2018.03.13 |ヘルス   

「腹部大動脈瘤」は破裂すると致命的… 原因、予防法を名医が解説

 突然、お腹に痛みを感じたと同時に意識を失い、ばったりと倒れた友人の夫(60代前半)。たまたま居合わせた友人が救急車を呼び、一命をとりとめた。

 病院に駆けつけた妻に告げられた病名は「腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう)」

「胸からお腹を通っている大動脈に異常が起き、破裂したのです。破裂した後に行う治療の成績は非常に悪く、ひとつ間違えば命を落としていたかもしれません」

 ニューハート・ワタナベ国際病院の総長で、世界のベストドクターにも選ばれる心臓外科医の渡邊剛先生はこう話す。

 友人の夫は倒れる直前まで、まったく自覚症状はなかったという。

 日本人の死因第9位でもある大動脈瘤のうち(※1)、4分の3を占める腹部大動脈瘤とはどんな病気なのか。渡邊先生に解説してもらった。

※ 1: 平成28(2016)年人口動態統計より

破裂すると死に至ることもある福袋大動脈瘤を防ぐには—(写真/アフロ)

 * * *

大動脈の中を水道の蛇口を全開したように血液が流れている

 大動脈は身体の中でもっとも太い血管で、心臓からおへその上あたりまでを通っている。

 心臓から横隔膜までが「胸部(きょうぶ)大動脈」で直径3cmほど、そこから下の「腹部(ふくぶ)大動脈」は直径2cmほど。この血管の中を血液が、水道の蛇口を全開にしたときのように轟々と流れている。

「末梢でも中心部の太い部分でも、すべての血管には同じ圧がかかっています。太い血管のほうが壁が厚くて丈夫なのですが、たくさんの細胞がつながっているため細胞同士が引っ張り合う力が大きく、血管の壁にはつねに強い力がかかっています。つまり、大きな血管ほど圧力に弱いのです。その血管に瘤(こぶ)ができると血管壁が弱くなり、血流の圧に負けて簡単に破裂してしまいます」(渡邊先生、以下「」内同じ)

大動脈瘤は2タイプある

 大動脈の一部がふくらんだものが大動脈瘤(りゅう)だ。

 大動脈瘤には、「もとの太さの150%以上になった場合」、「4.5cm以上になった場合」、「本人の椎体骨(背骨の一部)の直径を超えた場合」など、いくつかの定義がある。

「大動脈瘤は血管の壁が弱くなったところがふくらむタイプの大動脈瘤と、壁の内側がはがれてそこに血液がたまってふくらむ解離性(かいりせい)大動脈瘤の2つのタイプがあります。破裂するのはだいたい6cm以上になった場合です」

腹部大動脈瘤の場合、腹膜が出血を押さえ込む場合も

 破裂すると突然死のリスクが高い大動脈瘤。しかし胸部と比べ、腹部のほうがやや危険性が低いと渡邊先生は言う。
 「胸部大動脈の周囲には肺しかありません。肺はスポンジのように柔らかくて軽いので、大動脈瘤が破裂した場合、何も押さえるものがなくどんどん出血してしまいます。

 それに対して腹部大動脈瘤は、腸などを覆う『腹膜』の後ろ側の後腹膜腔(こうふくまくくう)というスペースを通っています。腹部大動脈が破裂した場合、お腹の中で大出血が起き、ショック状態になって意識を失いますが、運がよければ腹膜によって押さえ込まれ、出血が止まることがあります。そのため、緊急に運び込まれた場合でも間に合うことがあるのです」

自覚症状がなく、人間ドックでも発見されにくい大動脈瘤

 腹部大動脈瘤は突然破裂し、緊急処置が必要となるケースが多い。それはこの病気が最も発見されにくいものの一つだからだ。

「腹部大動脈瘤ができても自覚症状はほとんどありません。一般的な健康診断ではもちろんですが、人間ドックでレントゲンや心電図をとっても見つかることは少ない。血管が6cm近く、危険な大きさまでふくらんだ場合、瘤ができた場所によってはやせた人なら触って気づくことも稀にあります。でも、太っていると気づくのは難しいでしょう」

 運よく破裂前に発見できるのは、ほかの病気を調べるためにCT検査や超音波検査をして、たまたま大動脈瘤に気づいたというケース。逆に言うと「大動脈瘤を探す」という目的で検査しなければ見過ごしてしまうというのがこの病気のおそろしさだ。

「最近は『単純CT検査』といって、血管に造影剤を入れないCT検査でも診断ができるようになりました。ただし放射線による被曝のリスクがありますから、瘤がないのであれば3年に一度くらいのペースで検査をすれば、危険な状態になる前に発見できるかもしれません」

 ちなみに胸部大動脈瘤の場合は、瘤が気管支や食道、神経などを圧迫して、胸の痛み、せき、嚥下障害、声のかすれといった自覚症状が現れることがある。ただし、このような症状がまったくないまま大動脈瘤が破裂し、非常に激しい痛みが背中の上部から下部、腹部へと広がることも多い。

大動脈瘤の原因は? 予防するには?

 大動脈瘤の原因は、動脈硬化だ。

「20歳以上になると、誰の血管にも動脈硬化による変化が起こります。その変化が心臓で起きれば狭心症や冠動脈狭窄(かんどうみゃくきょうさく)、脳で起きれば脳出血や脳梗塞、大動脈で起きれば大動脈瘤になるということです。

 大動脈瘤の予防法は、動脈硬化が進行しないようにすること、これに尽きます。つまりバランスのよい食事、適度な運動、睡眠、ストレスをためないなどです」

 大動脈瘤のリスクを高めるのは、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症といった病気。また、家族に動脈硬化や動脈瘤をわずらったことのある人がいることもリスク要因となる。

「大動脈瘤の患者さんのほとんどが65歳以上。75歳以上の後期高齢者や90歳以上の方も多くいらっしゃいます。男性のほうがやや多いかもしれませんが、女性も閉経後は高血圧や高血糖になりやすいため、男女差はそれほど実感していません。

 欧米の人に比べて、日本人には動脈瘤は少ないといわれてきましたが、食生活の欧米化などの影響か、最近は患者数が増えているようです」

→後編:突然死の恐れも!「腹部大動脈瘤」を救う最新治療を名医が解説を読む

監修:渡邊剛

ニューハート・ワタナベ国際病院総長。心臓血管外科医。『The Best Doctors in Japan 2016-2017』に選出される。

【データ】

ニューハート・ワタナベ国際病院
HP:https://newheart.jp/

取材・文/市原淳子

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