2017.07.06 |ヘルス   

やっぱり歩行は健康のカギ “1日8000歩、20分の速歩き”が目標

 健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のこと。その健康寿命に大きな影響を及ぼすのが「歩行寿命」だ。老化は足から始まるというが、歩くことによってどんな健康効果があるのか、『東京都健康長寿医療センター研究所』老化制御研究チーム副部長・運動科学研究室長の青栁幸利さんに教えてもらった。

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歩行速度が遅くなる原因は筋力の衰え

 背が曲がり、上体が前かがみになり、膝関節が曲がる――猫背で膝が曲がってくると、人は歩幅をあまりとれず、自然と歩幅の小さい歩き方になります。また、バランスを保とうと、前方ではなく、横方向に股を広げて歩くようになり、脚の動かし方もゆっくりしてきます。一般に、人は加齢とともにこのように歩き方が変化し、歩行速度が遅くなります。

 こうした歩行能力の低下は、個々人いろいろな原因が絡んでいますが、いちばんの原因は、なんといっても体を動かさなくなることによる筋力の低下にあります。

 おっくうになって歩かない→筋肉がどんどん細く、弱くなる→外に出たくなくなり、屋内に引きこもる→うつうつとしてよく眠れなくなる→眠れないと老廃物が脳に蓄積する→溜まった老廃物は脳細胞を死滅させる→前頭葉にある、手足の司令塔「運動野」の脳細胞がだんだん減少し、司令塔からの指示が出なくなる→歩こうと思っても、歩けなくなる→引きこもる…こうした悪循環が加齢に伴い深刻化していくのです。

青信号の間に渡りきれない人は認知症予備軍!?

 認知症のスクリーニングテストでは、5mを速く歩けなかったら認知症と診断されます。たった5mと思うかもしれませんが、日常に当てはめると“青信号の間に渡りきれるかどうか”の距離で、渡りきれない人が認知症予備軍となります。この「1m1秒」というのは世界的にも定義されている国際基準の数字です。

 歩くという行為は、現在の健康と将来の健康を予測する、とてもいいバロメーターです。

 歩くことによって、脳の血流や神経細胞が増えたり、心肺機能や免疫機能が高まったり、血糖値を下げたり…複合的にいろいろな効果が生まれます。

 だから、歩くことそのものを嫌がらない方がいい。まずは外に出て、自分の力で歩こうとすること。そう心がけてください。「膝が痛い」「腰が痛い」「年だから」とあきらめずに歩く。例えば、膝が痛いかたは、その周りの筋肉を落とさない、鍛えることが大事です。そうすることによって腿の前の筋肉(大腿四頭筋)やスネ(前脛骨筋)などの膝まわりがしっかりしてきて、膝の痛みがやわらいでくるのです。つまり、膝が痛いから歩くのをやめるのではなく、痛いからこそ歩くのです。絶対安静の状態ならいざ知らず、慢性期や回復期には「歩け、歩け、歩け」――今はそういう時代なのです。杖をついてもいいし、補助器具を使ってもいい。いろいろな方法を頼りにして構わないので、まずは歩く。

 例えば、スーパーの駐車場ではわざと遠い所に車を停めて歩く距離を増やすとか、掃除をするときに掃除機を手に持って行うといったことを積み重ねるだけでいいのです。その心がけは何年後かに必ず生きてきます。

 また、歩く際のもう1つのポイントは“速歩き”です。

会話はできるが、歌を歌えない程度の早歩きがポイント

 私は65才以上の高齢者5000人(重度の認知症や寝たきりの人を除く)を対象に、17年間にわたって研究を続けていますが、その結果、“歩数と中強度活動時間が増すごとに病気にかかる率が低くなる”ことがわかりました。(運動の強度は、その人の体力や年齢によって異なりますが)中強度活動とは、歩行を例にとると、大股で速く力強く歩けるくらいの歩き方で、会話はできるが歌を歌うことはできない、という程度の歩き方です。

 この“速歩き”がとても大事です。研究では、毎日1万歩歩いているにもかかわらず骨粗鬆症となり骨折してしまった女性がいました。この女性は旅館の女将さんで、着物を着ているため、いつもすり足で歩きます。そのため、歩数は多くても低強度の運動にしかならなかったのです。中強度の歩行となると屋内では難しいでしょう。やはり、散歩や買い物など、屋外の活動を要することと思います。

1日4000歩・5分でうつ、7000歩・15分でがんや動脈硬化を予防

 例えば、1日に4000歩以上歩き、そのうち速歩きが5分以上(=「4000歩・5分」)の場合には、うつを予防できる可能性があり、「7000歩・15分」の場合には、がんや動脈硬化などを予防できる可能性があります。最近よく耳にする「1日8000歩・20分の速歩き」というフレーズがまさにこれで、健康状態を良好に保つためには、そうした歩行活動が望ましいのです。これは決して特別なトレーニングではなく、多くの人が日常生活に取り入れられる、普遍的かつ有効な健康の指標だと私は思います。

※女性セブン2017年7月13日号

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