2017.06.27 |暮らし   

やりたいことを叶える…療養型病院で家族の思い出づくり

 大阪府南部の緑豊かな地に建つ「老寿(ろうじゅ)サナトリウム」は、高齢者とその家族の願いが叶う療養型病院(※医療療養病床を持つ病院)として、関西地方で注目される存在だ。

 美味しい食事、広い敷地を活かした四季折々のイベント、趣味のクラブなど、入院患者が生活の場として、充実した日々を送ることができる工夫があるのはもちろんだが、他の病室とは区切られた「やすらぎの特別室」の存在がこの病院の大きな特徴のひとつ。

やすらぎの特別室01

「やすらぎの特別室」では一般の病室と隔たれた空間で家族が集い、憩うことができる

一時帰宅しなくても、家族と時間を共有できる

 通常の病室に入院している患者が、喜寿や米寿の祝いや正月に特別室へ転室することもできるが、在宅療養している人が、一日だけ、数日だけなど期間限定で家族とともに過ごす利用方法もあるという。

 十数年前までの療養型の病院では、記念日や行事に合わせて一時帰宅する患者がほとんどで、正月や盆は閑散とするところが多かった。しかし、最近は帰宅する家族側の家屋事情や、患者の重症化に伴い体調の急変を恐れて一時帰宅や外出をする患者は稀だという。病院内に家族が宿泊できる施設があれば、無理に帰宅をしなくても家族と大切な時間を過ごすことができると考えられ、2005年につくられたのが老寿サナトリウムの「やすらぎの特別室」である。

誕生日や正月、敬老の日に家族と過ごせる空間を

 この特別室の特徴について、院長の北畑大輔さんにうかがった。

「『やすらぎの特別室』は入り口もエレベーターも他の病室とは分かれていて、別棟のような配置になっています。出入りは24時間OKですし、料理もできます。食品の持ち込みや出前を頼むことも、ご家族がアルコールを楽しむことも可能です。広いベッドルームに和室、キッチン、浴室、トイレ、サンルーム、バルコニーがあり、4~5人は一緒に宿泊することができます。

 誕生日や敬老の日などのイベントに利用される方の中には、お孫さんが病室内をかわいらしい絵や輪飾りで飾りつけをすることもありますし、自宅で大切にしていた絵画や盆栽などを持ってきて目の保養をされる方もいらっしゃいます」(北畑さん、以下「」内同)

専用のキッチンでは、入居者(患者)の好みのメニューを作り、家庭の味を楽しむことができる

専用のキッチンでは、患者の好みのメニューを作り、家庭の味を楽しむことができる

やすらぎの特別室05

お酒の持ち込みも可能。家にいるのと同じようにくつろげる

 シアタールームがあるのも、人気の理由の一つだという。

「『サロン・ポム』と呼んでいる別室にはシアタールームがあり、ビデオ上映会や思い出の映画を鑑賞することもできます。お孫さんが運動会で一生懸命ダンスをする姿が映し出され、泣き笑いされる患者さんもいらっしゃいます。

 また、ピアノも置いてありますから、お孫さんがかわいらしい演奏をお祖父様、お祖母様に聴かせてあげている様子も見受けられますし、なかには患者さんご自身が演奏され、病院の職員に聴かせてくれたこともありました」

シアタールーム「サロンドポム」では、大きなスクリーンを家族揃って楽しめる

シアタールーム「サロン・ポム」では、大きなスクリーンを家族揃って楽しめる

最後にやりたいこと…が叶えられる場所でありたい

 誕生日など特別な日のイベントだけでなく、命の終わりが近づいてきた時に、家族や親戚が集まって一緒に過ごすために利用する人も少なくないという。

「在宅で頑張って看てきたけれど、いつ急変してもおかしくない状態になって不安だからと家族とともに過ごせる特別室に入院される方や、他院や当院の一般病室に入院されていた方が、最後の数日だけでも家族と過ごしたいと利用されるケースもあります。

 治療方針についてはご家族とはしっかりコミュニケーションをとり、納得のいく形をとらせていただきます。看護や介護もできる限り要望に添えるように心がけた上で、『やりたいこと』『叶えたいこと』をお聞きしてサポートしていきます。

 奥様の手料理を召し上がって夫婦の絆を確かめ合うご夫婦や、少しお酒を召し上がって満足される方、懐かしいBGMに浸る方など、患者さんにとってもご家族にとっても、大切な思い出をつくることのできる場になったとのお声をいただいています」

 最後に何がしたいかと問われたら「家族と一緒にいたい」と答える高齢者は少なくないだろう。しかし点滴や気管切開の管理など、医療的措置が必要で、24時間家族と過ごすというのはなかなか難しい場合もあるが、その願いが叶えられる場所と言える。

「『やすらぎの特別室』の利用料は日額3万8000円で、ご家族の分として、病院の食事を追加で注文することも可能です。寝具の貸し出しも行っており、過去には4~5人の方がご一緒に泊まられたことがあります」

 遠方から訪れる家族数名がホテルに宿泊することを考えれば、リラックスして過ごせる場としては決して高額ではない。

 老寿サナトリウムでは「やすらぎの特別室」に限らず、「患者と家族の願いを叶える」をモットーにした医療と介護が日々行われている。その日常から8つのストーリーを切り取った書籍『ラストディナー高齢者医療の現場から』(幻冬舎)が刊行され注目が集まっている。

※医療療養病床とは──病院の病床は看護師や准看護師の人員や提供される医療サービスによって、急性期病床、回復期病床、慢性期の患者のための療養病床などに分類されている。同じ病院の中でも、病棟やフロア、病室によって病床を分類して申請している病院もある。長期入院が可能な療養病床には、2017年7月現在、介護保険制度を利用する「介護療養病床」と、健康保険適用の「医療療養病床」の2種類があり、老寿サナトリウムは医療療養病床を281床持つ病院である。

【データ】
病院名:医療法人弘生会 老寿サナトリウム
公式WEBサイト:http://roujyu.jp/
所在地:大阪府河内長野市小山田町379番地の5
最寄り駅:南海高野線・千代田駅 南海バス(緑ヶ丘北町行)10分 (神社前下車)
     南海高野線近鉄長野線・河内長野駅 タクシー10分
TEL: 0721‐55‐0200
開設者:医療法人弘生会
敷地面積:11,141平方メートル
延床面積:12,333平方メートル
診療科目:内科
病床数:医療療養病床 281床 ( 8病棟)
構造:鉄筋コンクリート造5階建
開設年月日:1980年12月

取材・文/鹿住真弓

 

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