2020.08.09   

新『半沢直樹』3話「待ってました」片岡愛之助登場!急展開に次ぐ急展開をていねいに解説

 堺雅人主演『半沢直樹』新シリーズ。先週放送の3話では、国税局検査官・黒崎駿一(片岡愛之助)が登場。ねっちり濃いキャラクターで大人気の黒崎への期待に視聴率も跳ね上がった(23.2%)。出演者に歌舞伎俳優が多いこともあってか、ますます歌舞伎的決め台詞、見せ場が光る『半沢直樹』だが、舞台はIT業界。熱演に気を取られて置いてきぼりになりそうな金融ドラマとしての展開を、日曜劇場研究ライター近藤正高がわかりやすく解説。

→新『半沢直樹』第1話|半沢の変化に注目!もうおじさんで銀行に戻れるかどうか瀬戸際か

新『半沢直樹』2話|まるで幕末の群像劇のようで興奮!若手社員とのチームプレイで銀行に勝負を挑む

「半沢直樹」3話イメージイラスト

イラスト/サイレントT

黒崎の強烈な個性はあいかわらず

 8月1日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月から休演していた東京の歌舞伎座が5か月ぶりに公演が再開した。「八月花形歌舞伎」の幕を開く最初の演目は「連獅子」。出演したのは中村壱太郎と片岡愛之助だった。「待ってました」の掛け声に替わり万雷の拍手で迎えられた愛之助は「お客様から拍手のパワーをいただき、涙が出そうになりました」と語ったという(「スポーツ報知」2020年8月2日配信)。

 翌2日夜、愛之助は『半沢直樹』第3話にも、7年前の前シリーズ以来、「待ってました」とばかりに久々の登場を果たした。役どころはもちろん、前シリーズと同じく金融庁の検査官・黒崎駿一だ。前シリーズで黒崎は大阪国税局に出向中、東京中央銀行(以下、銀行と略)の大阪西支店に赴任していた半沢と知り合い、このあと彼が銀行の本部に異動すると、黒崎も金融庁に戻って検査局の主任検査官となる。そのたびに半沢と対決しては手痛い目に遭い、黒崎の高いプライドは傷つけられてきた。そんな宿敵ともいうべき両者が新シリーズで再びぶつかることになる。

 半沢は銀行から子会社の東京セントラル証券(以下、証券と略)に出向中で、一方、黒崎も金融庁の証券取引等監視委員会の統括検察官になっていた。役職は変わっても、女性っぽい物腰、部下(男)の股間をいきなりつかむ奇行など、黒崎の強烈な個性はあいかわらずだ。

 半沢は、伊佐山(市川猿之助)率いる銀行の証券部に電脳雑技集団(以下、電脳と略)による買収案件を横取りされたのをきっかけに、逆に電脳が買収をもくろむスパイラルとアドバイザー契約を結んだ。そして部下の森山(賀来賢人)とともに、スパイラルが電脳からの買収を逃れる手を考えた末、ネット通販事業を手がけるフォックスを「逆買収」する計画を瀬名(尾上松也)に提案する。しかしフォックスといえば、電脳と裏でグルになってスパイラル買収に加担しようとした張本人だ。瀬名は強く抵抗するが、半沢たちからは、これしか電脳から買収を防ぐ手立てはないと説得される。

半沢側が銀行に対して優勢か劣勢かで解説

 今シリーズで初めての通常放送となった第3話だが(でもまた今週は15分拡大版)、正味45分のあいだにとにかくいろんなことが起こるので、話に頭が追いつかなかった人も結構いたのではないか。筆者も途中で一部ついていけなかったところがあり、録画を見返して、やっと理解できた。ここで前回の流れをプロット風に示しながら、振り返ってみたい。なお、各項目の頭に付した【優】【劣】は、半沢側が銀行に対して優勢か劣勢かを示す。加えて【間】は、半沢たちが一旦落ち着いて、考えをめぐらせる場面を指す。

【優】半沢がひそかにフォックスの経営状況報告書を手に入れ、マスコミにリーク。「フォックス、投資失敗で巨額損失」と報じられ、フォックスの株価は暴落。スパイラルは安くなったフォックス株を買い集める。買収のため半沢が考え出した荒業であった。

【劣】しかし、どこから聞きつけたのか突然、黒崎率いる金融庁の監視委員会が証券に検査に乗りこんでくる。黒崎の狙いは対フォックスの買収計画書だった。買収計画書には、経営状況報告書を持ち出させるということも明記されており、金融庁に見つけられたら情報漏洩を問われ、業務停止命令は免れない。半沢は計画書をクラウドの隠しサイトに急いで移すが、すぐに黒崎に嗅ぎつけられてしまう。証券会社に検査が入ったことはマスコミでも速報され、スパイラルの株価がみるみる下がり出す。この検査には、銀行の伊佐山だけでなく、どうやら三笠副頭取(古田新太)も裏で糸を引いているらしい。

【優】黒崎は隠しサイトを探し当てるも、ファイルを開くためのパスワード探しにてこずる。その隙に、隠しサイトをつくったスパイラルの天才プログラマー・高坂(吉沢亮)が、サイトからファイルを消すプログラムを構築。間一髪でファイル消去に成功する。その瞬間、スパイラルのオフィスには歓声が上がった。

