2017.06.16 |マネー

親の介護 先行投資は本人の幸せと節約のダブルでメリット

 東京―岩手と遠距離で、認知症の母の介護をしている工藤広伸さん。ブログや書籍などで公開している、家族の目線で”気づいた””学んだ”数々の介護心得は、医者や専門家ではわからない視点で、実際の介護に役に立つと話題だ。当サイトのシリーズでも、認知症の親への関わり方や、サービスの利用の仕方など様々なテーマでのアドバイスが満載。今回のテーマは「お金」。要介護度が上がるとともに、介護にかかるお金も増すと言われているが、ちょっと考え方を変えると…。さて、工藤さんの介護費用の節約術とは?

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将来かかる介護のお金に備えて貯金する人は多いはず。でも、貯める前に、今の使い方を見直してみては?(写真/アフロ)

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お金のかかる介護に備えて貯金するか、それとも…

 年をとるとともに、医療費は増加すると言われています。同じように、介護度が上がると介護費用は増加します。家計経済研究所が行った2011年の調査によると、1か月1人あたりの在宅介護費用の平均額は、要介護1で5.4万円、要介護3で7.2万円、要介護5では10.7万円です。

 このように人生の後半でお金が必要になるため、貯金をして病気や介護に備えておこうと考える方は多いと思います。わたしもそのように考えていたのですが、あることがきっかけで、介護費用を「先行投資」するようになったのです。

祖母の介護に使ったお金、これで良かったのか? 

 そのきっかけとは、90歳の祖母を看取ったことでした。祖母は子宮頸がんで入院し、放射線治療をしました。さらに病院内でベッドから転落し、大腿骨の手術もしました。祖母は認知症で、お金を自分で管理できない状態にあったため、孫のわたしがこれら治療費等をすべて立て替えることになり、半年で100万円近い出費となりました。
 
 その後、成年後見人(参照URL:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html#a1)となり、祖母の財産管理を任されたわたしは、祖母のためにお金を使う立場になりました。家庭裁判所の管理下で、祖母の病院代やおむつ代、わたしが介護するために必要な交通費などが、支出として認められました。しかし、裁判所のスタンスは祖母の財産を守ることなので、大きな買い物をする時は、必ず裁判所の許可が必要です
 
 祖母の財産管理をしながら強く思ったことは、「もし、祖母が認知症でなく、自分で判断できる状態だったら、こういうお金の使い方を望んだだろうか?」ということでした。ひょっとしたら晩年は自宅でゆっくり過ごしながら、旅行へ行きたかったかもしれない、おいしいお寿司をいっぱい食べたかったかもしれない…。

 祖母のための財産管理とはいえ、お金の使い方はこれでいいのかと思うようになったのです。

母の介護では、お金をもっと有効活用したい

 結局、祖母は、入院してから1年後に亡くなってしまいました。祖母の財産は、認知症であるわたしの母に相続されることになり、すべて母の介護費用として使うことに決め、同時に、そのお金を、「祖母の時のような使い方するのではなく、もっと前倒しで有効活用できないか」と考えるようになりました。

 祖母の介護はとにかく後手後手で、年をとるとともに介護費用が増える典型的なパターンでした。生きていくためにお金を使ってはいたものの、人生を楽しむためにお金を使うことはありませんでした。だから、母には、あえて先手先手でお金を使って、人生を楽しんでもらうことにしました。

介護サービスを早めに利用して、自立生活できる期間を延ばす

 例えば、デイサービスや訪問リハビリといった介護サービスも、早めに利用することで自立して生活できる期間が延びると考え、積極的に試しています。また介護だけではなく、日常においての「楽しみ」にお金を使うこともするようにしています。月1回は外食に行きますし、日帰りですが旅行に行くこともあります。

「健康寿命」という考え方があります。日常生活に全く問題のない期間のことで、平均寿命と健康寿命の差が、不健康な期間となります。認知症の母はすでに健康寿命は終えていますが、それでも入院する必要もなければ、介護施設で生活する段階でもありません。少しでも長く自立して生活するために、介護費用を先行投資しているのです。

介護費用の先行投資で、先々の支出を減らす

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 上のグラフは、祖母と母の介護費用支出をイメージで表したものです。黒い線が祖母で、赤い線が母になります。祖母の線は、多くの人がたどる介護費用の出費パターンで、晩年になるにつれて、介護費用がどんどん増えていきます。

 母親に関しては、かなり早い段階で介護にお金を使っています。先行投資をすることで、自立した生活ができる期間が延び、不健康な期間が減ることで、介護費用の総額が節約できるというイメージです。 

 読者の皆さんも、ご自身の健康に投資されているのではないでしょうか? スポーツクラブや健康教室に定期的に通うことで、健康寿命の期間が長くなって、病気にかかる費用が減ると考えている方は多いと思います。そのイメージをそのまま、介護にも当てはめようというのが「先行投資」の考え方です。

お金をどう使うのが、(介護される)本人にとって幸せなのか 

 月1万円のデイサービスを先行投資したことで、月15万円かかる介護施設への入所が2年先送りされるとしたら、誰でも先行投資するのではないでしょうか? 早い段階でリハビリを実施したことで、車椅子の利用が3年先送りできるとしたら、早めにお金を使おうと考えると思います。

 介護費用を貯金しておくことは、確かに必要です。しかし、そのお金をどのタイミングで使うことが介護されるご本人にとって幸せなのかを、一度考えてみてもいいかもしれません。祖母に関しては、もうちょっと前倒しで好きな事のために、お金を使ってあげればよかったと後悔しました。その後悔を繰り返さないために、母に関しては介護費用を先行投資するようにしています。

 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間20往復、ブログを生業に介護を続ける息子介護作家・ブロガー。認知症サポーターで、成年後見人経験者、認知症介助士。 ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/

 

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