2017.06.08 |暮らし   

事例でみる医療ソーシャルワーカーの役割<2>【プロが教える在宅介護のヒント】

医療ソーシャルワーカーの生活支援「事例」

 医療ソーシャルワーカーにはどのような相談ができるのだろうか? 葛田さんの話から、身近な事例をご紹介しよう。

【事例1】自分が入院したら介護をする人がいない

●咽頭がんが見つかったA子さん(58歳)の場合

相談内容:入院治療が必要な病状だったが、二人暮らしの母親の面倒を見る人がいないことが気がかり。母親は、介護の必要な状況だが、要介護認定を受けていない。

支援内容:A子さんに、介護保険について説明し、介護保険サービスを利用することになった。地域包括センターのケアマネジャーと連絡をとり、A子さんの治療を考慮しながら、母親の生活支援が整うように調整した。

【事例2】子どもを置いて入院できない

●子宮がんが見つかり、手術のため入院することになったB子さん(45歳)の場合

相談内容:B子さんは母子家庭で、頼れる親や親戚も身近になく、子どもを置いて入院することに不安を感じていた。

支援内容:医療ソーシャルワーカーは、子育て支援を行っている家庭児童相談、子ども家庭課などさまざまな関係機関を紹介し、緊急時一時保護や子どもショートステイ事業を行っていることを伝えた。B子さんは即日選択先を訪ね、入院前に子どもを預ける段取りができた。

【事例3】お金がなくて受診を我慢していた

●検査入院を拒否したC夫さん(63歳)の場合

相談内容:下血と意識混濁があり、救急で運ばれたC夫さんは意識が回復すると「治療をやめて帰りたい」といい、看護師が「検査入院が必要」と説明したが、納得しなかった。

支援内容:C夫さんに事情を聞くと、「以前から腹痛があったが、お金がかかると困るので我慢していた」という。帰りたいのは治療費を心配してのことだった。医療ソーシャルワーカーは、C夫さんが国民健康保険に加入していることを確認したので、医療費が高額になった場合には「高額療養費制度」が自動的に適用されること、さらに「限度額提要認定証」の取得、提示により、所得に応じた自己管理限度額払いになることを伝えた。医療費の支払いにめどがつきC夫さんは治療に前向きになった。

【事例4】親の治療について兄弟の意見が対立してしまった

●入院中の母親の治療について、家族の間で意見が対立したD助さん(50歳)の場合

相談内容:D助さんの母親は「胃ろう」をつくって退院することが勧められた。母親とD助さんは主治医の説明に納得したが、D助さんの弟が「胃ろうをつくると寝たきり、廃人のようになってしまう」と断固反対し、母親も動揺した。D助さんも心配になったが、主治医に確認するのは気がひけ、病棟担当の医療ソーシャルワーカーに相談した。

支援内容:医療ソーシャルワーカーは再度、家族そろって主治医の説明を聞く機会を調整した。主治医と管理栄養士、医療ソーシャルワーカーから、治療や口から食べる機能のリハビリ、介護保険制度などについて説明を受け、兄弟は主治医の治療方針に納得し、母親も安心できた。

【事例5】がんの通院治療中も働きたい

●通院で抗がん剤治療を受けることになったE郎さん(58歳)の場合

相談内容:E郎さんは通院で治療中も働きたいと希望。

支援内容:通院する病院は「がん診療連携拠点病院」のひとつで、患者支援センターの中に「がん相談支援センター」があったため、がん相談の研修を受けた医療ソーシャルワーカーが、最寄りのハローワークにいる専任の就職支援担当と連絡を取り、E郎さんの希望や治療状況を踏まえた職業相談に応じてもらうこととなった。

【事例6】介護できるかしら?

●大腸がんの手術をして退院のめどがついたG一郎さん(80歳)の妻、I子さん(74歳)の場合

相談内容:I子さんは人工肛門のパウチ交換など、自分に介護ができるか不安をもっていた。退院支援を担当する看護師にやり方を教わっても、自信がもてないようだった。

支援内容:医療ソーシャルワーカーは退院支援看護師と共にG一郎さん、I子さんと相談し、24時間対応の訪問看護の利用を提案した。訪問看護ステーションを選定し、退院前からの担当看護師とG一郎さん、I子さんが顔を合わせ、話し合いで不安を解消することができた。

葛田衣重(くずたよしえ)さん

葛田衣重さん01

医療ソーシャルワーカー。国立千葉大学医学部附属病院地域医療連携部勤務。公益社団法人日本医療社会福祉協会業務執行理事。独立行政法人自動車事故対策機構千葉療護センターを経て1999年10月より現職。

取材・文/下平貴子

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