2018.07.18   

孤独が苦手な男性が70越えて離婚される理由と末路。避けるためにするべきこと

 日本の離婚件数・離婚率は2002年をピークに減っている。しかし心理学者の神奈川大学人間科学部教授・杉山崇先生は、唯一離婚が増えている年代があると指摘する。それが70代で、そここ15年でおよそ2倍になっているという。

なぜ70代の離婚が15年で2倍に?

 もちろんその陰には平均寿命の伸びがある。出生者の半数が生存すると予測される寿命中位数は、平成28年調査では男性83.98年、女性89.97年。女性のほぼ半数が90才まで生きる時代だ。70才でもあと20年もある。人生最後の20年を我慢して生きたくないという人が声を上げ始めたと考えれば納得できる。

 20年以上連れ添う夫婦が離婚するのを熟年離婚というが、では熟年離婚の後にはどんな人生が待っているのだろうか。

 怖ろしいことに、熟年離婚がその後の人生に与える影響は、若い時の離婚より大きいという。また、そのダメージは男性の方が大きく、具体的には死亡率が上がるという。

男性は新しく人間関係を作るのが苦手

 熟年離婚は妻側から言い出すことが多く、夫は寝耳に水のことが多い。心の準備がなかったこともあるだろうが、離婚された男性の寿命が短くなる傾向にあるのは、健康な食生活を維持できないのともうひとつ、孤独に陥る傾向があるからだという。

 杉山先生は言う。

「女性より男性の方が人間関係を新しくつくるのが苦手なことが多いのです。熟年離婚のケースを見ても、男性は妻に離婚されることで人間関係が一気に減ってしまいます。ところが女性はそこから新しい交友関係をどんどん作っていけるんですね。女性の方が人間関係スキルが高いのです。

 人間関係は人生の満足度に影響するだけでなく、最近の研究では、人間関係が豊かな人ほど高齢になってから脳の萎縮が少なく、寿命も長いことがわかってきています」

 つまり孤独は、体の健康にとっても、脳にとっても、寿命にとっても毒になるということだ。

人間関係ストレスより孤独ストレスのほうが問題

 しかし、付き合う人間の数が増えて人間関係自体がストレスになってくるということもあるはずだ。早速、受講生から、「人間関係がシンプルなほうがストレスフリーで長生きできそうに思えますが?」との質問が飛んだ。それに対して杉山先生はこう答えた。

人間が人間関係を作れる数というのは150人くらいが限界だと言われており、確かに信頼できる相手でなければ、人間関係が多すぎるのもストレスになります。しかしそれでも、人間関係のストレスより、孤独のストレスのほうが問題だとされているのです」

熟年離婚されないために夫ができること

 熟年離婚は、とくに男性にとって、経済的にも心身の健康上もデメリットだらけだ。では、熟年離婚されないためにはどうすればいいのだろうか。

「妻側が夫のことを仲間だと思えなくなるきっかけの多くは、夫が妻をまるで自分の付属物のように扱っていると感じたことがきっかけになるようです。たとえば、自分は稼いでいるからお前が家事をするのは当たり前だ、などと付属物扱いされると、ないがしろにされている気持ちがするのです。

 けっこう危ないのが子供が生まれた直後で、母となった苦労をねぎらことなく、妻としての役割を命令したりすると、女性は一気に気持ちが冷めてしまい、何十年も経ってから離婚を言い出されたりすることがあります」

 私たち人間の記憶は危険を回避するためのリスクセンサーとしてあるので、嫌なことほどよく覚えており、幸せなことはよほどのインパクトがないと忘れてしまうのです。子供が幸せな記憶を多く持っているのはインパクトがあるからで、大人になると、ちょっとした日々の幸せは記憶に残らなくなります。そのために、連れ添う期間が長い夫婦ほど、お互いに対する不平・不満が溜まっていきます

 そうした不平・不満を持たれないためには、まず妻の悩みを事あるたびに“聴く”こと。男性は往々にして悩みに対して解決策を出すのが“聴く”ことだと思っていますが、女性にとっての“聴く”は悩みの共有だといわれています」

「自分のことがわからなくなるのがつらい」

 ひとつ身につまされたのが介護離婚だ。

「妻側の離婚事由に、相手の親の介護に疲れたというのがよくありますが、それは介護そのものに疲れたというより、介護に疲弊した自分を夫がねぎらってくれなかったとか、頑張っている自分に感謝もなかった、ということが多いようです。

 しかし夫側は、妻が認知症になってしまい、介護するのは嫌ではないが、もう自分のことがわからなくなってしまったのがつらいといって、離婚に至るケースがあります」

 どこまでも男性は孤独が苦手なのだ。

杉山崇/すぎやま・たかし 神奈川大学人間科学部教授、心理学者
1970年山口県生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科にて心理学を専攻。医療や障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルス、子育て支援など、さまざまな心理系の職域を経験、脳科学と心理学を融合させた次世代型の心理療法の開発・研究に取り組んでいる。臨床心理士、1級キャリア・コンサルティング技能士。『ウルトラ不倫学』『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』等著書多数。
 
 取材・文・写真/まなナビ編集室
※初出/まなナビ

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