2019.07.21 |暮らし   

介護がつらいとき、どうやって乗り越えました? あっけらかん×しれっと 人気介護ブロガー対談【第2回】

 人気介護ブロガーの工藤広伸(くどひろ)さんとなとみみわさんによる対談の第2回。「しれっと」「あっけらかん」というキャッチフレーズの通り、楽しみながら介護をしているように見える2人にも、当然ながらつらい経験があった。ブラックな気持ちにもなったというが、それでも今前向きな気持ちで介護ができているのはなぜか。さらなる本音に迫った。

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つらかった経験を話すときでも、明るい笑顔のなとみさんとくどひろさん

つらかった経験を話すときでも、明るい笑顔のなとみさんとくどひろさん

まだ若く、周りに理解してもらえないつらさ

――介護していてキツいなーと思ったのは、どういうときですか。

なとみさん(以下、敬称略) 私が一番キツかったのは、何でも一人で背負い込んで、全部自分がやらなきゃダメだと思い込んでいたときでした。特に、介護を始めて間もない頃のばあさんは要介護1くらいで、比較的何でもできたんです。そうなると介護サービスも使えなくて、かえって孤立してしまう。仕事もしていたから、病院に連れて行くために徹夜で仕事を片付けなきゃいけない。そういうことが続くと、どんどんブラックな気持ちが溜まっていきますよね。

工藤さん(以下、敬称略) それはどうやって解消したんですか。

なとみ 旦那と大喧嘩です。それを何回かやっていくうちに、いろんなサービスを使ったり、つらいことがあったらケアマネさんやデイサービスさんに相談すればいいんだとわかってきました。誰かに相談すれば「車椅子使っちゃいなよ。それですぐに歩けなくなったりしないから」と言ってくれます。わからないときはすごく視野が狭くなっているから、プロからのそういう一言があるだけで「そうなんだ!」と救われます。

工藤 僕が最初つらかったのは、40歳の男性で、介護をしている人が周りにいなかったこと。当時は普通の会社員だったので、会社にも言えなかった。母の介護をする以前の30代半ばのときに父が脳梗塞で倒れて、プレ介護的なことは経験していたんですけれど、それでも本格的に介護をすることになった40歳のときがしんどかったです。

なとみ 私が介護を始めたときも40歳くらいだったから、世代的にまだ介護経験者がいなくて、人に話しても「偉いねー」とか言われるだけで。まあ、私は「そうでしょ?」って返しますけどね。褒められて伸びるタイプだから(笑い)。

工藤 「偉いねー」ってすごく言われるし、別にうれしくないと思っていましたけど、今度から僕も「そうでしょ?」って返します(笑い)。僕の場合、祖母のときにお世話になったケアマネジャーさんに母のこともお願いできたので、早い段階で専門家との繋がりはありました。でも、東京と盛岡を往復する介護を始めたときは会社でマネージャー的な立場にあって、20代、30代の部下や同僚に介護の話をしてもきょとんとしているんですよ。その伝わらない感じがどうにもつらかったんだと思います。

義母の介護があったから、母にも優しくなれる

なとみみわさん

「やっぱり、ばあさんがいい人だったことが大きい」としみじみと話すなとみさん

――つらいことがあっても介護を頑張れたのはなぜでしょう。

なとみ 私の場合は義理の母だったことが大きくて、俯瞰しつつ、距離を保つことができたからじゃないかな。それから、やっぱり、ばあさんがいい人だったからだと思います。

工藤 それは大きいですよ。うちの母も割といい人なんで、そういう意味では楽です。

なとみ 認知症になっても、いい人はいい人ですか?

工藤 どこかいい人らしさは残っています。ただ、認知症になってから近所の家の悪口を言ったり、あの家はすごく狭くてうちのほうが100倍広いとか、突然ブラックな嘘を言うことがあります。以前はそういうことを絶対に言わない人だったので、認知症のせいなんだなと思えるから大丈夫ですけれど。ただし、認知症じゃなかった父は最後の最後までクソ野郎で、死ぬ2日前まで喧嘩していたくらいです(笑い)。いい人かどうかとか家族関係は変えられないことなので難しいですが、結局はすごく影響しますね。

なとみ 私の実母がものすごい人で、近くに住んでいる姉と義兄が大変な思いをしているようなんです。どんなに母から罵られても、姉は能面のような顔でやり過ごしていますけれど、私はそんな姉のことが心配で心配で。あの母を見ていると、ばあさんはなんていい人だったんだと、つくづく思いますよ。

