2019.01.26 |   

ばぁば&みちこの「これだけは伝えておきたい」こだわりの味とお小言 

 ほとんどの野菜が一年中手入るようになり、 日本の食卓から“旬”がなくなったといわれて久しい。白飯やみそ汁もインスタント食品で間に合うし、 カレーに至っては「レトルトの方がおいしくて安上がり」とも。

 それでもやっぱり、家族の喜ぶ顔を思い浮かべながら、 母が手間ひまかけて作った料理にかなう味はないのだ。

→「イマドキの料理の”センセイ”にちょっと言わせて」ばぁば×松田美智子さん対談

 固定観念を捨てると日本の家庭料理は驚くほど手軽になる

 だしの材料となるかつおぶしや昆布は、時間と手間をかけて作られる乾物。これらを利用して短時間でとるのがだし。日本の元祖インスタント料理ですよ…と、ばぁば。

「おだしは“かつお昆布だしでなきゃいけない”と思い込んでいませんか? 昆布だしはもちろんおいしいですが、よい昆布は高価ですしケチって使っては意味がありません。ご家庭の汁ものや煮ものにはかつおだしで充分なのです。

 手順さえ覚えれば、市販の顆粒だし同様の手軽さで、何十倍もおいしくて上品なおだしがとれます。日本料理の滋味深い味わいをぜひ、ご家庭の料理で生かしてください」(ばぁば)

 そして、松田美智子さんのこだわりは、松田さんが大好きなごぼうを使った、20分でできるカレー。

「撮影時などのまかない登場回数はダントツの1位。今が旬のごぼうでももちろんおいしいのですが、初夏に収穫される、やわらかく風味も上品な新ごぼう(夏ごぼう)で作ると格別です。

 材料はごぼうと豚バラ肉だけ。調味料もご家庭にあるもので思い立ったら作れる手軽なカレーですが、塩をふってひと晩おいた塩豚を使うのがおいしさの秘密。余分な塩分もカットできます。冷凍保存できますし、そのままオイル焼きにしても美味。下ごしらえでうま味を深めながら保存食品にもなるという、始末料理でもあります」(松田さん)

 市販のルーを使わないから、脂質も大幅に削減。おいしくてヘルシーなダイエットカレーとしても◎。

「カレーが余ったら、ごぼうカレー1カップに対して濃いめのめんつゆ1/4カップとチキンスープ1カップを合わせ、うどん1玉を入れてカレーうどんにしてもおいしいです。寒い夜、しみじみと全身にうま味がしみますよ」

ばぁばのこだわり「かつおだし」

【1】鍋に水5カップを入れて沸騰させ、中火に落として削りぶしをむんずとふたつかみ(約50g)入れる。

【2】 あくを取りながら、ふつふつと3〜4分煮出して火を止める。そのまま、粗熱がとれるのを待つ。

【3】 ボウルの上に浅ざるを置き、その上にかたく絞った布巾かペーパータオルを敷き、2を濾す。無理に絞らず、自然に汁が切れるまで待つ。残ったら密閉容器に入れて冷蔵庫で2日ほどは保存可能。

●お正月4日から食べる「ひきな雑炊」

 せん切り大根、にんじん、油揚げなどを入れ、だしとみそで味を調えたお腹に優しい雑煮。青みにせりを散らす。ばぁばの実家(青森県八戸市)では、正月三が日はいくらをたっぷりのせた「南部雑煮」を食べ、4日からは「ひきな雑煮」を食べるのが伝統。過食気味の胃を労ってくれる。

みちこのこだわり「塩豚」 

 塩にはたんぱく質を変化させる作用があり、肉にすり込んで寝かせると、肉質がやわらかくなり、うま味も強調される。薄切り肉を保存する際は、1枚ずつ広げて塩(豚肉200gに対して小さじ1)を全体にふり、ぴっちりとラップ。ひと晩寝かせると塩豚の出来上がり。

●食べたいときが作りどき「ごぼうカレー」

 ごぼうは皮ごと洗って4㎝長さの薄い短冊切り。ミニトマトはへタを取って縦4つ切りに。オリーブ油、にんにく、しょうがを炒め、塩豚、ごぼうを炒め、三温糖を加える。カレー粉、白ワイン、チキンスープを加えて強火で煮立て、脂をすくって弱火で15〜20分煮る。味をみて、オイスターソース、しょうゆ、こしょうを加えて仕上げる。器に入れ、好みで香菜を散らす。

ばぁばのお小言

「やさしい心でやさしいお味に。不機嫌な顔でお台所に立たないで」 

 疲れているときもあるでしょう。腹が立つこともあるでしょう。ため息しか出ないときもあるはずです。女性の人生は案外と大変。でもね、お料理の味は作る人の心持ちを如実に反映します。せっかくのごちそうをしょっぱくしないよう、どうか心を穏やかに。

「お寿司屋さんで”お愛想”は不要です」

  飲食店で使われる“お愛想(お勘定)”、お寿司屋さんで使われる“アガリ(お茶)”“シャリ(ご飯)”“ネタ(寿司たね)”…。これらはいわゆる隠語で、素人の女性が口にする言葉ではありません。通を気取って、恥をおかきになりませぬように。

「そばやうどんはたぐらない。パスタはすすらない」

  パスタは音を立てて食べる文化のないイタリアの麺ですから、フォークに巻き付けて一口でいただきます。翻ってそばやうどん、あるいはそうめんは、「すすって食べる」もの。ツルツルッとした喉ごしを楽しむものなのです。

 お箸でたぐり、音を立てずに食べるのがマナーと勘違いしているかたがいますけれど、食べ終わる頃には伸びちゃっていますわよ(笑い)。

みちこのお小言

「塩・しょうゆ、みそ…調味料は高価でも良質のものを」

  高価といっても、何千円もするわけではありませんし、ご家庭で一度に大量に使うことはない調味料ですから、いつも使う調味料はちょっとよいものを。出来上がりの味に大きな差が出ます。

「作り方の【分量】過信しない。こまめに味をみて、”自分の味”の発見を」

  料理研究家が決めた【分量】を過信してはダメですよ。その味はあくまで、その料理研究家の好みの“味”で、もしかしたら体調があまりよくないときに作ったレセピかもしれないし、100人いれば100の味覚があるわけですから。調味とはよくいったもので、味を調べながら、ご自分なりの味つけを見つけてください。

 鈴木登紀子(すずきときこ)

鈴木登紀子

「大皿にはお取り箸を必ず添えて。欲張ってとるんじゃありませんよ」

日本料理研究家。46才で料理研究家としてデビュー。東京・武蔵野市の自宅で料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌等で広く活躍。『きょうの料理』(NHK・Eテレ)への出演は、50年近くになる。『ばぁば 92年目の隠し味』(小学館)はじめ著書多数。

→94才の“ばぁば”鈴木登紀子さん、「長生きのヒミツ」を告白

松田美智子 (まつだみちこ)

松田美智子

「お料理するお母さんがお箸を持てないのは悲しいです」

1955年東京生まれ。1993年から「松田美智子料理教室」を主宰。テーブルコーディネーター、女子美術大学講師、日本雑穀協会理事も務める。使いやすさにこだわったオリジナル調理ブランド「松田美智子の自在道具」も好評。http://www.m-cooking.com/

→料理研究家・松田美智子さん 60代からをおいしく、愉しく生きる極意

撮影/鍋島徳恭、坂本道浩

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