2019.08.09 |暮らし   

親の介護、田舎と都会ではどちらがいいのか。メリットデメリットは?

 一人で暮らす認知症の母を遠距離で介護している作家でブロガーの工藤広伸さんは、介護を円滑に進めるための工夫や心持ちを書籍やブログで公開中だ。また全国各地で講演なども行い、介護に悩む人たちに向けて、同じ介護者の立場からのアドバイスを続けている。

 当サイトでも連載でも、工藤さんの介護にまつわる様々なエピソードや心得などをご紹介。今回のテーマは暮らす地域によって、介護はどう違うのかというお話だ。

車椅子の男性とその家族、介護職

都市部と田舎で、介護に違いがあるのだろうか?(イラスト/アフロ)

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 離れて暮らす親が住むふるさとは、田舎ですか?それとも都会ですか?

 全国一律で、同レベルの医療や介護サービスを利用できればいいのですが、現実にはそうはなっていません。田舎と都会で、受けられる介護はどう違うのでしょうか?

田舎の介護と都市部の介護

 わたしの帰省先は、岩手県盛岡市。県庁所在地で、人口約30万人の中核市です。政令指定都市ほど人口は多くありませんが、都市機能としては申し分ないレベルです。

 わたしは、介護の講演で全国を回っているのですが、人口約5000人の村にも行った経験があります。平成の大合併で、村や町が市に生まれ変わりましたが、人口数万人規模の小さな市では、合併後も都市機能は十分ではない“田舎”だと、市民の方が話していました。

 一般に都市部では、病院や医師、介護施設の数が多く、介護家族はたくさんの選択肢から希望の介護サービスを選べます。ただ、地域とのつながりが薄く、ご近所との付き合いが減っている側面もあるようです。

 対して田舎は、病院や介護施設の選択肢は少ないものの、地域とのつながりが密なため、相互の助け合いが機能していると言われています。

 国はこういった地域格差をなくすために、あるシステムを推し進めています。

「地域包括ケアシステム」とは?

 団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、市区町村が中心となって整備を進めているのが「地域包括ケアシステム」です。

『重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます』(厚生労働省 地域包括ケアシステムより)

 今後、75歳以上の人口が増え、介護や医療ニーズの増加が見込まれるなかで、今ある資源を有効に活用しながら、地域で支えあう必要があります。

 都会であろうと、田舎であろうと、それぞれの地域の特性にあった地域包括ケアシステムを作っている最中で、そのためには、地域の課題と社会資源の把握が必要です。

 社会資源とは、生活していくうえで起こる課題解決のための、各種制度や施設、資金、情報、医療機関、集団などを指します。

 わたしは講演のため、全国の市区町村へ行って、市民や職員の方と介護について話す機会がありますが、社会資源が多い都会のほうが介護に恵まれていて、田舎は不便という単純な話ではないと感じます。なぜ、そう思うのでしょう?

講演会に集まる参加者の数から分かること

 わたしの講演会は、講師の知名度よりも、「認知症」や「介護」という講演テーマに興味を持った、地域住民や市の職員の方が参加されます。なので、介護への関心度・参加度が高ければ高いほど、講演会に集まる人数も増えます。

 講演を始めたばかりの頃は、大都市で開催される講演会は人がたくさん集まり、田舎では人が集まらないと思っていました。しかし、回数を重ねるうちに、人口と講演会の参加者数は、比例しないことが分かりました。

 なかには、人口数百万の都市部の講演会と比べて、たった3万人の町のほうが、講演会の参加人数が多いこともありました。

 講演会の開催をどうやって周知させるかというと、市区町村の役所内にある地域包括ケアシステムを推進する課が中心となって、地域に向け発信します。

自治体が発行する広報、町内会、ボランティア団体、地域住民の生活・福祉全般に関する相談・援助活動を行っている民生委員による声掛けなど、様々なネットワークを活用します。

 特に介護に興味を持つ60代以上は、インターネットよりもこうした地域のネットワークを通じて講演会の開催を知ることが、講演のアンケート結果から分かります。日頃から、地域のネットワークが十分に機能していなければ、情報の広がりはありませんし、人も集まりません。

人口の多さではない!地域のつながりの強さ

 介護への意識の高い市区町村は、講演会の参加者が多職種になる傾向があります。

 医師、介護職、地域住民、自治体の職員、民生委員、地域サポーターなど様々で、地域の強いコミュニティが日頃から形成されているからだと思います。医師との連携に壁を感じる地域がある一方で、講演会に医師が参加して、地域に溶け込んでいる市区町村もありました。

 地域包括ケアシステムは、様々な職種や社会資源が密に連携しないと機能しないものです。講演会場で、様々な職種同士が話している姿を見るだけで、その町のネットワークの強さを感じることができます。

 わたしは「地域で支えるなんて絵空事」と思っていた時期もあるのですが、全国に足を運んでみると、本当に地域で支えようと努力している町があります。

 親の暮らすふるさとが田舎か都会か、介護という視点では、単純にどちらがいいかはわからないのです。

 ふるさとに帰省したら、市区町村が発行する広報に目を通して、その地域の活動をチェックしてみてください。どんなに田舎であっても、社会資源が不足していても、それをカバーする、地域の心強いネットワークやコミュニティがあるかもしれません。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

●お知らせ

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