2019.06.07 |   

嚥下障害のサイン|嚥下困難に気付くチェックリストと嚥下に配慮された食品

 気管に異物が入り込む「誤嚥」。このとき雑菌が肺に入り込むと肺炎を引き起こすことがある。高齢者では生命に関わることもある。厚生労働省が調査した日本人の死亡原因では、誤嚥性肺炎は第7位(平成29年 人口動態統計)となっている。不幸な事故を防ぐ一助となる、のみ込みが難しい人向けの最新食品事情を調べてみた。

食事をする熟年夫婦

年齢とともに誤嚥は起こりやすくなる

誤嚥の原因・起こり方

 誰しも一度くらいは、気管に飲食物が飛び込んでむせてしまったことはあるだろう。年を取ると、この誤嚥が頻繁に起こるようになることがある。空気と飲食物の振り分けがうまくできなくなることは「嚥下障害」と呼ばれている。

 嚥下障害とはどういう状態を示すのか。高齢者向け食品の安全性や適切な使用などの啓蒙活動を行っており、多くの食品メーカーが参加する「日本メディカルニュートリション協議会」では、次のように説明している。

 人間は、咀嚼した食べ物を、舌を使って咽頭に送り込む。このとき喉頭蓋(こうとうがい)と呼ばれる弁が、気道にフタをして、食べたものは食道へと送り込まれる。食べ物をゴクンと飲み込む動作を「嚥下反射」というが、食べ物が喉にやって来て、嚥下反射により喉頭蓋が気道にフタをするまでの時間は、わずか0.5秒程度。神経や筋肉に何らかの障害が生じていると、フタがしっかり閉じなかったりタイミングがずれたりする。その結果、気道に食べ物が入り、誤嚥が起こる。

 そして誤嚥には、以下のような3種類の起こり方があることがわかっている。

●嚥下運動前の誤嚥

 嚥下反射が起こる前に、だらだらと気管に食べ物が入ってしまう。

●嚥下運動中の誤嚥

 嚥下反射時に気管の蓋をするタイミングがずれ、液体などが瞬間的に気道に入り込む。

●嚥下運動後の誤嚥

 咽頭部に食べ物が残留して嚥下反射の後に気管に入ってしまう。

誤嚥の起こり方3種のイラスト

※図は「日本メディカルニュートリション協議会」から(以下同)

嚥下障害自己チェックリスト

 いずれも嚥下反射がスムーズに行われていないことが原因だ。嚥下障害が起こっている人は誤嚥を起こしやすいため、誤嚥性肺炎のリスクが健康な人よりも高くなる。そこで同協議会では、簡単にできる「嚥下障害自己チェック」を作成している。

嚥下障害が起こっているか9項目チェックのイラスト

嚥下障害をチェックする9項目

□食事中や食後にむせることがある
□痰がよくからんだり、よだれが多い
□食べ物を飲み込みにくいことがある
□食後に声が変わる
□食べ物をよくこぼす
□食事時間が延びた
□飲み込んだ後に、食べ物が口の中に残る
□舌に白い苔のようなものがついている
□食べる量が減ったり、好みが変わった

 チェックリストには9項目あるが、注意したいのはこの中で1つでも心当たりがあれば、誤嚥を起こしやすい状態にあることだ。嚥下障害を改善するためには外科手術以外では、口腔の運動が推奨されている。同協議会でも以下のような準備運動をするといいとしているが、完治することはなかなか難しい。

飲食前の口腔準備運動

●両頬を膨らませたり、すぼめたりする。
●左右の頬を交互に膨らませる。
●舌のジグザグ運動をする。
●目と口を全開・しっかり閉じる。

 下記イラストを参考に!

食べたり飲んだりする前の口の準備運動イラスト

食べたり飲んだりする前の準備運動

咀嚼・嚥下のしやすさを表すマーク「スマイルケア食」の区分の見方

 嚥下障害が起こっていても、食べ物に気をつかうことで誤嚥を回避することができる。飲み込みやすい性質を持った食品を選べばいいのだ。よく言われるのが、歯茎でも噛みつぶしやすい硬さにするとか、液体にとろみをつけるなど。

 市販の加工食品では、嚥下困難者にとって誤嚥が起こりにくい食品かを示す指標がある。農林水産省が2016年から運用を始めた「スマイルケア食」というものだ。これは青、黄、赤の3つのカテゴリーからなり、咀嚼や嚥下の度合いに応じて細かく、次のように分けられている。

・青…咀嚼や嚥下に問題はないが、健康維持のため栄養補給を必要とする人向け
・黄5…容易にかめる食品(例:焼き豆腐)
・黄4…歯ぐきでつぶせる食品(例:もめん豆腐)
・黄3…舌でつぶせる食品(例:きぬごし豆腐)
・黄2…かまなくてよい食品(例:つぶのあるペースト食)
・赤2…少しそしゃくして飲み込めるもの
・赤1…口の中で少しつぶして飲み込めるもの
・赤0…そのまま飲み込めるもの

スマイルケア食マークの一例

スマイルケア食マークの例。数字が小さいほど咀嚼や嚥下しやすい食品になる

スマイルケア食「黄」「赤」マークの食品例

 スマイルケア食の、黄と赤のマークの使用を許諾されている食品には、現在、次のようなものがある。

●黄4
「UAA食品 美味しいやわらか食」(アルファフーズ株式会社)
 長期保存に対応したUAA食品シリーズの「里芋の鶏そぼろ煮」と「根菜のやわらか煮」が、認証を受けている。具材の形状を残しながら、歯ぐきでつぶせる程度のやわらかさに加工し、調味液にはとろみがつけられている。

●赤0
「アイソトニックゼリー」、「プロッカ ゼットエヌ」「ブイ・クレスゼリー」「ブイ・クレスCP10(シーピーテン)ゼリー」(ニュートリー株式会社)

 嚥下困難者用食品を開発、販売している同社のゼリー状食品。用途によってビタミン、ミネラル、タンパク質などの栄養素を配合している。「アイソトニックゼリー」は、水やスポーツドリンクでは誤嚥のリスクがある人でも、不安なく水分補給ができるように作られたもの。熱中症の対策用として期待されている。

 スマイルケア食の青、黄、赤それぞれのマークはパッケージ表面に記載することになっているので一目瞭然だ。

 まずは噛んだり飲み込んだりする能力がどれだけあるかをチェックして、通常の食事では誤嚥の可能性が高いと判断したら、スマイルケア食を適宜利用するといいのではないだろうか。現在、スマイルケア食の黄、赤の認証を受けている食品は少ないが、多くのメーカーが対応した製品を開発していくことに期待したい。

●命の危険にもつながる誤嚥性肺炎を防ぐ|予防法やトレーニング法【まとめ】

●むせたら要注意!誤嚥性肺炎を引き起こす“喉の老化”に「ねばり食トレ」で対策を

●誤嚥を防ぐ食べ物の「とろみ」正しいつけ方【介護食の基本】

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