2019.08.12    1

名倉潤さんを襲った手術後の「うつ」は高齢者も要注意!その兆候とは?

 お笑いトリオ「ネプチューン」の名倉潤さんが、うつ病により2か月間休養すると発表した。2018年6月に頸椎椎間板ヘルニアの手術を受け10日間休養。その後は復帰し、テレビに出演するなど活動を続けていたが、1年以上経過してからの休業。いったい、名倉さんに何が起きたのか? 

 そもそも、手術とうつ病には関連性があるのか。うつ病に詳しい、精神科医の茅野分さんに話を聞いた。

名倉潤

頸椎間板ヘルニアの手術の侵襲によるストレスが原因のうつを発症、2か月の休養することを発表したネプチューンの名倉潤(撮影/平野哲郎)

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手術後の「抑うつ」は、だれにでも起こり得る

 整形外科的な治療に限らず、手術後にうつ病などの精神疾患を発症することは決して珍しくありません。手術は成功したものの、術後の痛みやしびれが続く、あるいは体の動きが制限されるなどの理由で不安になるのは、多くの人が経験することです。ただ、術後しばらくすれば、傷が癒えるとともに、心の不安も解消され、それまでの暮らしに戻れるのがふつうです。

 ところが、不安が強く、「ずっとこのまま痛みが残ったらどうしよう」「今まで通り、仕事ができるだろうか」と思い悩み過ぎてしまうと、不眠や食欲不振といった症状が現れ「抑うつ状態」に陥ってしまいます。

 こうした傾向は、仕事や家族に対してまじめな人ほど陥りやすいと考えられています。「物事を完璧にこなさなければ」とか、「周囲に迷惑をかけないようにしなくては」と、自分に厳しく考え過ぎてしまう人ほど危険です。こうした人たちの中には、退院し自宅療養の段階になっても不安がぬぐい切れず、本格的なうつ病へと移行してしまう人が少なからずいます。

頭を抱えている男性とその後ろ人立つ医師

手術後の抑うつは誰にでも起こり得るという。写真はイメージ(写真/アフロ)

「朝起きられない」「食欲不振」が見られたら要注意

 そして、本来なら会社へ行かれる時期になっても「朝、起きられない」「会社に行こうとすると発熱する」「食欲がわかず、体力が激減してしまう」といった症状を訴え、一日中ゴロゴロと家で過ごすようになっていきます。

 家族からすれば、「手術で体が良くなったのだから、早く仕事に行って!」と文句を言いたくなるところですが、精神的に追い込まれるとうつ病はさらに進行してしまいます。そばにいるご家族は、手術前と明らかに異なる様子が見られたときには、できるだけ早く精神科を受診するように、優しく話してあげて欲しいと思います。そのときには「大丈夫。元のあなたに戻れるよ」と、安心させるような言葉かけが大切です。

認知症と間違えられる「術後せん妄」に要注意!

 手術を受けた人が高齢者の場合には、術後の「せん妄」という症状を起こすことがしばしばあります。手術をきっかけとして起こる精神障害のひとつで、術後数日経過したころに、幻覚や幻聴、錯乱といった症状を起こすものです。

 家族の顔や名前、自分自身ことがわからなくなったり、朝夕の区別がつかなくなったりしてしまう人もいます。放っておくと、生命維持に必要な点滴等のチューブを抜くとか、ベッドから落ちてけがをする、暴れ回って人を傷つけてしまうなど事故を引き起こす可能性もあります。ですから、高齢者の術後はICU(集中治療室)などで、丁寧にケアをしてもらう必要があるのです。

 認知症と間違えてショックを受けるご家族もいらっしゃるのですが、術後せん妄は1週間ほどでたいていは落ち着きます。ご家族は慌てずに医師に診断やケアを任せてください。まれではありますが、高齢者でなくてもせん妄の症状が現れることがあります。予防のためには、術前に手術の内容や、術後の予後を丁寧に説明して、患者さんの不安をできるだけ取り除いておくことが大切です。

2か月では足りない。最低半年は仕事から離れて休養を

 さて、今回の名倉さんのケースでは、「手術の侵襲というストレスでうつ病を発症」と発表されました。これには少し違和感を覚えます。「手術の侵襲」という場合は、一般的には、手術が体に与えたダメージが原因と考えます。手術から数週間経過しても痛みがなかなかひかないとか、傷がなかなか癒えないために不安が高じてうつ病を発症するというのは、実際によくある話です。

 しかし、名倉さんの場合は、術後、すでに1年が経過しています。ここへきて「うつ病」を発表したという事実を考えると、手術が直接的な原因というよりは、リハビリテーション中の心に不安が生じたと考えるほうが理屈としては合点がいきます。たとえば、術後のリハビリを続ける中で、再び痛みが激化してきたとか、別の場所に体の不具合が起きたようなケースです。

 ご本人と主治医にしかわからない部分ではあり、詮索するべきではありませんが、もしかするとまったく別の悩みなどが影響していることも考えられます。いずれにしても、とにかく休養が必要でしょう。今回の発表では2か月間の休養と言うことでしたが、うつ病の治療にはもう少しゆっくり時間をかけるのが理想です。少なくとも半年はゆっくり休み、治療に専念して欲しいと専門家としては考えるところです。

教えてくれたのは…

茅野分さん/銀座泰明クリニック理事長。群馬大学医学部卒業後、同大学付属病院、前橋赤十字病院、佐久総合病院にて精神医療・身体医療、救急医療・地域医療等に従事。慶応大学病院精神神経科を経て、平成18年銀座泰明クリニックを開院。現在、医療法人社団泰明理事長。ビジネスパーソンのメンタルヘルスに精通し、とくにうつ病、依存症、発達障害については多方面より取材を受けている。テレビ出演、日本テレビ「ZIP」、TBSテレビ「Nスタ」など多数。近著「本当に怖いキラーストレス~頑張らない、あきらめる、空気を読まない」(PHP新書)がある。

取材・文/鹿住真弓

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  1. YUKKO より:

    「うつ」は、身近な問題と知る、良い機会になりました。その兆候に注意が必要ですね。読みやすい文章で、すっと心に入って来ました。

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