2020.08.08   

親に家庭内感染させない対策とは?同居、帰省時の注意点|訪問看護師がアドバイス

 自分たち子ども世代や孫世代は、感染症にかかっても重症化しにくいと言われるが、高齢者は重症化や死に至る確率が高い。同居している場合はもちろん、親の住んでいる家に行く場合や帰省する場合に、家庭内感染させないかどうか不安に思っている人は多い。看護師として700人以上を看取り、今は訪問看護の仕事をしている宮子あずささんに、家庭内感染を防ぐにはどうしたらいいかを聞いた。

手を洗う高齢者

親が家庭内で感染しないために、いますぐ覚えておきたいこととは?(写真/gettyimages)

感染を完全に防ぐことはできないが、気を付けるべきところを覚えておく

 整った環境である病院でも、感染防止をするのは大変なことです。私たち訪問看護に携わっている人間も、完全に家庭内感染を防ぐことは難しいと考えざるをえません。

 しかし、可能性を減らすことはできます。そして、すべてに神経質になって、感染予防にへとへとで暮らすより、おさえるべきところを覚えておくといいと思います。

 疲弊してしまうと散漫になってしまうからです。あれもこれもやらなくてはいけないと一生懸命になった末に、意外と大事なことが抜けてしまったりすることがあります。

感染予防でおさえておくべきこと:うがいより「手洗い」優先で

 例えば私は、訪問看護先の高齢者のかたなどには、新型コロナやインフルエンザを防ぐために、うがいをしてくださいとは言いません。もちろんしたほうがいいいのですが、最優先ではないからです。ふたつとも呼吸器に入っていくことによる感染症だから、ウイルスの侵入をうがいで防ぐことはできないためです。

 もちろん手洗いとうがいを両方やってもらうほうがいいけれど、高齢になると難しい場合もあります。面倒くさいからと、どちらもしなくなってしまうよりは、手洗いだけでもしっかりやってもらうほうがいいからです。優先度を考えるというのも必要だと思います。

大きい飛沫が飛ばないようにするには

 感染するにはある程度の量のウイルスが必要だということは、新型コロナ、インフルエンザ、その他の感染症にも共通です。

●自分が大きい飛沫を飛ばさないようにと考える

 高齢者と接するときは、もしかすると自分がウイルスを持っているかもしれないという前提で考えます。

 ウイルスは細菌の50分の1と言われるほど小さなもので、空気中に浮遊するし物につくこともあります。しかし、ウイルスが10個ついた、20個ついた、というぐらいでは感染しません。もっとたくさんのウイルスが体内に入ると危険である…そうするとまず意識するべきなのは、自分が大きい飛沫や大量の飛沫を飛ばさないようにするということになります。

●まず、マスク。しかし、高齢者がマスクをつけ続るのは難しい

 まずはマスクをすることです。しかし、高齢者と接する場合、親も子もずっとマスクをしているのは難しいのですね。

 マスクで話すとはっきり聞こえなくなります。年を取ると耳の聞こえが悪くなっています。マスクをすると、話がはっきり聞こえないし、話している人の口の形が見えなくなるので、会話を理解することが難しい。だから高齢者はマスクでの会話を、嫌がることになるのです。

●親は、家でマスクをつけ続けなくてもいい

 そもそも、若い世代にとってもうっとうしいマスクを、お年寄りに家の中でもずっとしていなさいというのは酷な話です。

 マスクには、自分が感染したときにうつさないようにする効果はあっても、うつされないように防御する効果は大きくありません。だから難しければ、親に家でずっとマスクをつけさせなくてもいいと思います。

●子世代はなるべく頻繁にマスクを取り替える

 一方、自分たちの側がつけるマスクは、なるべく洗ったり取り替えたりすることです。医療の現場では、元々は1処置1マスクと言って、なにかをするたびにマスクを捨てていました。一般の家庭でそんなことはできませんが、なるべくは半日ぐらいで替えるようにできるといいでしょう。

 親に接している側も、距離が離れているときや、しゃべらないときはマスクをはずしてもいいわけです。もちろん、くしゃみや咳をするときは、離れるなり口を覆うなりする必要はあります。

●換気やアクリル板のついたてで備える

 大きな飛沫が飛んで、付着しないようにするためには換気が必要です。

 もし唾液にウイルスがあるとしたら、閉鎖空間だと飛沫を含んだ空気がとどまってしまいやすくなります。そうならないように、なるべく空気の入り口と出口を作るようにします。窓が一つしかない場合は、なおさらですが、換気扇を回しておくといいでしょう。

