2019.04.01 |サービス   

家族信託のメリット|相続対策などにも有効。手続き、費用などを解説

 成年後見制度の最大の難点と言ってもいいのが、生前贈与による相続対策が一切できなくなること。なぜなら、成年後見制度は本人の財産保護を目的としているのに対し、生前贈与は本人の財産を“減らす行為”だからだ。

 そこで有効なのが「家族信託」だ。家族信託コンサルタントの横手彰太さんが話す。

『家族信託』とは、親や夫が認知症になった時、本人の財産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。財産の中から必要なものだけを指定して信託でき、家族は託された財産を、目的の範囲内で自由に使い道を決められます

→関連記事:「成年後見」と「家族信託」の違い 図表でわかりやすく解説

お金と家の模型

家族のために今からできる財産管理の対策とは?(写真/アフロ)

生前に財産の継承先を指定できる「家族信託」

 たとえば、親がボケた後に親の医療費を支払いたい場合、信託の契約時にその目的を設定しておけば、親の財産から支払える。まさに“家族による、家族のための財産管理”である。

 このほか、家族信託は「遺言」のような使い方もできる。神奈川県在住の68才主婦・千田さんが話す。

「夫は、私とは再婚で、前妻との間に子供がいます。何の対策も講じないまま夫が認知症になれば、夫の死後、財産の一部がその子供に渡ることになり、トラブルになる可能性がありました。弁護士に相談し、家族信託の手続きをしたところ、土地と自宅は私、預金は私たち2人の娘、保険金と株式は孫と、相続先を細かく指定でき、もめることなく財産を分けられました」

 遺言が効力を発揮するのは本人の死後だが、家族信託なら生前に財産の継承先を指定でき、事実上の遺産分割を完了できるというわけだ。

「また、遺言では財産の継承先を1代までしか指定できませんが、家族信託は数世代先も指定できます。たとえば、夫の遺産を相続した妻の死後、その子供に多額の相続税がかかる『2次相続』も視野に入れた財産継承が可能なのです」(横手さん)

「家族信託」手続きの方法、費用は?

 家族信託を契約するには、公正証書として「信託契約書」の作成や、不動産の信託登記など多くの手続きが必要となり、財産をどう振り分けるかといった「設計」も必要だ。

 本人の死後も家族がいかに幸せでいられるかを考えると、複雑な判断が必要になることも多いため、家族信託を専門に行う弁護士や司法書士などの専門家に依頼するのがよいだろう。費用は財産額によって70万~250万円ほどと安くはないが、年間同等の金額を払い続ける法定後見制度よりは圧倒的に安く済み、相続対策も打てる。検討して損はない。

成年後見制度の問題点

 成年後見制度でできないことに、「医療行為に対する同意」も挙げられる。

「原則として、生命・身体への重大なリスクを伴う医療行為については、後見人は同意・決定できません。そのため、本人が事故に遭ったり入院・手術が必要になった場合は、基本的に家族の同意をもとに行われます」(介護に詳しい弁護士の外岡潤さん)

 しかし、法定後見人と家族の意見が対立した時、こんなことも起こり得る。滋賀県在住の68才主婦・田上さんの話。

「認知症の父は、胃がんも併発しており、余命わずかと宣告されていました。いよいよ危なくなり、昏睡状態になった時、私たち家族は長く生きていてほしいという思いから、延命治療を希望しました。ところが、法定後見人は『父は延命治療を望んでいなかった』と主張するのです。結局、病院側は私たち家族の意思を尊重し、延命治療を施してくれましたが、後日、父の口座から医療費を払うため法定後見人に請求すると、『延命治療を行った日数分の入院費は出さないし、個室の差額ベッド代も出せない』と言うのです。細かい話ですが、テレビカード代や病院までの交通費まで支払いから除外され、正直、あの時延命治療を反対したのは、自分の報酬が減るので、法定後見人が財産を減らしたくなかったからでは…と疑念でいっぱいです」

 制度に詳しいジャーナリストの長谷川さんが話す。

「後見人の報酬は本人の預金額で決まるため、多く報酬を取ろうと考えている後見人なら、こういうこともあり得ます。しかし本来は、『後見人が支出するべき項目』として家裁で定められているものの中に、『医療費』は含まれており、支払うべきものです」

 だが、実際は医療費の請求の際に、後見人に“いちいちお伺い”を立てないと、支払ってもらえないのが現状だ。

「この場合も、事前に家族信託を行っておけば、本人に関するあらゆる『決定』が可能になります。家族信託は、残された家族のための仕組みです。成年後見ではできないことも、家族信託ならできることがたくさんあります」(横手さん)

 家族が認知症になったら、市役所や銀行に言われるがまま手続きしてはいけない。もし法定後見人を選んでしまったら、本人が死ぬまで逃れることは難しい。後悔しないためにも、自分に合った制度が何かを見極め、事前の準備と賢い判断が必要だ。

※女性セブン2019年3月21日号

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