2020.05.21   

兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし「第42回 レアな妹」

 若年性認知症を患う兄61歳と2人暮らしをするライターのツガエマナミコさんが、日常を綴る連載シリーズ。

 今回は、前回に引き続き兄の確定申告のお話だ。兄の申告手続きに必要な書類を揃えるために、兄が退職した職場や税務署など各所に問い合わせたツガエさん。苦労の末、ようやく準備も整い、いざ!確定申告へ…。

「明るく、時にシュールに」、でも前向きに認知症を考えます。

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 * * *

確定申告で還付金ははあるのか、ないのか…

 ほどなく兄の会社から源泉徴収票が届きまして、控除書類などを集めて税務署へ向かいました。

 これで兄の代理をするのは何度目のことでございましょう。そのたびに「母親でもないのに…」とグッと歯を食いしばる妹でございます。

 確定申告といえば長蛇の列と相場が決まっております。わたくしもかつて2~3時間並んだ経験を持つ者。お年寄りなどは途中で体調を悪くされ、職員がその対応に追われるといった現場に遭遇したこともございます。

 ところが、今年は新型コロナウイルスの影響かガラガラでございました。期限が延長になったことも追い風になって、いつもは並ぶ方々が自粛し、いよいよe-Taxに挑戦されたのではないかと思われます。例年のようにグルグル並ばされることは一切なく、そのために作られた通路や仕切りが空しいくらい閑散としておりました。

 わたくしは税金のシステムを未だよく理解しておりません。ましてやサラリーマンのお給料がどのように計算されているのか存じません。源泉徴収票を見てもチンプンカンプン。つまり、税金を払うのか、還付金が戻ってくるのか、それすらもわからないまま出かけたのでございます。

 数年前、父親が事故で入院中に父の代理で確定申告した際は、なんとその場で税金を支払う羽目になり、大変焦ったことを記憶しております。思えば年金が良い時代の高齢者でしたから、当然といえば当然ですが…。

 なので今回、万が一を考えて数万円を鞄に忍ばせ、なんなら払う気満々でございました。

 でも、係の方のおっしゃる通りにパソコン入力していくと、最後に数万円還付金があるという表示。払う気満々でしたのに返ってくるとわかり、だいぶ得をした気分になりました。もちろん兄の通帳に入るので、1円もわたくしのお小遣いにはなりませんが、わざわざ足を運んだ甲斐があったというものです。

 ちょっと面白かったのは、入力の最後の方で、世帯主と本人の関係の欄があり、わたくしが「兄」と入力すると、係の方が「いや、ここは世帯主さまとの関係ですから」と少し混乱されたこと。「わたくしが世帯主です」と告げてもなお「お兄さま?…えっと…あれ?妹さまですよね」となって数秒後、「ああ、それで合ってました。失礼しました。あまりないケースなので」と言われ、世の中的にレアな妹である自覚を持ちました。

 ともあれ我々兄妹はこうやってチビリチビリと貯金をし、老後に備えなければなりません。年金は父の時代とは違いますし、兄の会社が経営困難から途中で厚生年金を外してしまったため、兄の年金は国民年金に少し毛が生えた程度。鳴かず飛ばずのフリーライター(わたくし)は言わずもがなでございます。

 この兄妹に納税しなければならないほどの年金が入るはずはございません。しかも兄は、今後無収入になる公算が大きい、たぶん確定申告はこれが最初で最後。そうです、現在いただいている失業給付金には所得税がかからないということも今回初めてお勉強いたしました。

 少額ながら着々と増える兄の通帳残高を見るのは、レアな妹のせめてもの慰めでございます。しかし給付が終われば兄は本当に無収入の61歳。もしや扶養家族として申請した方が多少何かがいいのでしょうか?

 でも、そう考えるだけで違和感がありすぎて拒絶反応が止まりません。わたくしが兄を扶養するなんて、生理的に受け付けない。それこそ「母親でもないのに…」案件でございます。そもそもこんな低収入の妹にそんなことできるのでしょうか? 

 また新たな難問の勃発。次なる区役所案件でございます。

つづく…。(次回は5月28日公開予定)

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性57才。両親と独身の兄妹が、6年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現61才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。ハローワーク、病院への付き添いは筆者。

イラスト/なとみみわ

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