工藤 でも、すごい嫌な人も最後の最後まで嫌な人ではないかもしれないですよ。うちも祖母がすごくて、僕が20歳になったときには「お前にはこんなに金をかけたんだ」って小さい頃から渡したお金の記録を見せてくるような人でした。そんな祖母とは喧嘩ばかりだったんですが、亡くなる1年くらい前頃から急に仙人のように穏やかになって「あら、今日はいい男が来たわね」とか言ったりして。子どもの頃から祖母のことはずっと嫌な人だと思ってきましたが、最後はいい感じで収束したので、人間って弱ると次のステージがやってくるんじゃないかと思うようになりました。なとみさんのお母さんも何かをきっかけに弱さを感じて、仙人のようになるかもしれませんよ。

なとみ それは楽しみだ(笑い)。私には、ばあさんを看取ったときの後悔を回収したいという思いがやっぱりあって、せっかく母がいるんだから親子関係を改善しようとしているんです。そう思ってから1年半くらいかかったけれど、最近やっと喧嘩せずに電話できるようになりました。前は「うるせー!」って怒鳴って電話を切ったり、ゴミ箱を蹴っ飛ばしたり、本当に大喧嘩ばかりでしたけれど、今は穏やかに電話を切らせてあげることができる。最近それがすごくいいなと思って。

工藤 ああ、いいことですね。

本の中にひとつでもヒントになることがあれば

工藤広伸さん

「父親も祖母も嫌な人で大嫌いだった」と話すくどひろさん。そのときの後悔があり、今母親の介護で回収しているとい

なとみ 最近は、母から直接罵られて、どれくらい自分が耐えられるか試してみたいと思うくらい(笑い)。私がそんな風に思えるようになったのも、やっぱりばあさんの介護経験があったからですよね。ばあさんはいい人だから母みたいなことは一切言いませんでしたけど、母があんなひどいことを言うのは寂しいからなんだろうなとか、母も言った後に後悔しているだろうなとか、そこまで考えられるようになってきました。ばあさんの介護があったから優しくなれて、ひどいことを言われても笑えて、面白がれるようになった。結局、介護ってお母さんやお父さんとどうやって終着を迎えたいか、その先をどうしたいかということだと思う。

工藤 そういうところはありますね。でも、みんながみんな2回以上介護をするとは限らないし、そうなると後悔を回収することができないじゃないですか。だから、これから介護する人は、僕とかなとみさんの本を読んで疑似体験してもらうといいかなと(笑い)。

なとみ ただし、私の漫画にはいいところしか描いていないから(笑い)。「なとみさんもばあさんもいい人すぎる」と言われることがありますけれど、それは本だからですよ。

工藤 僕の本のAmazonレビューで星2つをつけていた人がいて、「私はこういう風にできなくてうらやましかった。最後まで読めなくて途中で本を閉じました」と書かれていました。でも、僕たちだって全部を完璧にできているわけじゃないんですよ。

なとみ 本の中で「ここはできないけれど、ここならできそう」という要素をひとつでも見つけてもらえればいいなと思いますね。

『ばあさんとの愛しき日々』(なとみみわ著・イースト・プレス)、『がんばりすぎずにしれっと認知症介護』(工藤広伸著・新日本出版社)

『ばあさんとの愛しき日々』(なとみみわ著・イースト・プレス)、『がんばりすぎずにしれっと認知症介護』(工藤広伸著・新日本出版社)

なとみみわ

イラストレーター、漫画家。雑誌、書籍、ムック、広告等を中心に活躍するほか、オリジナルキャラクターの制作も行う。義母“ばあさん”や家族との日々や離れて暮らす実母との関係を綴ったブログ「あっけらかん」が人気。著書は『まいにちが、あっけらかん。――高齢になった母の気持ちと行動が納得できる心得帖』(つちや書店・佐藤眞一監修)
ブログ「あっけらかん」https://ameblo.jp/akkerakan/
オフィシャルサイト http://www002.upp.so-net.ne.jp/natomi/index.html

工藤広伸(くどう・ひろのぶ)

40歳のときに祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護を始め、2013年3月に介護退職。祖母死去後、現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。著書は『認知症介護を後悔しないための54の心得』『認知症介護で倒れないための55の心得』(廣済堂出版)など。
ブログ「40歳からの遠距離介護」 https://40kaigo.net/

撮影/松本幸子 取材・文/牛島美笛

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