2019.10.29 |暮らし   

毒蝮三太夫はどうして高齢者に愛されるのか?ジジババ・コミュニケーションを伝授【第3回 みんな図書館】

 老親と話すとついつい喧嘩になってしまう、お年寄りと話すのは何だか苦手…。そんな悩みを持つ人は多いかもしれない。

「ババア、まだ生きてたか!」「ジジイ、元気か?」毒蝮三太夫さんは、毎週、ラジオの生中継会場に集まった多種多様な高齢者たちに愛ある毒舌を吐き、大笑いさせている。この10月には放送開始から50周年を迎えた。そんな「ジジババ・コミュニケーション」の達人・毒蝮さんに、高齢者と楽しくスムーズに話す技術や心得を伝授してもらおう。(聞き手・石原壮一郎)

→【第1回 ありがたい存在】を読む
→【第2回 ヨイショ】を読む

ラジオの中継現場で集まった人たちに語りかける毒蝮三太夫

パーソナリティを務めるTBSラジオ『毒蝮三太夫のミュージックプレゼント』は、10月で50周年を迎えた

 * * *

年寄りがひとり死ぬのは図書館が一軒焼けるのと同じ

 ギニア共和国から来たオスマン・サンコンさんに聞いたんだけど、アフリカのガーナには「年寄りがひとり死ぬのは図書館が一軒焼けるのと同じ」という諺(ことわざ)があるらしい。いい言葉だよな。

 そのへんにいるジジイやババアには、一人ひとり図書館一軒分の知識や経験がある。魚屋なり畳屋なりをやってたジジイは、魚や畳については誰よりも詳しい。洋裁に詳しいババアもいれば、子育ての経験がぎっしり詰まっているババアもいる。

 当たり前のことなんだけど、若いものはそのことを忘れてるよね。

 ただ、図書館を上手に利用するにはコツがいるのと同じで、魚屋に「畳は健康にいいらしいですね」なんて聞いてもしょうがない。棚によって並んでいる本の種類が違うように、相手によって掘り起こせる話の種類が違うんだ。餅は餅屋ってことだよ。

 年寄りは若い人たちが思っているよりも、ずっとプライドが高いから、自分に答えられないことを聞かれたりすると、そっぽ向いて黙り込んじゃう。だからって「これだから年寄りは扱いづらい」なんて思ったらかわいそうだ。無茶な要求をしているのはこっちなんだから。若者だって、自分に興味のない話を振られたら黙るしかないだろ。

 年寄りと話すときに気をつけてほしいのは、ひと口に「年寄り」って言っても、ひとりひとり別の人間だってこと。よく病院の若い看護師とかに「おじいちゃん」「おばあちゃん」って呼ばれた年寄りが、ヘソを曲げるって話があるじゃない。呼んでいるほうに悪気はなくても、ひとくくりにされているみたいだから不愉快なんだよな。

 みんなそれぞれ「権兵衛さん」「おヨネさん」っていう名前があるんだ。もっと言えば、「魚屋をやってた権兵衛さん」「洋裁の名人だったおヨネさん」だったりもする。初めて会った相手だと、顔を見ただけじゃ昔何をやってたかなんてわからないけど、まずは相手を名前で呼ぶのが、せっかくの「図書館」を使いこなして、面白さを見つけ出す第一歩だな。

 あれこれ話していくうちに、どんなことをやってた人なのか、どういうことに興味があるのかがわかってきて、「きっと、こういう話を聞いてほしいんだな」「このへんが得意分野なんだな」ってことが見えてくる。ツボがわかれば、もうこっちのもんだ。素人だから話は多少まどろっこしいかもしれないけど、それはしょうがない。

「へー、そうなんですか!」「知りませんでしたー!」なんて言いながら根気よく聞いていれば、きっと面白い話がどんどん出てくるぜ。こっちも知らない話をたくさん聞けるし、相手だって知識を披露できて嬉しい。なんて言うんだっけ。ほら、オーストリアの首都だよ。ウイーン・ウイーンだ。英語では「持ちつ持たれつ」とも言うな。ハハハ。

 身内のジジイやババアの場合は、もっと話は簡単だ。若い頃にどんな仕事をしてたかぐらいは知ってるだろ。どこに住んでたでもいいや。その年寄りが持っている図書館には、どういう本が多そうかを把握して、いろいろ聞いてあげるんだよ。こっちから聞かないと、向こうは「どうせ年寄りの話なんて聞いてもらえない」って遠慮しちゃってるからさ。

 身の回りにたくさんの貴重な図書館があるんだから、どんどん利用しなきゃ。「そのうちに」とか思ってちゃいけない。どの図書館も、いつか焼けちゃうんだから。焼けてから「もっとお話聞いておけばよかった」って言ったってしょうがないからね。

■今回の極意

毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からTBSラジオの「ミュージックプレゼント」でパーソナリティを務めている。83歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など幅広く活躍中。

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

前の話を読む  ▶次の話を読む

●第1回 ありがたい存在
●第2回 ヨイショ

コメントが付けられるようになりました▼

この記事が役に立ったらシェアしよう

  •  

▶コメント

※編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
※寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。