2017.03.08 |暮らし   

在宅介護を頑張る人へ~漫画家&介護福祉士・國廣幸亜さんに聞く「介護職のホンネ」

 介護福祉士として仕事をしながら、その介護体験を描いた漫画が話題になっている國廣幸亜(くにひろゆきえ)さん。

 介護の仕事は、3K、4K(きつい、汚い、危険、給料が安い)と揶揄されるなどネガティブに捉えられることが多いが、國廣さんの描いた漫画を読むと、そうしたイメージはくつがえされる。

 介護を受ける高齢者と介護職員の悲喜こもごもに、介護や老い、認知症に抱きがちなネガティブな先入観の間違いに気づかされ、ホロっと涙が出て、心が温かくなるシーンが満載なのだ。

 介護に関わる勤務経験15年以上のベテランとして、國廣さんは、実際、介護に対してどんな思いを抱いているのか。なぜ、介護漫画を描こうと思ったのか。介護サービスを受ける側ではなかなか聞くチャンスが少ない、介護職の本音を聞いた。

 介護をする気持ちが少しラクになるかも!?

インタビューに応じる國廣幸亜さん。 

インタビューに応じる國廣幸亜さん。

 * * *

介護を受ける人の強さやたくましさ、優しさを漫画で伝えたい

 訪問介護員やデイサービス、介護老人保健施設などの職員として働き、仕事を通じて感じたことを、さらに介護漫画を描くために振り返るという作業を繰り返してきた國廣幸亜さん。

実録!介護のオシゴト―楽しいデイサービス 』『ほっと! 介護日誌~介護の時代を生きる私たち~』(全て秋田書店刊)など、数々の介護エッセイコミックを描いているが、これらの作品で多く取り上げてきたテーマは、”介護を受ける高齢者それぞれの強さやたくましさといった人間的魅力”だ。

「高齢になり、介護が必要になることは、心身共に老いて、弱ることだとイメージしている人は多いかもしれません。私も15年前、介護の仕事を始めた頃は、自分は介護のプロとして『しっかりケアをするぞ!』と気負っていた面があったけれど、実際にたくさんのお年寄りに接して、『介護を受ける人=弱い人である』というのはちょっと違うと思うようになり、むしろ強さやたくましさ、その中にある優しさを漫画で伝えたいと考えるようになりました」(國廣さん、以下「」内同)

 デイサービスの利用者に、デイサービスに通うことを決めた理由を聞くと、「家族の負担を減らしたいから」と答える人が多くいたという。介護を受ける人も「家族に負担・迷惑をかけている」と感じる状態が続くことは心苦しいというのだ。

「自分に置き換えて考えても、いつも『お世話をされる立場』では、生きている甲斐がないと感じるかもしれません。子育てや仕事で忙しく、いきいき生きてきたはずの自分なのに、人の世話になるなんて情けないと思うかもしれない。愛する家族の負担になりたくないという気持ちもあるでしょうか。長年、思う通りに生活をしてきたのに、今さら人の世話になりたくない、好き勝手にしたいという腹立たしさもあるかもしれない、と思います」

ホームヘルパーを家に呼ぶ前に掃除をする利用者も… 

 しかし、そのような状況でも多くの人が、自己肯定感や自尊心を失って、しょんぼりしているばかりではないという。

「訪問介護員(通称:ホームヘルパー)をしていた頃、利用者さんが掃除をして待っていてくださったことがありました。家事援助でうかがったので、私には、困惑するようなことなんですが、『人を家に迎える前には掃除する』というのが、その利用者さんにとっては、自然なことだったんです。その価値観は大切にしなくてはと思います。私は、もともと家事があんまり得意じゃなかったので、利用者さんに怒られたりしましたが、私に家事のやり方を教えることが張り合いになっているご様子でした。

 多くの利用者さんは何かしら役割や生きがい、楽しみを見出して、毎日を自分らしく、平穏に過ごす工夫をされていました」

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介護が必要な人の「その人らしさ」に目を向けたら気持ちがラクに 

 デイサービスの利用者で、夕方になると早く家に帰りたくて時計を気にしているように見える人が、心の中では、家族の負担軽減を願ってデイサービスに来ていると知ったとき、國廣さんは、人の想いというのは深く、簡単には理解できないと感じたという。

「私は、利用者さんの気持ちが本当に分かっているだろうか…と、自問自答を繰り返しながら、働いてきましたが、やがて、仕事を続けるうちに、年齢を重ね、介護が必要になったからといって、その人が本来持っている強さやたくましさは変わらないことに気づいたんです」

 老いても変わらない『その人らしさ』をたくさん見てきたことで、國廣さん自身も、年をとることへの恐れが薄らいだ気がしていると話す。

「利用者さんから学んだことは、たくさんあります。今、ご家族の介護をされている方も、介護を必要としている状態だけでなく、長い年月、生き抜いてきたその人本来の強さやたくましさに目を向けると、介護をする気持ちがラクになるのではないでしょうか」

我が子の顔が認知できなくても、親心は変わらない

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