2019.02.08 |暮らし   

最新スマート家電を認知症の母が住む実家で使ってみたら…

 盛岡に住む認知症の母を東京から遠距離で介護している工藤広伸さんは、介護をする中で得た知識、ノウハウを書籍、ブログ、講演会などで、広く発信中だ。

 便利なツールは何でも試してみることを信条としているが、最近はスマート家電を活用しているという。最新の設備を目の当たりにして、認知症の母はどんな反応なのだろうか…。

 工藤家の様子を教えてもらった。

リビングのソファに座る高齢者

スマートスピーカ―は認知症介護の役に立つのか?(写真/アフロ)

 * * *

 前回、スマート家電を活用したわが家の認知症介護についてご紹介しました。

→「スマートスピーカー」を認知症介護に活用するスゴ技とは

 エアコンやテレビを自分の声でコントロールできるスマート家電の世界に、わたし自身も驚いたのですが、今回は母がどう反応したかというお話です。

疲れを知らないスマートスピーカーは何度も予定を知らせてくれる

 わが家で利用しているスマートスピーカーは『Google Home Mini』。

 毎朝7時10分になると、スマートスピーカーが母のその日の予定を音声で知らせてくれます。

「今日はデイサービスに行く日だよ」「今日は訪問リハビリがあるよ」など、わたしがGoogleカレンダーに入力した予定を、そのまま読み上げます。

 母はスマートスピーカーという商品自体もその役割も理解していないので、スピーカーの近くにある固定電話機から音声が出ていると思っています。

 また母は、なぜ自分が通っているデイサービスの名称や、訪問リハビリを担当する理学療法士さんの名前まで、音声がお知らせしてくれるのか不思議に思っているようですが、結局、わたしが固定電話に予定を録音し、それが時間になると自動で再生されると自分なりに受け止めています。

 このスピーカーを使い始めた頃の母は、今日の予定が音声で知らされるたびに「ビックリしたぁ」と言っていましたが、使い始めて1か月も経つと「朝になるとね、今日の予定を教えてくれるのよ」と、家に来る訪問看護師さんに言うようになりました。

 母がこの仕組みに慣れてきたので、最近では予定をお知らせする回数を増やしています。毎晩、次の日の予定を19時30分にお知らせする設定を追加して、次の日のデイサービスの準備を、音声で促すようにしています。

 母は今日の予定も明日の予定もすぐに忘れてしまうのですが、スマートスピーカーは、母に何度でも予定を知らせる設定にすることもできます。人間が予定を繰り返し伝えると疲れてしまいますが、スマートスピーカーは疲れを知りません。

違和感はあるが、混乱することなく受け入れている母

 わが家では、スマートリモコンも活用しています。

 このスマートリモコンがあれば、外出先からスマートフォンのアプリを使って、家のテレビやエアコンをコントロールすることができます。家にある赤外線でコントロールできるもの、例えば照明やお掃除ロボットなども、その対象です。

 わが家の認知症介護への活用法を、2つご紹介します。

 1つ目は、エアコンの操作です。母がデイサービスに行っている間に、東京のわたしのスマホから、盛岡の居間のエアコンの暖房をつけます。母がデイサービスから帰ってくる2時間前に、暖房をつけることで、母が帰宅する頃には、居間は暖かくなっています。

 エアコンのタイマー機能を使えばいいのでは?と言われることもあるのですが、実家のエアコンは1日1回しかタイマー設定できない機種で、毎朝5時20分にエアコンの暖房がONになる設定にしてあるため、スマートリモコンが2回目のタイマーの役割を担っています。

 母はエアコンを消して家を出たはずなのに、帰宅するとなぜかエアコンがついていることに違和感はあるようですが、特に混乱した様子はありません。

 2つ目は、母に大好きな歌番組を見てもらうためのスマートリモコン活用です。

 母が毎週見たいテレビ番組は、火曜日19時30分にNHKで放送されている『うたコン』です。往年の演歌歌手も多く出演するこの番組を、母は楽しみにしていて、いろいろなことを忘れてしまっても、番組が火曜日にあることは覚えています。

 しかし、母は家事などをしていると、この番組のことをすっかり忘れ、見逃すことが多くなりました。そこで、東京でスマホを操作し、盛岡の実家のテレビのチャンネルを強制的に変更しています。

 実家のテレビは、15年ほど前に製造されたもので、決まった時間にチャンネルを自動で変更できる機能がありません。そのため、スマートリモコンが活躍しています。

 母自身がテレビのチャンネルを変えていないのに、チャンネルが勝手に変わるため、こちらも違和感があるようですが、それでも夢中で歌番組を見ています。わたしはその様子を、同じ居間にあるWebカメラを通じて、遠く離れた東京からチェックしています。

「ねぇ、ぐるぐる」

 このスマートリモコンをスマートスピーカーと連携させると、音声で家電をコントロールできるようになります。

 例えば「ねぇgoogle、エアコンを消して」と言うと、エアコンの電源がOFFになり、「ねぇgoogle、テレビをつけて」というと、テレビがONになります。これらを、認知症介護に活用しているわけではありませんが、面白いので母に見てもらいました。

 すると母は、「なに?手品でもやっているの?」と言って驚いていました。せっかくなので、母にも体験してもらおうと「ねぇgoogleと言ってみて?」とお願いしたら、母はこう言いました。

「ねぇ、ぐるぐる」

 スマート家電は、何も反応しませんでした。

 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

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