2017.10.20 |ヘルス

「口腔カンジダ」に要注意!入れ歯が原因でまさかのカビが

 東京―岩手と遠距離で、認知症の母の介護している工藤広伸さん。家族の目線で”気づいた””学んだ”数々の介護心得をブログや書籍などで公開し話題となっている。

 当サイトでも、介護にすぐ役立つ情報を連載で執筆してもらっている。今回のテーマは、口の中に真菌が繁殖して起こる「口腔カンジダ(※1)」だ。

 口の中のトラブルは、外から見えないだけになかなか気づきにくいもの。入れ歯がある場合は要注意と語る工藤さんのアドバイス、必見だ!

※1 真菌の一種が、口腔粘膜の表面で増殖する病気です。カンジダ性口内炎ともいいます。カンジダは、いつも口の中にすみついている常在菌の1つで、健康なときには増殖することはありません。しかし、なんらかの原因で口の中の粘膜の抵抗力が低下してくると、増殖してきます。乳幼児や老人に多くみられます。(出典/『家庭医学館』小学館)
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高齢者の口腔ケアには、思わぬ盲点がある!?(写真/アフロ)

母の上あご全体がカビで真っ白になっていた

 ある日、母(74歳)がわたしに「歯の詰め物がとれたみたい」と訴えてきました。早速歯医者に連れて行くと、詰め物がとれたのではなく虫歯が見つかりました。

 認知症の母は医師の説明をすぐ忘れてしまうので、わたしが代わりに病状についての説明を受けると、抜歯と入れ歯の調整が必要とのことでした。

 さらに医師は、「お母様の口の中の上のほうを見てもらえますか」と言うので、のぞき込んで見たら、薄ピンク色であるはずの上あご全体がなぜか真っ白になっていました。

 「これはお口のカビで、口腔カンジダですね」

 あまりにひどい母の口の中を見て、わたしの頭も真っ白になりました。

元気な歯と入れ歯が混在する母の歯みがきの仕方とは

 気になって母の歯みがきをチェックしてみました。
 
 母の歯は上が3本、下は5本だけ残っていて、あとは入れ歯です。医師からは、入れ歯の洗浄がきちんとできていないことが原因と言われました。

 入れ歯専用の洗浄剤を使わずに、普通の歯みがき粉で入れ歯を磨くと、研磨剤で入れ歯の表面を傷つけるのでよくないのと、何よりカンジダ菌を除菌する効果がないとのこと。

 家に帰って母が使っている歯ブラシを見たところ、毛先がつぶれていて歯ブラシの機能をすでに失っていました。また、母の入れ歯のみがき方をチェックしたところ、入れ歯洗浄剤を使わず、普通の歯みがき粉で入れ歯を掃除していたことも分かりました。

認知症で独居の母が、入れ歯のメンテナンスをできるのか? 

 長年、普通の歯みがき粉で入れ歯を洗浄していた母。寝る時も入れ歯を外す習慣がなく、入れ歯洗浄剤を利用したことがなかったのです。

 そこでまず、入れ歯の洗浄手順を紙に書いて、普段歯を磨く台所に貼りました。しかし、いつのまにかその張り紙は無くなっていました。母は分かったつもりになって、張り紙をはがしてしまったのです。

 ならばと、今までの習慣に合ったやり方で、入れ歯みがきをやることにしました。まず、”つけ置きタイプ”の入れ歯洗浄剤ではなく、”泡タイプ”の入れ歯洗浄剤で行うことにしました。この洗浄剤は、入れ歯や義歯専用歯ブラシにつけて1分間磨くというもので、洗浄がすぐ終わります。
 
 また、寝る時に入れ歯をつけたままでもいいかと別の歯医者で確認したところ、かみ合わせがきちんと調整されている入れ歯であれば、外さないほうがいいという意見でした。母の入れ歯調整は終わっていたので、寝る時に入れ歯を外さないようにしました。

 これで解決したと思ったのですが、今度は泡タイプの入れ歯洗浄剤を入れ歯につけずに直接口に入れてしまうという問題が発生しました。

 そこでわたしが帰省した時と、デイサービスに行って入れ歯洗浄に立ち会える時だけ、この方法でやることにしました。

 さらに、処方されたうがい薬を利用してカンジダ菌を除菌するようにした結果、3か月後には口の中は薄いピンク色に戻りました。

口腔カンジダは痛みがないので見落としやすい

 今までにも母は、薬指を包丁で深く切ったり、足のつま先をぶつけて青くなったりしたことがありました。しかし認知症で独居の母は、ケガをした時期や原因を思い出せなかったり、訪問看護師さんやヘルパーさんが来た時に、ケガを訴えることを忘れたりしたため、わたしが帰省するまで、誰もケガに気づかないということもあったのです。

 そこで、こういったことが起こらないように、週1回、訪問リハビリに来る理学療法士さんに、手足の状態をチェックしてもらうようにし、何かあった場合は東京に居るわたしに電話をしてもらって、母と同じ県内に住む妹が病院へ連れて行くという態勢を整えています。
 
 このようなケガであれば痛みがあるので、母と一緒に過ごしていれば、痛みを訴えてくれるかもしれません。また外見から、わたしがケガを見つけられるかもしれません。しかし痛みのない口腔内のカビは、目視するまで見つけることはできないので、見落としやすい病気なのだと思います。

謎の咳の原因も口腔カンジダ

 実は、口腔カンジダが見つかる1年前から、母は謎の咳をしていました。その原因が分からずに、市販の風邪薬を飲んでもらっていましたが、一向に治る気配がありませんでした。次に居間にあるエアコンのカビが原因かもしれないと思い、クリーニング業者を呼んでエアコン掃除もやってみました。しかし、細かい咳は治りませんでした。
 
 何が理由か分からないまま、かかりつけ医にも相談したのですが、結局、原因は不明のままでした。しかし、この口腔カンジダが治ってからというもの、謎の咳がだいぶ減ったのです。

 おそらくですが、口腔内のカビが原因だったのだろうと医師は言っていました。

 この口腔カンジダは、誤嚥性肺炎の原因にもなるそうで、お口のカビの怖さを知ることになりました。

 今回の騒動を機に、毎月歯医者に通うようにしました。また帰省した時は、母の歯みがきに立ち会ったり、わたしが入れ歯を念入りに洗浄したりすることも増えました。
 一度、ご家族の歯みがきの様子をチェックしてみてください。そして、きちんと入れ歯を洗浄しているかのチェックと、入れ歯を外したお口の中の状態もチェックしてみてください。介護者側からの、積極的なアプローチが必要かもしれません。 
 
 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母(認知症+CMT病・要介護1)のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、ものがたり診療所もりおか地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(http://40kaigo.net/

 

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