2019.08.07 |サービス    2

要介護者の「旅行に行きたい!」を叶える旅行介助士資格が誕生

「もう1度、旅行がしたい」。そう思いながら、要介護になったために諦めてしまっている高齢者の願いを叶える民間資格「旅行介助士」が6月に誕生。旅行介助士の資格者証を発行する一般社団法人「日本介護旅行サポーターズ協会」が主催する「介護旅行シンポジウム」が東京で開催(6月21日)され、介護従事者や介護施設の関係者ら100人を超える参加者が詰めかけた。

旅行介助士のシンポジウムの参加者

旅行介助士に対する介護業界の注目度も高い

 旅行介助士の受験資格は「介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修受講者」「介護福祉士、看護師、PT、OT、ST、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師などの資格者」「介護保険適用の事業所、または障害者総合支援法適用の施設で、介護士、ヘルパーとして勤務した経験のある者」「その他、要介護者、高齢者の介助業務に従事した経験のある者」と規定されている。つまり、旅行介助士とは、介護の仕事に従事している人が高齢者の「旅行に行きたい!」という願いを叶えられるようになる資格という位置づけだ。

 この資格を取得すると、旅行会社が主催する旅行に同行するための資格「国内旅程管理主任者」を同時に取得できるので、介護のプロであると同時に、ツアーコンダクターのプロとして活動できるようになるという。

旅行を諦めた高齢者が、再び旅行に行ける未来

 日本介護旅行サポーターズ協会の代表理事を務める糠谷和弘さんは旅行会社のJTB出身。船井総合研究所で介護事業のコンサルタントとして活躍し、現在は自ら立ち上げた会社で介護事業のコンサルティングに従事。シンポジウム資格を作った経緯を次のように語った。

「『旅行に行ける体を作る』というコンセプトでデイサービスセンターの運営もしています。そこで『もう二度と旅行に行けない』と諦めてしまっている高齢者と出会いました。旅行会社にも看護師等の付き添いのあるプランはありますが、その日初めて会った方にサポートをしてもらうことには色々な不安があります。これを解決するために、色々な方に参画いただき、介護職、介護業界の力で旅行に行ける未来を作れないかという思いで立ち上げました」(糠谷さん)

旅行介助士を作った糠谷さん

旅行と介護の両方に精通している糠谷さん

ユニバーサルツーリズムとは!?

 お互いのことをよく知っている顔なじみの介護職と一緒に高齢者が旅行に行ける社会。これが糠谷さんが描く未来。そこで、キーワードとなるのが「ユニバーサルツーリズム」という言葉だ。観光庁のホームページでは、「ユニバーサルツーリズムとは、すべての人が楽しめるよう創られた旅行であり、高齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行を目指しています」と説明されている。

 観光庁観光産業課の坂野修一さんは「ユニバーサルツーリズムの推進」をテーマに基調講演し、佐賀県の「さがすたいる」というウェブサイトなど様々な取り組みを紹介。「さがすたいる」では、バリアフリーの設備が整ったお店を探せるだけではなく、お店で働くスタッフのサポートをどのくらい受けられるかといったことまで分かりやすく紹介している。

基調講演する観光庁の職員

坂野さんは観光庁でホテル・旅館のバリアフリー化やユニバーサルツーリズム促進などに従事

 坂野さんによると、高齢者、障害者からは、旅行先の設備よりもスタッフによるサポートの情報を重要視しているという意見が多いのだという。ハード面のバリアフリーに目がいきがちだが、旅行介助士が旅行に同行することによってソフト面から不便を解消することもポイントになりそうだ。

障害者、高齢者旅行には潜在的需要がある

 基調講演に続いて行われたシンポジウムで、グリズデイル・バリージョシュアさんは海外のユニバーサルツーリズムの事例を紹介。障害者や介護の必要な高齢者の旅行には大きな経済効果もあるのだという。

 1981年にカナダで生まれたバリージョシュアさんは「ACCESSIBLE JAPAN」という海外の障害者に向けた日本観光の英語情報サイトを2015年から運営している。旅行好きで様々な所に出かけているバリージョシュアさんは、脳性麻痺による障害が手足にあり、自らも4歳から電動車いすの生活を送っている。

障害者に向けた日本観光の英語情報サイトを2015年から運営しているバリージョシュアさん

「ACCESSIBLE JAPAN」を見て来日する人も

「ユニバーサルツーリズムというのは、誰でも安心して旅行を楽しむことです。面白い調査があります。イギリスの例ですが、障害を持っている方や高齢者の方は、旅行をする時に一般の方よりも長く滞在します。滞在時間だけではなく、介助で一緒に行く人もいるので消費が倍になり、経済効果も大きいです。イギリスではユニバーサルツーリズムで毎年1兆7000億円が使われています。隙間産業ではなく大きなマーケットなのです」(バリージョシュアさん)

 介護関連の事業者にとって、スタッフが旅行介助士の資格を取得しても需要がなければ時間や費用が無駄になってしまう。しかし、ジョシュアさんによれば要介護者、障害者の旅行には潜在的な需要がまだまだあるということだ。

