2019.03.20 |   

クリコさんのやわらか食|簡単においしく、家族と同じ献立を実現

 先ごろ、堀ちえみさん(52才)が舌がんのステージ4を公表し、手術を終えたことが報じられたばかり。口腔内の手術後、苦労をするのが日々の食事の問題だろう。口内炎による痛みでも食事は苦痛になるが、それ以上の困難さが察せられる。

 口腔底がん、舌がん、歯肉がんを併発した夫・アキオさんの介護食作りをはじめ、舌がんや食道がんなどで、噛むことにトラブルを抱える人のために数々の食事レシピを考案してきた介護食アドバイザーのクリコさんは、その経験を生かし、料理講習会も開いている。

 そこで、このたび『噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん』(講談社)を上梓したクリコさんに、現在のやわらか食事情ついて聞いた。

関連記事:口の中が痛い時の調理のコツ|がん、口内炎など口腔内トラブル時の食事

食事をするシニア女性

衣が剥がれず食べやすいえびフライやカツのレシピ

「料理講習会に見えられるみなさんが口々におっしゃるのが、“情報がなくて、どうやって作ったらいいのかわからない”ということです」とクリコさん。

 クリコさんの講習会には、家族の介護食作りに困っている人や、患者さんの家族から介護食に関する相談をよく受けるものの、答えられずにいるという管理栄養士や訪問歯科医師など、多くの人が講習会に参加しているという。

 クリコさんの介護食作りのモットーは、「簡単においしく」「家族と同じ献立」「好みの味つけ」「美しい盛りつけ」だ。えびフライやカツも通常の形、美味しそうな見栄えのまま、やわらか食を実現している。

「舌がんの方と、食道がんの手術後にリハビリなさっている方にシート肉のカツとえびフライを食べていただいたら、舌がんの方は舌をあまり上手に動かせないので、普通の揚げ物は衣が剥がれてしまうそうですが、私のレシピはパン粉が細かくて、中身がすり身で密着しているので、衣が剥がれず美味しく食べられたっておっしゃって、それは私も新発見でした。食道を切除して胃とつなげた手術をして、消化にいいものじゃないと気持ちが悪くなるという方からも、“フライを食べても気持ちが悪くならなかった。食べることを諦めていたけれど、諦めなくていいんだ”と喜んでいただきました」(クリコさん、以下同)

脳性まひのお子さんが目をキラキラさせて食べてくれる

 市販の介護食では、口に合わなかったり、種類も少ないためにすぐに飽きてしまう。噛む力のない人にドロドロとした流動食を作る家庭も多いというが、「見た目が“わっ!美味しそう”って思えないと食欲を喚起できないですし、ただドロドロで何が入っているかわからないものだと、食べるのも不安になりますよね」とクリコさん。

 脳性マヒのため噛む力のない子供がミキサー食を拒絶するようになり、体重が平均の半分というギリギリの状態となったために、クリコさんの元へ駆け込んできたお母さんもいる。成長するにつれて、家族と同じものを食べたいと意思表示をするようになってのことだった。

「そのお子さんは、えびフライを美味しく食べてくれました。すり身を作ってフライにするので、その工程が面倒に思われるのではないかと心配していたんですけど、そのお母さんは“いつもは作ったものをミキサーにかけて出さなくてはいけないのはすごく虚しくて悲しかったけれど、ミキサーにかけたものがこうやって形になるのがすごくうれしい。報われる”とすごく喜んでくださいました。そのお子さんはすごく正直で、ドロドロのものは食べたくない、でもえびフライの形になっているものは目をキラキラさせながら食べてくれるのを見ると、やっぱり美味しそうな見た目はなんといっても大事なんだと、改めて実感しました」

 そんな見た目も味も抜群のえびフライのレシピを、最後にご紹介しよう。

えびすり身の作り方

「えびすり身」は、むきえびにはんぺんなどを加えて、フードプロセッサーにかけたもの。絞り出し袋に入れて、えびの形に絞り出し、色々なえび料理に活用できる。

【材料】(でき上がり約90g/えび4本分)
むきえび…50g/はんぺん…25g/酒…5g
マヨネーズ…4g/麩…3g/干し桜えび…1g

【下ごしらえ】
 麩と干し桜えびは、ミルなどで粉になるまで粉砕する。はんぺんは1.5cm角に切り、熱湯で2分ゆでてキッチンペーパーに取り、水けを切り冷ます。

【作り方】

1.えびを細かく刻み、麩以外の材料とフードプロセッサーでなめらかになるまですりつぶす。最後に麩を入れて攪拌する。
2.えびの形に成形。スケールに皿をのせ、ゼロ表示にする。1を絞り出し袋に入れ、約8cm長さの棒状に数回絞り重ねる。1本22gになるよう、半量を絞り出したところにえびの尻尾(分量外)を置き、はさむように残りを絞り出す。
3.600wの電子レンジで2本ずつ30秒加熱する。冷凍する時は加熱後冷ましてジッパーつき保存袋に入れ、空気を抜いて冷凍保存。*冷凍保存期間の目安は約2週間

関連記事:やわらか食の調理法|時短のコツやクリコ流やわらか牛焼肉丼レシピなど

えび風味いっぱい ふわふわえびフライ

えび風味いっぱい ふわふわえびフライ

えび風味いっぱい ふわふわえびフライ

「固形物を食べられないお子さんが、このえびフライを口にした時の笑顔が忘れられず、改良を重ねて、もっとふんわり、やわらかいえびすり身が完成しました。干し桜えびの粉を混ぜたパン粉の香ばしい香りが食欲をそそります」

【材料】(4本分)
えびすり身…88g

■衣
小麦粉…適量
溶き卵…適量
細かいパン粉…適量
干し桜えびの粉(作り方の2を参照)…パン粉の1/5量
揚げ油…適量

【作り方】
1.えびすり身で1本22gのえび形を4本作る。2本ずつを600wの電子レンジで30秒加熱し、そのまま冷ます。えびすり身またはえび形を冷凍保存してある場合は解凍する。
2.干し桜えびをミルやフードプロセッサーで粉末にする。パン粉に対し1/5量を混ぜる。
3.1に小麦粉、溶き卵、2の順につけ、180度の油でさっと揚げる。
4.皿に盛りつけ、ベビーリーフとレモン、ケチャップを添える。

クリコ

料理研究家・介護食アドバイザーの保森千枝さん

本名、保森千枝。料理研究家・介護食アドバイザー。夫の勧めで料理教室を開講。2011年、口腔底がんの手術後、噛む力を失った夫に「おいしく食べて、元気になってほしい」と、独学で介護食作りを始める。2014年、介護食アドバイザー資格、食品衛生責任者資格を取得。「簡単においしく」「家族と同じ献立」「好みの味つけ」「美しい盛りつけ」をモットーに介護食作りを提案し、講演会や料理講習会で活躍中。著書『希望のごはん』(日経BP社)。

◆WEBサイト
「やわらかい・飲み込みやすい クリコ流 ふわふわ希望ごはん」(http://curiko-kaigo-gohan.com/)
ベネッセの介護相談室「クリコ流介護ごはん」(https://kaigo-sodanshitsu.jp/recipe/)

●『希望のごはん』ができるまで~介護食に新風を吹き込んだ愛のstory<前編>

●『希望のごはん』ができるまで~介護食に新風を吹き込んだ愛のstory<中編>

●『希望のごはん』ができるまで~介護食に新風を吹き込んだ愛のstory<後編>

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