 食事や会話のときにいいのは、透明なアクリル板の数10センチのついたてです。これはAmazonなどで売っています。

 また、ちょっと大変でかっこうもよくありませんが、鴨居などを使って透明のビニールカーテンを掛けるのも有効です。空気を完全に遮断できなくても、部屋の向こう側に飛沫を飛ばさないことはできます。

訪問看護師が気を付けていること

 新型コロナ対策について、情報を得るために、意外と役に立つのが、厚労省のホームページです。

 新型コロナウイルスの感染が疑われる人がいる場合の家庭内での注意事項
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/newpage_00009.html

 私たち看護師が訪問看護をするにあたって、感染を防ぐために気を付けていることから、いくつか挙げておきます。

・手洗いうがいはもちろんだが、特に食べ物を扱う前には手を洗う。
・高齢者の顔のあたりを触るときも手を洗う。目・鼻・口からウイルスが侵入させないため。
・なるべく向かい合わない。いつも横に並ぶことはできないにしても、真正面にならない。
・高齢者と接する前には、自分が熱がないかをチェックする。
・部屋の中に人数が多くならないようにする。多くなると距離が近くなりがちなため
・消毒用アルコールは持参する。

 消毒用アルコールは、手洗いができないときに使うためのものです。通常、手洗いができれば、アルコールを使う必要はありません。病院でも、手洗いをしたあとアルコールを使うのは、患者さんの処置に入るときぐらいです。

 新型コロナ、インフルエンザなど多くのウイルスは石けんやハンドソープを使った手洗いで流してしまうことができます。すごく気になるという場合には、例えば手洗いをして食事の準備をしても、いろいろなものを触ることになるから、食事の直前に消毒用アルコールを使うというのがいいかもしれません。

→新型コロナ感染予防をおさらい 正しい手洗い、咳エチケット、3つの密

→ハンドソープを3倍に薄めてもウイルスが消えた!感染制御学の研究に裏打ちされた対策グッズ

家庭内感染を防ぐためのまとめ

●あれもこれもやろうとすると大事なことが抜けてしまったりすることがある

●難しければ、うがいはいいから手洗いだけでもしっかりやってもらう

●自分がウイルスを持っているかもしれないと考える

●自分が大きい飛沫を飛ばさないようにする

●難しければ、親は家でマスクをつけなくてもいい

●換気をする。アクリル板やビニールカーテンも有効

●手洗いができれば、消毒用アルコールを使わなくてもいい

今回の宮子あずさのひとこと

 感染予防は人によって考えかたが大きく違うものです。日常生活をどこまで変えるかは、人生観の違いとも言えますから、一概に押し付けるわけにはいかないところです。

●親は理解できていない場合も、必要以上に不安になっている場合もある

 高齢になると、同じニュース番組を観たとしても、理解している度合いに差があります。親に対して「そんなことしたら、感染するからダメに決まっているでしょう!」と驚く場合もあるでしょう。言わなくてもわかっていて当たり前だろうとイライラしたりせず、「近所のコンビニに行くときも、必ずマスクをしてね」というように、どうしてもしてほしいことを具体的に言うことです。

 逆に、テレビを観続けていると、怖いということばかりにとらわれてしまっていることもあります。ワイドショーなどは、毎日、いよいよ大変だ!と報じるので、外に出ていない高齢者は、必要以上に心配になってしまうのですね。

●高齢者にとってこの事態に対応していくのは難しい

 時には不安を聞いてあげたり、間違った情報を信じていたら正しいことを伝えるといいでしょう。例えば、感染者がそばを通っただけでうつるというようなことはない、とか、ウイルスは石けんで洗い流すことができる、ということを伝えてあげるということですね。

 新型コロナの感染拡大は「第二次世界大戦以来」と言われるような、突然の危機と生活を変えなくてはいけない事態です。戦後を生き抜いてきた親世代の人たちは適応力はあったでしょうが、高齢になった今、うまく対応していけないのは仕方がありません。そう思って接してあげるといいと思います。

→宮子あずささんの他の記事を読む

教えてくれた人

宮子あずさ

宮子あずさ(みやこあずさ)さん/
1963年東京生まれ。東京育ち。看護師/随筆家。明治大学文学部中退。東京厚生年金看護専門学校卒業。東京女子医科大学大学院博士後期課程修了。1987年から2009年まで東京厚生年金病院に勤務。内科、精神科、緩和ケアなどを担当し、700人以上を看取る。看護師長を7年間つとめた。現在は、精神科病院で訪問看護に従事しながら、大学非常勤講師、執筆活動をおこなっている。『老親の看かた、私の老い方』(集英社文庫)など、著書多数。母は評論家・作家の吉武輝子。高校の同級生だった夫と、猫と暮らしている。

構成・文/新田由紀子

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