→「ACCESSIBLE JAPAN」

いつも知っているメンバー“いつメン”との旅行が大切

「日本一かっこいい介護福祉士」として注目を集めている杉本浩司さんは、特別養護老人ホームの介護職、訪問介護、デイサービス、在宅のケアマネジャー、特別養護老人ホームの施設長などを経験し、介護の現場をよく知る叩き上げ。自らのミッションを「日本の介護を変える」ことだと語る杉本さんは現在、介護の面白さを伝える講演や自立支援、人材育成、経営管理等の講演活動の他、施設アドバイザーや各団体幹事や顧問、理事としても活躍している。

講演するイケメン介護士・杉本さん

杉本さんは介護現場の制服のプロデュースなど多岐に渡って活躍

 ユニバーサルツーリズムを日本に普及させるためには、様々な誤解を解かないといけないと杉本さんは指摘。介護現場、そして高齢者本人にも「要介護度5の人は旅行に行けない」「認知症の人は旅行に行けない」といった誤解があるのだという。まずそういった誤解を解いて、高齢者から想いや欲を引き出すことが必要だという。

 また、糠谷さんの“その日初めて会った方にサポートをしてもらうことには色々な不安がある”という指摘に対し、杉本さんは現場での経験を踏まえて次のように語った。

「“いつメン”であることが必要です。“いつも知っているメンバー”と一緒に行かないと意味がありません。外出支援を10年以上してきましたが、大変なのは最初だけです。利用者の夢や目標を叶えるパートナーとしての成功体験を積めば、介護職自身も楽しくなるはずです」(杉本さん)

「日本の介護を変える」ために熱く語るイケメン介護士

経験に裏打ちされた杉本さんの言葉

 旅行介助士の資格を取得する過程では、介護旅行の企画と手配の補助、旅行前の準備と下見、旅行中の移動・食事・入浴などのサポート、旅程の管理などを学ぶことができるという。まさに杉本さんの言う“いつメン”として、介護職が要介護者の旅行をサポートするための力をつけられる。出かけることを目標にすることで、日頃のリハビリへの取り組み方も変わってくるそうだ。

旅行介助士のシンポジウムの登壇者

シンポジウムの登壇者と参加者で活発な質疑も

 高齢化が進み、誰でも安心して旅行を楽しめるユニバーサルツーリズムがますます必要とされる現代。旅行介助士の資格を取得した介護職がユニバーサルツーリズム推進の担い手となり、要介護の高齢者と旅行をしている姿を当たり前に目にするようになる日も近いのかもしれない。

取材・文/ヤムラコウジ

【データ】
一般社団法人日本介護旅行サポーターズ協会
URL:https://www.travel-supporters.com/
旅行介助士受験受験資格:下記のいずれかに該当する者
介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修受講者
介護福祉士、看護師、PT、OT、ST、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師などの資格者
介護保険適用の事業所、または障害者総合支援法適用の施設で、介護士、ヘルパーとして勤務した経験のある者
その他、要介護者、高齢者の介助業務に従事した経験のある者
※すでに「旅程管理主任者」を取得している場合には、1日目(終日)、2日目(午前中)の講座は免除
養成講座受講料:5万円(税別)
受講方法:全国主要都市で実施予定。詳細はホームページにて要確認
URL:https://www.travel-supporters.com/schedule/
資格者登録:旅行介助士資格取得後は、一般社団法人日本介護旅行サポーターズ協会が発行する「資格者証」が発行されるほか「添乗員」として下記の添乗員派遣会社に登録することができる。その際に費用等は発生しない。

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  1. 現役ガイドヘルパー より:

    障害者に対する国の制度として「移動支援(ガイドヘルプ)・・・ヘルパー(ガイドヘルパー)が外出に付き添う」があります。旅行介助士・ガイドヘルパーの利用を介護保険扱いにして欲しいです。高齢者だけで人口の30%を占める超高齢社会の日本では高齢者が「まち(一般社会)」で暮らせる社会になっているかが生き残りの決め手です。移動支援は移動手段の提供ではなく、移動手段は徒歩およびタクシーを含む公共交通機関ですので、路線バスや電車などの公共交通の維持にもなります。ガイドヘルパーが1対1で付き添いますので交通事業者(特に乗務員)や高齢者や障碍者に不慣れなお店やレストランの負担にもなりません。障害者・高齢者の旅行促進は「お楽しみ」でご本人の活力アップだけでなく、「まち(社会)創り」にも有益です。当事者が「まち」にいない状態で共生社会なんて創れません。逆に、旅行先として選ばれるためには公共交通の充実した「まち」と心のバリアフリーを持つ「まち」の人が必要です。旅行介助士・ガイドヘルパーの役割は日本を救います。

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  2. やっちゃん より:

    母の介護をして8年がたち、母は永眠されましたが、母にはいろいろ自動車でいろいろな所に行き楽しい思い出を作ってきましたが、平成29年永眠されました。
    母にしてあげたかったここのお仕事で、母の様に車椅子でどこにも行けない方にお手伝いさせて、楽しい思い出を作ってあげたいですあげたいと思っていま。
    何卒宜しくお願い致します。

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