2019.01.18 |ヘルス   

脳梗塞と5年後死亡率を減らす「左心耳閉鎖術」が日本導入へ

 心臓にできた血栓が、脳に飛ぶことで起こる心原性脳梗塞は、心房細動と呼ばれる不整脈が原因だ。

 心房細動の患者は約100万人と推計され、大半が抗凝固薬の治療を受けている。心原性脳梗塞の予防として左心房にある、左心耳(さしんじ)を内側から閉塞し、血栓を作らせない治療が、日本でも導入される。カテーテルで行なう低侵襲(しんしゅう)の治療で、専用の器具が保険承認される見込みだ。

心臓を図解したイラスト

心左耳の襞の多い場所の流れが、心房細動で遅くなると血栓ができやすくなる。入り口にカテーテルで閉鎖用器具を留置して塞ぐ(写真/アフロ)

心房細動は予防治療が必須だが、薬量の調節が難しい

 心臓における血栓は左心房にある、垂れた犬の耳のような形の左心耳で形成される。不整脈がない場合の左心耳の役割は体液量の調整だ。左心耳の内側の複数の壁には血圧のセンサーがある。左心房の中の圧力が高くなると尿を出し、血圧を下げるホルモンが左心耳から出て血圧を下げる。

 心臓機能が低下(心不全)すると体の中に体液が溜まり、左心房にも血液が充満して膨れる。この余分な血液が左心耳に流れ、左心房の圧を下げてしまう。他にも心不全や不整脈がある場合は複雑な構造を持つ左心耳内で血液が滞留してしまい、血栓ができる。それが脳や腹部に飛び、梗塞を起こし、体に麻痺が残ったり、命に係わることもある。

 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科の原英彦准教授に話を聞いた。

「心房細動では脳梗塞の発症が5倍程度に上昇するため、予防治療が必須です。不整脈の標準治療として全身に抗凝固療法を行ないます。ワルファリンなどを内服し、いわゆる血液をサラサラにするわけです。ただし、薬量の調整が難しく、ちょっとぶつけただけでアザになる、ときには消化管などから、大量出血するなどのトラブルも起きます」

脳梗塞を予防する外科的手術もさまざまに

 左心耳を切除することで、血栓の発生を抑制し、脳梗塞を予防する、外科的治療も行なわれている。例えば、心臓弁膜症の場合は不整脈も合併していることが多く、心臓を切開して弁を取り換える際に、同時に左心耳を切ったり、内側から、しっかり縫う手技が行なわれることもある。

 欧米ではカテーテルを使い、心臓の内側から専用の器具(コルク栓のイメージ)を左心耳に留置する治療を、10年ほど前から実施。これは左心耳の入り口に器具をきつく止めて閉鎖、しばらくすると入り口だった器具に膜が張り、表面が滑らかになって血栓ができなくなる治療だ。脚の付け根から、カテーテルを挿入するだけなので、創も小さく合併症を持つ高齢者でも実施が可能となっている。

「この治療のメリットは寝たきりや麻痺を残す脳梗塞を予防でき、かつ作用の強い抗凝固薬を止められることです。デメリットとして頻度は低いものの、カテーテル治療手技自体の偶発症があること。また抗血小板薬(血液をサラサラにする弱めの薬)のアスピリンを一生飲み続けなければなりません。左心耳は人によって形も大きさも違うために手技が難しく、術者にはより高い技術と豊富な経験が求められます」(原准教授)

 欧米での研究だが、カテーテルによる左心耳閉鎖術は抗凝固療法と比べ、5年後の死亡率が低く、予後がよいとの結果が報告されている。抗凝固薬による、大出血のリスクの低下がQOL(生活の質)をよくしているのだ。左心耳閉鎖の専用器具が近々承認の見込みで、導入に向け治療を担当する医師の研修と医療機関の認定が始まる予定だ。

※週刊ポスト1月4日号

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