2019.12.10   

毒蝮三太夫が明かす日野原重明さんに教えてもらった大切なこと|第6回

 日野原重明先生と毒蝮三太夫さんには、意外な共通点が!? 交流があった日野原先生に、自分がやってきたことを「理論武装してもらった」と毒蝮さんは言う。さらに、年寄りはどうあるべきかについても、大切な教えを授かったとか。先生の言葉を受け止めつつ、高齢者もこっちも幸せになれるアプローチを探ってみよう。(聞き手・石原壮一郎)

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毒蝮三太夫

聖路加病院名誉院長だった日野原重明さんとは長く交流があった

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先生に「あなたも立派な名医です」と言ってもらった

 聖路加国際病院の日野原重明先生との出会いは、俺にとって大きな出来事だったな。先生は俺がラジオでやってきたことに、理論的な意味づけをしてくれた。ラジオで「ジジイ、ババア」って言いながらバカな話をし続けてきたけど、それでよかったんだ、俺は間違ったことをしてきたわけじゃないんだって、理論武装することができたんだよな。

 知らない人はいないと思うけど、日野原先生は聖路加国際病院の名誉院長で、2年前に105歳でお亡くなりになった。讀賣新聞社主催で年寄りを表彰するっていう企画(編集部註:ニューエルダーシチズン大賞)があって、日野原先生が審査委員長で俺も審査員の末席に加えてもらってたんだ。10何年かやったかな。3年前までやってたから、日野原先生はとっくに100歳を超えてた。

 俺以外の審査員は、偉い人ばっかりなんだよ。元厚生労働大臣や福祉大学の学長とか作家とかね。先生に「俺みたいに“このくたばりぞこない”なんて言っているヤツが、審査員になっていいんですか?」って聞いたんだよ。そしたら先生は「あなたは日々、たくさんのお年寄りを元気にしている。私は医者だから手術をしたり注射をしたりするけど、あなたも言葉で年寄りを治療する名医ですよ」って言ってくれた。

 あの人は、自分の部下の医者や看護師さんに「患者さんの顔を見て診察しなさい。カルテじゃなくて目を見なさい」って教えてたんだよ。「相手の顔を見て、今日は顔色がいいなと思って握手すると、血圧がすーっと平常値になる。それが治療ですよ。まむしさんがやっているのと同じことです」とも話してたな。

日野原先生の教え

 もうひとつ目からうろこが落ちたのが、先生は「まむしさん、年寄りは頑迷じゃダメなんです」って言うんだよ。年寄りは水のように穏やかで、柔軟な心を持って素直で若々しくあるのがいいんですよって。俺はそれまで、年寄りは頑固なもんだし、そのほうがいいと思ってた。寿司屋とかにいるじゃない、しかめっ面で、これは箸で食えとか手で食えとか塩で食えとか言うジジイ。俺の親父も人の話なんてぜんぜん聞かない頑固ジジイだった。

 ところが先生は、年寄りは素直でニコニコしているのがいい、そのほうが楽な気持ちで毎日を過ごせるし、周囲の人たちや、入院したときなんかも看護師さんに親切にしてもらえて得だって言うんだよ。逆に、若者は頑固じゃなきゃいけない、納得できないことには反抗してほしいって。聞いたときはビックリしたけど、たしかにそうだよな。

 それからは放送のときに頑固な年寄りがいると、「頑固よりも素直なほうが愛されて得するよ」って言ってんだよ。最初は「なに言ってやがる」みたいな顔をしてても、「日野原先生が言ってたんだ」って言うと、納得したような顔してるね。そんな簡単に頑固は治らないだろうけど、まずは「年寄りは頑固で当然だ」「年寄りは頑固なほうがいいんだ」っていう思い込みを捨てるのが、愛される年寄りへの第一歩だな。

 まわりに頑固な年寄りがいたら、日野原先生がこう言ってたと教えてやってほしい。相手が親なら、たまには「今の時代、頑固な年寄りは流行らないよ」「頑固だと、余計に年寄り臭く見えるよ」ぐらい言ってやるといいよ。それも親孝行だ。

 ただ、歳を重ねると頭が固くなって、ますます頑固になるってこともあるからな。頑固だからって厳しい目で見るんじゃなくて、「まったく、しょうがないなあ」と苦笑いするおおらかな気持ちを持つことも大事だ。要は年寄りの側も若い側も、相手を思いやる気持ちを忘れちゃいけないってことだな。しょせん人間は、欠点だらけの生き物なんだから。

■今回の極意

頑固な年寄りがいたら「年寄りはニコニコ、素直な方がいい」という日野原先生の教えを伝えて!という吹き出しと毒蝮三太夫さん

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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からTBSラジオの「ミュージックプレゼント」でパーソナリティを務めている。83歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など幅広く活躍中。

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

撮影/政川慎治

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