2020.04.03    1

コロナ不安で訪問介護を拒否!? 今こそ訪問リハビリを笑顔にする秘策

 東京と岩手・盛岡で認知症の母親を遠距離介護している”くどひろさん”こと工藤広伸さん。盛岡で暮らす母の周りでもコロナウイルスの影響が…。今回は、工藤家が定期的に利用している訪問介護、理学療法士さんによる訪問リハビリにまつわるお話だ。

高齢女性とヘルパーさんのイメージ写真

新型コロナによる訪問介護への影響

 この原稿を書いている時点で、介護先である岩手県のコロナウイルス感染者はゼロです。 しかし、マスクや消毒液の在庫はなく、ドラッグストアには開店前から行列ができています。

 介護職の方と、訪問介護の現状について情報交換したのですが、ヘルパーさんなどによって、家の外から持ち込まれるウイルスを警戒したご家族が、訪問介護や訪問リハビリを断っているケースもあるようです。

 わが家もウイルスへの警戒はしていて、訪問者が帰ったあとは、玄関やドアノブなどを念入りにアルコール消毒しています。しかし、状況が切迫しない限りは、訪問介護やリハビリは続けるつもりでいます。

母に訪問リハビリが大事な理由

 今から5年前の寒い冬に、母がコタツから全く出なくなってしまい、家事まで放棄し、起き上がらなくなるという事件が起きました。

 いわゆる生活不活発病と呼ばれるもので、動かないでいると何もやる気がなくなり、ひどいときにはそのまま寝たきりになってしまうこともあります。

 筋力トレーニングを懸命に行った結果、母は日常を取り戻したのですが、この経験が身に染みたので、特に訪問リハビリは重視しています。

●工藤家が利用する訪問介護サービス

 わが家では、ヘルパーさんが買い物やゴミ捨て、デイサービスの送り出しを行い、訪問看護師さんは自宅に認知症のお薬を持参してくれ、理学療法士さんは、筋力トレーニングを行ってくれます。

訪問介護サービスの内訳

訪問介護サービスの内訳は、ヘルパーさん週5、訪問看護師さん隔週、理学療法士さんが週1回

 この中でわたしが1番お会いする機会が多いのが、理学療法士さんです。家に来る回数が最も多いのはヘルパーさんですが、わたしが不在のときに訪問介護を行っているため、お会いする機会はほとんどありません。

認知症の母が訪問介護で必ず言う言葉

 理学療法士さんがわが家に来て、訪問リハビリを行っている最中に、母と話す内容は必ず決まっています。

「いつも大変ですね~。今日はうちで何軒目になりますか?」

理学療法士「5軒目ですね。工藤さんの家が、今日最後ですよ」

「あら~。家に帰ったら、子どもさんのために、すぐ夕ご飯の支度をしないと」

理学療法士「少し休んでからやりますから、大丈夫ですよ」

 訪問リハビリを10分行った頃、母がどうしても気になることがあるようで、理学療法士さんに質問します。

「ところで今日は、うちで何軒目になりますか?」

理学療法士「5軒目ですね。工藤さんの家が、今日最後ですよ」

 介護家族であるわたしとは違い、理学療法士さんは、母が同じ質問を何度してもイヤな顔せず、笑顔で同じ答えを繰り返します。

 質問に答えた直後に、母は同じ質問を繰り返すこともあるのですが、それでも理学療法士さんは同じ答えで対応します。

訪問介護における介護職のストレス

 理学療法士さんはプロなので、母に対して「また同じこと言ってますよ」と指摘することは、母を傷つけると分かっているので、指摘しません。

 ましてや家族が居る前でそんな対応をしてしまったら、家族からクレームが病院へ行く可能性もあります。プロの仕事に徹しているのです。

 しかし、仕事とはいえ、1週間や1か月ならまだしも、3年もお世話になっている理学療法士さんだって、プロとはいえ普通の人間です。母からの同じ質問に対するストレスは、相当蓄積しているだろうと、わたしは思いました。

「その質問、もう5回目だよ」と、時には母に指摘して、ストレスが蓄積しないよう、ガス抜きを行えるのは、家族の特権です。しかし、理学療法士さんはそうは行きません。自分の中でストレスを解消するしかないのです。

 中にはこうしたストレスに耐えられずに、暴力を振るってしまう介護職の話がニュースになりますが、正直なところイライラする気持ちは分からないでもないです。

 介護家族として、何かしてあげられることはないだろうか? そう思ったわたしは、次の方法を実践しています。

訪問介護を笑顔にするための会話術

「いつも大変ですね~。今日はうちで何軒目になりますか?」

理学療法士「5軒目ですね。工藤さんの家が、今日最後ですよ」

「ところで今日は、うちで何軒目になりますか?」

わたし「5軒目でね、うちが最後らしいよ」

「あら、そうなの?大変よね~」

 母の質問に対して、理学療法士さんが答える前に、わたしがカットインして答えるのです。

 この方法を用いれば、母も質問の回答を「その瞬間は」理解しますし、理学療法士さんも何度も回答せずに済みます。わたしも理学療法士さんを助けた、貢献できたという気持ちになり、三方良しなのです。

 自分ひとりだと母が繰り返す質問にイライラするのですが、誰かの助けになると思えば母の同じ質問に何度でも答えられるのです。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

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  1. jun より:

    工藤様
    小生も高次脳機能障害の妻を介護しているのですが、最近気がついたのは、同じ質問をするのは鳥の鳴き交わしと同じく、内容ではなく、会話というものを欲しているのではないかということです。
    小生も数分の間に同じ質問を何度もされてイラッとすることがありますが、今使えるボキャブラリーの中で小生と話をしたいのだと思い、むしろ同じ回答をするようにしています。鳥の鳴き交わしのように。
    会話の相手として自分を選び、一生懸命なのだと思えば、同じ質問もそれ程苦にならないと思います。

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