2017.06.10 |暮らし   

地域に密着した「日常感覚」の介護付有料老人ホーム<後編>

杜の癒しハウス文京関口

 2013年9月にオープンした「杜の癒しハウス文京関口」は、山手線の内側の落ち着いた環境にある。椿山荘までも徒歩圏内で、地蔵通り商店街で日常の買い物も楽しめる。最寄り駅の有楽町線・江戸川橋駅から徒歩2分。有楽町や池袋といった主要駅にも出やすいので、外出はもちろん、家族も面会に来やすい利便性の高い立地だ。

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利便性の高い場所にある「杜の癒しハウス文京関口」

 前編では地域とのつながり作りや「家庭の困難を希望に変えよう」というコンセプトに基づいた取り組みについて紹介した。今回の後編では、ここでの入居者の過ごし方を具体的にお伝えする。「家族の目」で見守るスタッフが、ちょっとした変化にも気付いてくれるので、安心して生活を送ることができる施設だ。

日常生活をそのまま持ってきて過ごすことの意味

 4階では花や野菜を作っている。取材当日は、入居者の井口隆弘さん(84歳)がプランターを置く台を作ったり、種を植えたりと力を発揮していた。慣れない栽培に四苦八苦する職員を見かねて、手伝いを買って出たのがきっかけだ。今ではミニトマト、サンチュやアスパラガスなどたくさんの種類が栽培されるようになった。井口さんは部屋でも様々な工作を行っているという。ここでは、入居者が自由に好きなことをしながら過ごせる雰囲気がある。

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手先が器用な井口さんは、竹トンボを作って近所の幼稚園の子どもにあげたりもしているという

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丁寧に栽培されている野菜。収穫が楽しみだ

 高齢者向け施設に入居することを一大事と捉え、生活が一変することへの不安を持つ人も多い。しかし、施設長の柳沼亮一さんは、ここに“引っ越し”てきて、日常を続ける感覚でいてほしいという。

 全ての居室のベッドの枕元やトイレ、浴室にスタッフルーム直通の緊急コールボタンを設置。イオン発生器も標準で装備され、臭い対策もされている。

「臭いには気をつけています。外部の委託掃除は入れずにスタッフが隅々までしています。介護の仕事で『環境整備』は重要なポイントです。掃除をすること、お話をすること、レクリエーションをすることも大切な要素です」(施設長の柳沼亮一さん、以下「」は同)

 実際、部屋にスタッフではない知らない人を入れたくないという入居者も多いという。人それぞれ生活の様式が違うので、掃除の仕方を変えているとのこと。臭い対策に悩まされている高齢者施設は多いが、ここは隅々まで見せてもらったが、臭いが気になることは全くなかった。

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日当たりもよく快適に過ごせる居室

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入居者は自室の入り口を好きなように飾っている

 日常生活を続けるとはいえ、やはり共用部やレクリエーションの内容も気になるところ。訪れた日はベビーカステラ作りを楽しんでいて、楽しそうに懇談を楽しむ様子が印象的だった。

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ベビーカステラ作りをスタッフと共に楽しむ

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出来上がったベビーカステラは母の日のお祝いのプレートで

介護を一人で抱え込まないことが大切

 柳沼さんに高齢者向け施設への入居を考えている人、その家族へのアドバイスを聞いてみた。

「介護は一人で悩むものではないので、まずは相談してほしいですね。ギリギリまで頑張る人が多いですが、入居する本人がある程度分かるうちに施設を探したほうが良いとお伝えしています」

 入居を迷っている家族には「本人が若く、元気な時ならなんと言うかを考えてみてください」と伝えることもあるという。そうすることで、1人で介護を抱え込んできた家族の気持ちを軽くできることがあるのだそう。

 認知症が進んでから入居すると、捨てられたと感じたり、帰宅願望が強くなったりすることがある。意識障害が起こり、頭が混乱した状態であるせん妄が発生し、起床時に自宅でないことを理解できないこともあるという。早めに相談をすることが本人、家族の負担を減らすカギといえそうだ。

 続いて、柳沼さんが考える介護について聞いてみた。

「介護というと、三大介護と呼ばれる排せつ・食事・入浴、これらの支援が注目されますが、それは私たちがプロであるからこそだと思っています。排せつ介助を通して体調の変化などを観察します。また、食事介助を通して嚥下状態や栄養状態などを観察します。入浴介助には、清潔の保持だけではなく全身状態の観察とリラックス効果を含んでいます。

 生きるために大切な3つの要素であり非常に深い知識も必要とされます。しかし、それらと同じように一緒に泣いたり、笑ったり、時には怒ったりと、本来それらも同じぐらい大切な介護の一部です。そして家族として共に新しい思い出を作っていく。そんな仕事だと考えています」

「介護はその人の人生をプロデュースするような仕事」だと話す柳沼さん。「特別なことは何もしてないんですよ」と繰り返していたが、それは“ファミリー”として入居者と接しているため、全てのことを当然として捉えているからだと感じた。

 地域との温かいつながりがあり、住環境の整った杜の癒しハウス文京関口。見学に訪れれば、介護における人の力を感じることがきっとできるだろう。

【データ】
施設名:杜の癒しハウス文京関口
公式WEBサイト:http://sanko-bunkyo.jp/top/
所在地:東京都文京区関口1-14-12
最寄駅:東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅より徒歩約2分
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:社会福祉法人 三幸福祉会
敷地面積:946.2平方メートル
延床面積:671.43平方メートル
室数:56室
入居要件:1~4階は原則満65歳以上の方で要支援・要介護、5階は原則満65歳以上の方で自立・要支援
構造:鉄筋コンクリート造 地上5階・地下1階
開設年月日:平成25年9月
料金:【1】か【2】を選択(【1】【2】共に月額利用料とその他費用がかかる)
【1】長期契約
1~4階の場合は0~1350万円(返還金制度あり、5年償却)、5階の場合は0~1940万円(返還金制度あり、6年償却)。
【2】期間設定型(1年)
1~4階契約の場合は270万円(返還金制度あり、1年償却)、5階の場合は325万円(返還金制度あり、1年償却)。
※月額利用料、その他費用
1~4階の場合は14万5000~37万円、5階の場合は16万5000~43万5000円(家賃相当額、施設管理費、水道光熱費、食費<30日計算>、生活サポート費<自立の方のみ>、上乗せ介護費2万5000円、日用品<施設常備外品>、介護用品の実費、介護保険給付の1割負担額)

撮影/津野貴生

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●「終の住処」を追求する介護付有料老人ホーム<前編>
●「終の住処」を追求する介護付有料老人ホーム<後編>
●地域に根ざし高齢者サービスの拠点となる特別養護老人ホーム<前編>
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