2017.02.23 |マネー   

制度を知ってる?介護保険は利用限度額の半分しか使われていないと識者が警笛

まじめで責任感の強い人ほど介護を一人で抱えがち 

 1998年から2015年の過去18年間に生じた介護殺人716件のうち、加害者は男性が525人で全体の72.3%となった。介護殺人を研究している、立命館大学准教授の斎藤真緒さんはその理由をこう分析している。

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「男性介護者は責任感が強くて、自分でやらなきゃと思っている人が多いです。夫だけでなく息子もです。『介護は自分ひとりだけではできない』という認識を男性が持ちづらいというのが、大きなポイントだと考えています。いくつか要因はあると思いますが、1つは仕事。ずっと会社勤めをしていると、弱音を吐く関係性が仕事関係では作りにくいので、責任感を持って何かをやりとげるといった仕事のように介護をしてしまい、SOSを出しにくいということです」

 SOSを出しにくい要因の1つに、「家族の恥は外に出したくない」といった考えもある。

「親は子供に迷惑をかけたくないと思うけれど、子供の立場だと、家庭や仕事があっても親の介護にノータッチという意識は持ちづらく、自分ができる範囲のことをしてあげたいと思っていることも多い。だけど、家族ゆえに上手に意思疎通ができていないという面もあるんです。ですから介護する側、される側が、介護という現実と向き合うことになったとき、どうしたいか、されたいか、ということを日頃からしっかり話し合っておくことが大事です」(斎藤さん)

 特に女性の場合、自宅に第三者が入ることへの抵抗感がまだまだ強い。

「私の母も父の介護をしているときに、掃除ができなくなってダスキンにお願いしていたのですが、母と電話していたら『今日はダスキンが来るので家を掃除していた』って言うんです。女性ってそういうところが強いと思うのですが、介護が切羽詰まってくるとそうは言ってられなくなる。風通しのいい家族に意識を変えて、そういったサービスもとにかく1回使ってみるといいと思います。メリットも実感できて、第三者から介護されることを気楽に考えられるようになりますから」(斎藤さん)

必要な人に必要な情報が届いてないという現実

 まじめな人ほど介護をひとりで抱え込んでしまいがちで、ストレスを発散できないばかりか、世間との接点がなくなっていく。気持ちも余計に内向きになってしまい、将来を悲観し、閉塞感に陥ると、気持ちを立て直すのにも相当なエネルギーが必要となる。

 介護・医療ジャーナリストの長岡美代さんが言う。

「例えば『要介護1』は、介護保険で月約16万6920円の限度額まで在宅介護サービスが使えます。仮に限度額をめいっぱい使ったとしても、自己負担1割で月1万6692円。しかし平均的には、この半分くらいしか使われていないのが現状です。

 これだけ公的な保険が普及していても、必要な人に、必要な情報が届いておらず、制度を知らないばかりに家族が疲弊している例は少なくありません」

 2月7日、介護保険制度の見直し内容を盛り込んだ介護保険法改正案を閣議決定した。

 2018年8月から現役並みに所得が高い高齢者について、介護サービス利用時の自己負担割合を現在の2割から3割に上げることが柱となることがニュースになっているが、低所得者層だけでなく、一般世帯(課税世帯)にもさらに深刻な事態が待ち受けている。

「消費税がアップし、デイサービスの食費も上がり、都内のタクシーは初乗り410円といいますが、長距離は料金アップです。

 通院の足に使う家庭も多いので、今後このタクシー代で悩む人も増えるはずです。

 今年8月からは、一般世帯の高額介護サービス費の上限額も見直されます。ひと月の上限額が、現行の3万7200円から4万4400円になります。同時期に、医療費の上限額も引き上げられます。これではもう介護も医療も受けられない!となる人が出てくるでしょう」(長岡さん)

※女性セブン2017年3月2日号

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