2020.03.17   

毒蝮三太夫が新型コロナ騒動で不安な高齢者に伝えたいこと【第13回 非常時】

 新型コロナウイルスをめぐる騒動は、なかなか終息する気配がない。とくに用心が必要と言われている高齢者だが、危機感が足りないように見えたり、逆に怖がり過ぎてパニックになっていたり……。ジジババの心の機微を誰よりも知る毒蝮さんに、みんなが冷静さを失いがちな“非常時”におけるコミュニケーションの取り方を聞いた。(聞き手・石原壮一郎)

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毒蝮三太夫

長年続けているラジオ中継で高齢者と触れ合ってきた毒蝮さんは、高齢者の心の機微を誰よりも理解している

新型コロナの影響でラジオ生中継もスタジオからになった

 まさか、こんなことになるとはね。人類の歴史はウイルスとの戦いの歴史だって言うけど、それは21世紀になっても同じなんだよな。俺のラジオも、3月に入ってからは生中継を中止してスタジオに行ってしゃべったこともある。まあ、仕方ないし当然の判断だと思う。

 とにかく、この新型コロナの問題が早く終息してほしい。学校の卒業式や入学式も中止になっちゃって、かわいそうだよな。大相撲だってシーンとした空っぽの観客席に囲まれてやってる。こんな調子で、いろんな業種での自粛や不景気が長引いたら、経済的なダメージで命の危機にさらされる人がたくさん出てきちゃうんじゃないかなあ。

 もちろん、ウイルスの感染はきっちり予防しなきゃいけない。とくに、ジジイやババアはリスクが高いって言うじゃねえか。離れて住んでいる親がいたら、電話の一本もかけて「体調は大丈夫?」「マスクや手洗いをするんだよ」って言ってあげてほしい。こんなときだからこそ、「いつも心配してるんだよ」って気持ちを伝えたいよね。

 高齢者の世代は今とは感覚が違うから、とくにジジイなんか、手を洗う習慣がないヤツも多い。電話にせよ面と向かってにせよ、「ちゃんと手を洗わないとダメだよ」って言ったって、「わかったわかった」って言うだけで聞きやしないよな。

感染対策で言うことを聞かない高齢者への伝え方とは

 説教がましく言われると逆に反発しちゃうのが年寄りの習性だから、こんなふうに言うといいんじゃないかな。

「マスクや手洗いは、自分のためじゃなくて、人様にうつさないためにやるんだよ。なんせウイルスは目に見えないから、知らないうちに自分が運ぶことがあるらしいよ」

 年寄りは人に迷惑をかけちゃいけないっていう気持ちが強いから、その習性を利用するわけだ。ちょっとオーバーに「今の時代は誰からどううつったか、みんなわかっちゃうんだからね」ぐらいは言ってもいいかもな。

 一時期、どこに行ってもトイレットペーパーが買えないっていうのもビックリしたね。今はちょっと落ち着いたのかな。デマがきっかけらしいけど、みんなが「いちおう買っておこう」と思ったんだろうね、たちまち店から消えちゃった。47年前のオイルショックのときも同じことがあったけど、日本人は不安になるとトイレットペーパーを買いたくなるのかね。まさに、困ったときのカミ頼みだな。

 若い人も気を付けなきゃいけないけど、こういうときはデマが広がりやすい。とくに年寄りは、すぐ怪しげなデマを信じて大騒ぎしちゃう。親がいきなり電話してきて、焦った声で「○○がなくなるらしいから、すぐ買いに行ったほうがいいよ」とか「△△を食べれば新型コロナにかからないらしいよ」って言って来たりね。

 いきなり「そんなことあるわけないよ。バカじゃないの」なんて親の言うことを頭ごなしに否定しても、本人はすっかり信じてるから、ますます意固地になっちゃう。こっちのことを思って電話してくれたわけだから、まずは「心配してくれてありがとう」ってお礼を言ってあげてほしい。パニックになってる親を落ち着かせる効果もあるしね。

 その上で「その話はほかの人からも聞いたけど、どうやらデマらしいよ。ありそうな話だから、つい信じちゃうよね」って、親の顔を立てながら説明してあげる。よっぽど思い込みが激しいジジババじゃない限り、納得するんじゃないかな。で、最後にもう一回「連絡してくれてありがとう」って感謝を伝えれば、お互いにいい気持ちになれるよな。

 今みたいにみんなが不安な気持ちに包まれている時期は、相手に対する思いやりとかやさしさとか、そういうことをきちんと言葉で伝えることが、なおさら大切になってくる。親に対しては、長年の癖でついぶっきらぼうな言い方をしがちだけど、いつまでも親と子どもの関係じゃなくて、少しずつ大人と大人の関係に変えていくのもいいと思うよ。

■今回の極意

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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう) 

1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、4月から『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』にお引越し。83歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など幅広く活躍中。

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう) 

1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。

撮影/政川慎治

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●綾瀬はるか 最愛の父の肺がん治療に寄り添い続けた日々

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