2019.07.12 |暮らし   

認知症の母が手術!入院前後に家族が整えるべき態勢とは

 作家でブロガーとしても活躍する工藤広伸さんは、ご自身は東京を生活の拠点に生活しながら、盛岡で暮らす認知症の母の遠距離介護をしている。長年の経験で培った工藤さんの介護術は、すぐに役に立つと評判。「しれっと」をモットーに頑張らない介護を実践する工藤さんに、介護を円滑に進めるためのアイディアや心の持ち方を教えてもらうシリーズ、今回のテーマは「母の入院」だ。

ベッドに人が寝ている

認知症の親が入院する際、どんな注意点があるだろうか?(写真/アフロ)

 * * *

 母は、盛岡にある消化器内科で大腸内視鏡検査を受けた結果、良性と思われるポリープが4個見つかりました。

 医師の説明では、「小さなポリープなので、このまま様子を見てもいいです。ただ、5mmほどのポリープが1つあり、10年後に大腸がんになる可能性はゼロではありません」とのこと。

 女性のがん部位別死亡数の1位が大腸がんというデータ(※)や、母の認知症の進行を考えると、早期にポリープの切除手術を受けてもらったほうがいいと思ったわたしは、検査終了から半年後に、再び消化器内科を訪れ、盛岡市内にある病院の紹介状をもらって、そこで母に手術を受けてもらうことにしました。

※厚生労働省「2017年人口動態統計(確定数)」より

 今日は、認知症の人が病気やケガで入院する際に、家族が意識しておかなければならないことについてのお話です。

入院前準備も予め手配が必要

 大腸ポリープ切除の手術を受けるためには、手術3日前から消化の悪い食品(キノコ類、粒や種のある果物、繊維の多い野菜など)は摂らないよう、食材の調整が必要です。

 母は病院からの指示を忘れてしまうため、自宅の冷蔵庫内にこれらの食材があれば、気にせず食べてしまいます。

 そこで、ヘルパーさんには、これらの食材を購入しないよう依頼し、デイサービスにも、これら食材を昼食から除外するようお願いしました。

 さらに、下剤の服用の見守りが必要になります。手術前日の夜、決められた時間に下剤を飲み、手術当日も、2リットルの下剤を飲まなければなりません。検査のときも同じ手順でやったのですが、母ひとりでは対応できず、わたしがずっと付き添いました。

 日帰りで大腸ポリープ切除を行う病院もありますが、その病院は1泊2日が最短とのこと。母が認知症でひとり暮らしのため、手術前日の下剤服用や食材調整を自宅ではできないと病院側に伝えると、2泊3日の入院であれば、病院側でサポートすると言われたので、2泊3日を選択しました。

入院前説明で分かった認知症の人の入院の難しさ

 入院の手続きの際、申込書に母の病気を記入する欄があったので「アルツハイマー型認知症」「要介護2」と書いたところ、母の日常生活レベルや、認知症の症状を記入する別紙が追加されました。

 病院側が、母の認知症の症状を把握し、どんなサポートが必要かを判断するための用紙なのですが、わたしは母が「病院という環境では」何もできないことに気づかされたのです。

 下記は申込書にあった質問、カッコ内はわたしの回答です。

・お薬をひとりで飲めるか(×)
・ナースコールのボタンが押せるか(×)
・医師からの説明を理解できるか(×)

・食事はひとりで食べられるか(○)
・洗顔や歯みがきができるか(×)
・ひとりでトイレに行けるか(×)

・夜中に大声を出すか(×)
・夜に尿・便失禁があるか(○)
・病院内を歩き回る可能性はあるか(×)
・暴言を吐いたりするか(×)
・自分の居場所がどこか分かるか(×)

 住み慣れた自宅なら、ひとりでトイレに行き、ひとりでお薬を飲み、ひとりで歯を磨けます。しかし、病院という慣れない環境においては、すべてサポートが必要になります。

 例えば、トイレが病院のどこにあるのか、母には分かりません。お薬の保管場所も、いつもと違います。洗面所、歯磨き粉や歯ブラシが、どこにあるか分からないので、誰かがサポートしてあげないと、母は何もできないのです。

 この入院手続きから1か月後、岩手にいる妹が母を病院へ連れて行きました。入院中の家族の付き添いはなく、病院の皆さんが、退院まですべてサポートしてくださいました。

入院による環境変化のリスクは大きい 

 母のひとり暮らしを可能にしているのは、40年以上住み続け、慣れている家だからであって、新しい環境になった途端に、母の自立はすべて奪われてしまいます。おそらく施設へ入居する際も、母は同じような状態になると思われます。

 認知症の症状が悪化する理由の1つに、入院や施設への入居といった環境の大きな変化があるそうですが、わたしは入院申込書の質問だけで、母の認知症の症状の悪化を想像できました。短期入院で良かった!そう思いました。

 認知症の人が入院したり、施設に入居したりすると、それだけで安心する家族がいます。

 医療、介護のプロが近くで見守ってくれるから、家族と一緒にいるよりむしろ安心と考えるからだと思いますが、わたしは安心よりも、むしろ心配のほうが大きいです。認知症の人にとって、環境の大きな変化はリスクと感じます。 

退院後のサポート態勢を整えることが大切

 また、退院後の生活も心配しています。2泊3日とはいえ、ベッドで寝ている時間が長くなれば、足腰が弱ってしまう可能性もあります。対策として、退院直後に訪問リハビリを実施して、理学療法士さんに母の足腰の状態をチェックしてもらいます。

 また、訪問看護師さんにも来て頂き、母の健康状態を確認してもらうプランを組み立てました。

 認知症の人が病気やケガで入院すると、このように心配事が増えます。病院内で何ができて、何ができないかを見極め、退院後にできるだけ早く現状復帰できる態勢づくりを、しっかり整えておきましょう。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

●お知らせ

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