人の体調が良かったり、本人が調査員の前で無理して頑張って動いたりして、実情より軽く認定される例は少なくない。どうすればいいのか。

訪問調査前 「介護メモ」を準備

「ネットなどで検索すれば『歩行』『排便』『上衣の着脱』『意思の伝達』など基本調査項目が出てきますから、その項目に合わせて、家族が日頃から本人の生活状態を『介護メモ』として記録しておく。それを調査員に渡せば、『特記事項』に書き写してくれます。

 要介護認定申請後には『主治医意見書』も作成します。特に認知症の場合、まず大学病院などの認知症に詳しい専門医に診断してもらって、その診断書をかかりつけの主治医に渡して『主治医意見書』を書いてもらったほうがいいでしょう」(高室氏)

訪問調査時 「演技」は絶対にNG

 訪問調査時に大切なことは、調査員の質問に「YES」だけで答えないことだ。「ちゃんと歩けるか」を聞かれた時に、「YES」と答えるだけでは、スタスタ歩ける場合も、ずり足でようやく歩ける場合も、どちらも「歩ける」という判定になってしまう。具体的な答えを伝えた方が良い。

 また、訪問調査は「夕方」に受けるのがいいという。実際に訪問調査を行なうケアマネが明かす。

「夕方になれば、要介護者に疲れが出てくる。介護する側の負担が重くなるのも夕方以降です。その実態を調査員に見てもらうために、夕方の訪問をお願いするといい。

 ただ、重い認定にしようと歩けないように演技する人がいるが、それは絶対にダメ。我々も慣れているから、すぐわかる。演技されると、一生懸命『特記事項』を書く気がなくなる」

要介護認定後 ケアマネと事業所選びに手を抜くな

 要介護認定後は、より生活の実態に即したケアプランを作成してもらうことで、本人や家族の負担が軽減される。それを作るケアマネはどのように選べばいいのか。「所属するケアマネが多い事業所は情報収集能力に長けていることが多い。その中でも、『特定事業所(行政が手厚い人員体制であることなどを認めた事業所)』は確実にベテランケアマネがいるのでいいと思います。複数人体制の事業所なら、もし本人とケアマネが合わない場合でも、すぐに交代してくれるでしょう」(高室氏)

 また、介護サービスは提供する事業所によって同じ名称のサービスでも内容が変わってくる。たとえば入浴なら、個浴や機械浴など細かなサービスの点で異なることがある。見学などの手間をかけて、事業所を選んでいく必要がある。

 訪問調査前から認定後まで、自ら調べる必要がある。理想の介護はお金では買えないのだ。

 一定の所得があって2割負担になった人も「サービスを減らすしかない」と諦める必要はない。

 実は、今回の介護保険の負担増の改正に伴って、併用できる「公的支援」の内容が変更された。その中には、負担増だからこそ知っておくべき制度がある。

「注意すべきは、基本的にどの公的支援も申請しなければ使えないという点です。高齢で自分で申請するのが難しいという人の場合は、家族が制度の内容を把握して、代わりに申請しましょう」(前出・高室氏)

●高額介護サービス費

 1か月に支払った介護保険の自己負担額が一定の上限額を超えた場合、「高額介護サービス費」を申請すれば超過分が払い戻される。基本的に世帯単位なので、複数人が介護保険を利用していれば全員の合計自己負担額が基準となる。

 今までは月3万7200円が上限だったが、今年8月から月4万4400円に引き上げられた。新しい上限額は単身なら年383万円以上、夫婦2人なら合計で年520万円以上の収入がある場合に適用される。ただし、福祉用具の購入費、特養など施設サービスの居住費、食費など(ショートステイを含む)は制度の対象外だ。

●高額医療・介護合算療養費

 高齢者は医療費の負担も重くなる。そこで、1年間に支払った世帯あたりの「医療費」と「介護サービス費」の自己負担額の合計が限度額を超えた場合、申請すれば差額が戻ってくる「高額医療・介護合算療養費」という制度もある(8月から70歳未満の限度額が変更された)。

 ただし、世帯内で加入している医療保険制度が同じことが条件。たとえば夫が「後期高齢者医療制度」、妻が「国民健康保険制度」に加入している場合は、夫婦でも合算できないので注意が必要だ。

●介護保険負担限度額認定証

 特養など介護保険施設の居住費と食費は介護保険給付の対象外のため、所得の低い人には大きな負担になる。だが、「介護保険負担限度額認定証」を申請して認定されれば、1日あたりの限度額で済むようになる。

 ただし、8月から所得が低くても、預貯金や株、投資信託など1000万円(夫婦2人なら計2000万円)を超える資産がある場合などは適用されなくなった。

※週刊ポスト2015年8月28日号

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