2018.03.09   

つまづく、転ぶ。それは、あの筋肉が衰えてきたから

 高齢者はつまづきやすい。何もないところでつまづいたり、転んだりする。それは足のある部分の筋肉が衰えてくるからだ。昭和大学公開講座で同大学藤が丘リハビリテーション病院の川手信行准教授が詳しく解説する。(前の記事「高齢者の体重減少は、怖いフレイル・サイクルの入り口かも」)

早期に筋力が低下する足関節背屈筋力とは

「筋肉の横断面積は加齢とともに減少します。とくに50才を過ぎると減少率はさらに拡大し、断面積だけでなく、筋繊維数までもが減少してきます。この傾向は女性よりも男性で顕著なのです」

 こう語るのは、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院でリハビリを専門とする川手信行先生だ。なかでも早期に筋力が低下していく部位が下肢筋力、その中でもとくに足関節背屈筋力だという。

 足関節とは、いわば足首の関節だ。足首は横には曲がらない。足先を甲の方に反らせるか、足裏の方に向けるか、だ。

 足先を甲の方に反らすのが足関節背屈筋、足先を足裏の方に向けるのが足関節底屈筋だ。この二つを合わせて、足関節底背屈筋といい、スムーズな歩行に欠かせない筋肉となる。

 しかし、足関節底背屈筋、とくに足関節背屈筋がほかの筋力に比べて早期に低下してくるため、高齢者は足先がしっかり上がらなくなり、足を引きずって歩くようになりがちだ。そうなると、障害物がなくてもつまづきやすくなり、ちょっとしたことで転倒してしまうのだ。

足首を上げ下げする運動で足関節背屈筋を鍛えよう (c)koti/Fotolia

 このほか、握力や背筋力も早期に低下しやすいので、意識して鍛えることが大切だ。

4か月寝たきりで、かかとの骨は10.4%も減る

 前の記事「高齢者の体重減少は、怖いフレイル・サイクルの入り口かも」では、身体を動かさないでいるとなってしまう、不動・廃用症候群について解説したが、関節が固まったり筋肉が減少するだけではなく、骨まで減ってしまうという。

 17週間(およそ4か月)の長期安静臥床の実験では、骨量は以下のように減ったという。

全身で1.4%の減少
踵骨(しょうこつ。かかとを形成する骨)で10.4%の減少
頭蓋骨で3.2%の減少

 なぜ横たわっているだけで骨が減るかというと、重力の影響が弱くなるからだ。人は立って活動していると、頭から踵(かかと)にかけて重力がかかる。しかし横たわっているとそうならない。その影響が上の骨量の減少に出ているのだ。

 じつは微小重力の宇宙空間でも同様のことが起きるため、いま宇宙ステーションでは、筋力の低下をいかに防ぐかという実験がされているという。
(参考記事:宇宙医学の進歩が寝たきり予防に役立つわけ

日頃の生活の中に体を鍛えるヒントが

 川手先生は語る。

「人間は二足歩行する動物です。足で立って歩くというのは、人間の活動の基本です。しかし体が弱ってくると、杖をついた三足歩行になってきます。日ごろからしっかりと活動して、二足歩行から三足歩行になるのを少しでも遅らせること、これが健康寿命を延ばすためにとても必要なことなのです」

 その具体的な活動とは、スポーツジムに通ったり特別な運動をすることではない。日ごろの生活の中にそのヒントがあるのだという。これについては次回「「老化防止ならウォーキングより家事」とリハビリのプロ」で詳しく。

昭和大学藤が丘リハビリテーション病院リハビリテーション科の川手信行准教授

◆取材講座:「生活の中での体力づくりとは?─活動を大切に─」(昭和大学公開講座/昭和大学藤が丘病院)

取材・文/土肥元子(まなナビ編集室)

初出:まなナビ

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