2016.12.29 |暮らし   

「排せつ」のトラブル<2>便秘の種類とその予防~プロが教える在宅介護のヒント

 専門家に在宅介護のヒントを教えてもらうシリーズ、前回に引き続き、介護中の「排せつの問題」の中でも、悩みの多い「便秘」について。今回は、高齢者に多いという2つの便秘のタイプとその特徴を訪問看護師の長川清子さんが解説、家庭でもできる予防法を伝授する。

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写真/アフロ

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高齢者に多いのは「弛緩性(しかんせい)便秘」と「直腸性便秘」

 訪問看護をする傍、在宅療養について専門職からの相談を受けていて、高齢者の便秘が問題になることが大変多いと実感します。そこで、介護をするご家族にはとくに高齢者に多い、腸のはたらきが弱ることで起こる2つの便秘タイプを知っておいていただきたいと思います。

弛緩性便秘とは

 腸の蠕動(ぜんどう)運動が悪くなって起こるのが弛緩性便秘です。

 大腸は、盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸からなっています。食べ物の残りかすは液状で大腸に送られ、蠕動運動によってこのルート上をたどる過程で、徐々に水分が吸収され、固まります。

 しかし、蠕動運動が弱ると、大腸のあちこちに便が残り、なかなか直腸へたどり着かず、排出されません。

 大腸にとどまる時間が長い分、水分を失った便は硬くなり、さらに出にくくなる悪循環が起きます。長く腸にとどまっている「宿便」はガスを発生するため、お腹が膨らんでくることが多く見られます。

 弛緩性便秘が起こる原因は、以下が考えられます。

・生活習慣の変化
・食事の変化
・水分不足
・腸内環境の悪化
・食事をとる口の機能の低下(噛めない、義歯が合っていない、歯周病がある)
・心配事によって起こる不眠やストレス
・運動不足
・普段の姿勢(円背などで内臓が本来あるべき位置からずれ、腸がよく動かない)
・薬の影響(便秘薬の使いすぎも含む)
・病気・治療の影響
・経管栄養の影響
・手術の影響

 在宅医療や介護保険を利用している人は在宅医や訪問看護師、ケアマネジャーへ、まだ利用していない人は地域包括支援センターの看護師などに相談して、原因が医療的なケアを必要とするかなどを確かめ、必要に応じて適切な専門ケアを受けましょう。

 また、生活の中で腸のはたらきを高める予防的セルフケアも大切です。詳しくは後半に述べます。

直腸性便秘とは?

 大腸の出口に当たる直腸に硬い便が溜まり、自力で出すことができなくなってしまうのが直腸性便秘です。

 本来、便が直腸に至ると、直腸の壁が伸びることが刺激となって、便意が起こります。しかし、そのときに排便できなかったり、刺激への感受性が低下して便意がなかったりすると、便が溜まるのです。腹筋や肛門付近の筋肉の力が弱り、いきめなくなることも影響している場合があります。

 主なる原因は、以下の通りです。

・排便姿勢(排便に適した「考える人」の座位)がとりにくい、とれない
・排便機能の廃用(肛門括約筋や肛門挙筋など排便するときに使う筋肉などが低下している)

 横になって過ごす時間が長い人、寝たきりの人に多く見られます。

 直腸に溜まった便のことを嵌入便(かんにゅうべん)といい、そのせいで肛門は締まりが悪くなります。

 このとき下剤を使うと下痢が起き、嵌入便の隙間を、下痢状の便が流れ出て便失禁が起こり、便秘の解消にはならないことが多いです。

嵌入便があるときは、まずそれを出し切ることが大切

 嵌入便の状態によって摘便(てきべん)または座薬や浣腸で嵌入便を取り除いてから、弛緩性便秘と同様に腸のはたらきを高める予防的ケアが必要です。

 摘便とは、自力で排便ができない人の便を看護、介護に当たる人が指で取り除く行為です。医療行為に当たるので、訪問看護師かご家族が行うことになります。

 単に便を取り除くだけではなく、便の排出に合わせてご本人にいきんでもらったり、下腹部の指圧(後述、「の」の字指圧)を併行して、自然な排便の感覚を取り戻してもらうように誘導することも大切です。

 訪問看護の現場では摘便をすることが多く、訪問看護師の摘便技術は非常に高いので、嵌入便が疑われる場合は、主治医に相談し、訪問看護師を派遣してもらってケアを受けたり、ケア技術を学ぶとよいかと思います。主治医がいない人は、地域包括支援センターや「まちの保健室」などを見つけ、相談してみましょう。

 予防的ケアを自力で行うことが難しい状態の高齢者の場合は、介護者はぜひ専門職のサポートを求め、みんなで自然な排便周期を取り戻すことを目標にケアしていきましょう。

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