2019.06.14 |サービス   

介護保険サービスが受けられない?介護者が備えておくべき4つのリスク

 在宅介護では、介護保険サービスを利用する家庭がほとんどだろう。ブロガーで作家の工藤広伸さんも、様々な介護サービスを活用しながら、盛岡で1人暮らす認知症の母の遠距離介護を続けている。

 ところが、先日、工藤家に介護サービスが受けられなくなってしまうかもしれない一大事が起こったという…。

女性の高齢者を支えるヘルパー

ヘルパーさんなどの訪問介護サービスは、在宅介護にはかかせないものだ(写真/アフロ)

 * * *

「今月末をもって、訪問介護(ヘルパー)事業所(※)が閉鎖になります。新しい事業所をケアマネジャー(以下、ケアマネ)さんと探してください」

 月末までの残り時間は、わずか2日。わたしとケアマネは、新しい事業所探しで大混乱に陥りました。

 今回は、介護者が日頃から備えておくべき4つのリスクについて、お話しします。

※訪問介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活の支援(生活援助)をします。通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助サービスを提供する事業所もあります。(厚生労働省/介護事業所・生活関連情報検索より)

わが家の訪問介護はどうなった?

 母は、訪問介護を週3、4日利用しています。ゴミ捨てや買い物、デイサービスへの送り出し、緑内障の目薬の点眼など、わたしと離れて暮らす母が生活していくうえで、どれも欠かせないものです。

 結局、ケアマネが新しい事業所を見つけてくれたおかげで、母の生活に支障をきたすことはなかったのですが、まさか事業所が閉鎖になるなんて、まさに青天の霹靂でした。
 
 日頃から利用している介護保険サービスが、未来永劫続くとは限りません。デイサービスや介護施設の閉鎖、ケアマネの退職などによって、今まで受けていたサービスの内容や質が大きく変化する可能性があります。

 介護者が直面するリスクは、次の4つあると考えています。

事業所の倒産・閉鎖のリスク

 1つ目は事業所が倒産、閉鎖するリスクです。

 介護保険サービスも、事業の1つです。利益が出ず赤字が続けば、高齢者施設や訪問介護事業所が閉鎖に追い込まれ、利用者が退去しなければならないこともあります。利用者やその家族は、事業所の経営状態まで分からないので、ある日突然、倒産や閉鎖の通知を受ける可能性もあります。

 また、介護職員の離職によって、人員が十分に確保できず、事業が継続できなくなるケースや、職員数がそもそも少ない中小の事業所は、わずか数人の退職が原因で、事業が停止になるケースもあるようです。

医療・介護職の退職・休職のリスク

 2つ目は看護師、ヘルパーなどが、退職や休職するリスクです。

 出産による一時的な休職、経営者や会社の方針と合わない、介護の仕事自体がイヤになってしまう、家庭の事情などによる退職、経営不振による解雇など、様々なケースがあります。

 医療・介護職の皆さんにも、それぞれの人生があります。いくら利用者側が長くお世話になりたいと望んでも、叶わないことはよくあり、わが家でもたくさんの別れを経験しました。

 介護保険サービスは、利用者や利用者家族と事業所の間で契約を交わしますが、事業所よりも、医療・介護職「個人」との結びつきのほうが強いと感じることがあります。

 そのため、わが家では、お気に入りの介護職の方の退職が重なった際、その事業所の魅力がなくなったと感じ、事業所を変更したことがありました。

担当から外れるというリスク

 3つ目は、医療・介護職の皆さんが退職や休職するのではなく、配置転換などで担当から外れるというリスクです。

 母が利用している訪問リハビリ。新しく担当になった作業療法士さんが、病院の配置転換によって、わずか半年で担当から外れました。

 認知症の人が、新しいケアマネやヘルパーを受け入れなかったり、介護を拒んでしまったりすることもあります。ヘルパーは指名できないので、新しい方を受け入れるまで時間がかかってしまうこともあり、介護家族にとって最も身近なリスクと言えるでしょう。

かかりつけ医が変わってしまうリスク

 4つ目は、かかりつけ医の死去や代替わりによって、医師が変わってしまうリスクです。

 母がお世話になっていた外科クリニックが突然、月極駐車場になっていました。近所の方に理由を聞くと、医師が亡くなって廃業したそうです。また、近所のものわすれ外来は、医師が代替わりしましたし、歯医者はデイサービスに変わっていました。

 かかりつけ医が変われば、これまでの治療方針や飲んでいたお薬が変わる可能性もあります。そのことで患者の症状に変化が生じ、介護に影響する可能性もあります。

もしもの事態に備えて、次にお世話になる事業所を考えておく

 事業を中止する場合、利用者が継続して介護保険サービスを受けられるよう、事業所は関係者との調整を行わなければなりません。そのため、サービスが途切れることはないはずですが、2日前に通告されるという、うちのようなケースもありました。

 日頃から、現在利用しているデイサービスがなくなったら、次はどのデイサービスを利用しようとか、介護施設が閉鎖になったら、次はどの施設に転居しようなど、もしもの事態に備え、ケアマネと一度話し合っておくといいと思います。

 わが家も今回の件を教訓に、次にお世話になる事業所を考え、リスクに備えることにしました。こういった意識を少し持つだけで、いざという時の対応が違ってくると思います。
 
 医療・介護職の皆さんと時間をかけ、今の関係性を築いたというご家族は多いと思います。お互いを信頼し、介護の体制が整ったにもかかわらず、これら4つのリスクに直面して、介護環境が大きく変わってしまう可能性があることを、覚えておいてください。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

●お知らせ

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