【劣】それでも黒崎はくじけない。今度は証券の社長・岡が、計画書を紙にプリントして隠したと踏んで、社長室を調べる。すると検査直前に岡が急いでシュレッダーで処分した計画書を見つけられてしまう。切り刻まれた文書は、スキャナーに取り込まれ2時間で復元された。

【優】復元された計画書を突きつけられ、業務停止は必須という崖っぷちに立たされた半沢。そこへフォックス社長の郷田(戸次重幸)が現れ、経営状況報告書は自分から半沢に渡したと証言した。これには黒崎も引き下がるをえなかった。

【優】郷田は緊急記者会見を開き、フォックスはスパイラルからの買収提案を受け入れると発表。壇上で瀬名とがっちりと握手し、今後のビジョンとして、世界規模での事業展開を示す。さらにサプライズで、IT界の超大物、マイクロデバイス社長のジョン・ハワードが登場、両社の提携に少なくとも3億ドルは出資すると発表した。その様子を電脳と銀行の面々は呆然と見つめる。記者会見後、スパイラルの株価は上昇に転じ、その日の取引の終わる15時には3万円を超えた。スパイラル株を下落させて買い集める腹だった伊佐山は、これを見て思わず絶叫する。

【劣】しかし銀行側もすぐに反撃に出る。スパイラル株を何としても買収するべく電脳への追加融資を決定したのだ。その裏では、三笠副頭取がこの件で子会社の証券に負けてしまっては、銀行の面目が丸つぶれだと、敵対する頭取派の大和田に頭を下げて懇願していた。三笠は大和田に見返りとして、常務への復帰を約束する。伊佐山は半沢にわざわざ電話して、追加融資決定を伝えると、「半沢、ざまーーみろーー、おまえの負けーー」と吠えた。

【間】これと前後して、半沢は、いつもはしつこい黒崎があっさりと引き下がったことを不審に思い、部下たちとあらためて検査を振り返っていた。そこで浮上したのは、委員会の本当の狙いは電脳だったのではないかとの疑惑だ。そもそもスパイラルの買収について、電脳がまず銀行ではなく子会社の証券に依頼してきたのも、考えてみれば不自然である。それは、銀行に任せると都合の悪いことが電脳側にあるからではないか……。ここで半沢が目をつけたのが、電脳の経理担当の玉置克夫(今井朋彦)だ。調べてみると、玉置はもともと「電脳建設」という電脳の子会社の専務であった。電脳建設は、画期的な次世代スイッチング電源の特許権を持っていた。ここに何か疑惑を解く鍵があるのではないかと、半沢は森山をともなって玉置に接触を図る。
※スイッチング電源の実際の例はこちら

【劣】突然会いに来られて最初はけんもほろろだった玉置だが、半沢に「次世代スイッチ電源、この特許、大きな可能性を感じます。われわれも何か協力できるかもしれません」と切り出されるや顔色が変わる。このあと、半沢たちはあらためて玉置と面談すべく席を用意して待つのだが、そこへ現れたのは電脳の平山社長夫妻(土田英生・南野陽子)だった。副社長の平山夫人が告げる。「玉置をお待ちやったら、無駄ですよ」……半沢の思惑はあっさり見抜かれてしまったのか!? と緊張感が漂うなか、今夜放送の次回に続く。

 急展開に次ぐ急展開、半沢が優勢に立ったかと思えば、次の場面ではまた劣勢に追い込まれたりと、とにかくせわしない第3話だった。そのなかで、半沢が前シリーズから大きく変わった点も見えてきた。前シリーズでは周囲を騒ぎに巻き込んでいたばかりだった半沢だが、銀行の外に出され、また年齢を重ねたせいもあってか、まわりに気配りができるようになった印象を受ける。

ツッコミどころも楽しむ

 第3話では、同期の渡真利(及川光博)から、フォックスの経営状況報告書を入手する際なぜ自分に頼まなかったのかと訊かれると、おまえに迷惑をかけるわけにはいかないからと答えていた。渡真利にはこれまでさんざん危ない橋を渡ってもらったのに(逆にそれで彼の銀行での立場が悪くならなかったのが不思議なくらいだ)、何という変わりようだろう。さらに金融庁の検査で証券が崖っぷちに立たされると、半沢はスパイラルのオフィスにいた森山に電話して、業務停止になる前にフォックスから契約を取るよう指示。その際、すべての責任は自分が負うと、上司らしいところを見せたうえ、「フォックスとスパイラルが手を組めばこの世界に大きな利益と便利さをもたらすことができる。その未来をイメージしながら交渉しろ」「大事なのは感謝と恩返しだ。その2つを忘れた未来は、ただの独りよがりの絵空事だ。これまでの出会いとできごとに感謝をし、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば必ず明るい未来が拓けるはずだ」と森山を鼓舞する。森山はこの言葉を胸に刻んで、瀬名とともに見事に郷田を説得し、買収提案を受け入れてもらったのだった。

 今回の展開はITの関係者から見れば、ツッコミどころ満載であっただろう。事実、SNSでもここがおかしいという投稿を多数見かけた。たしかに、パスワードがいまどき6桁のアルファベット(しかも「zansin=残心」という半沢の特技である剣道に関する単語だった)ということからして、素人目にもありえないと思える。とはいえ、『半沢』視聴者の大多数は、そういうツッコミどころも含めて、このドラマを楽しんでいるのではないか。

 第3話で、半沢が森山・瀬名と剣道で汗を流したあとに「ひるまず、恐れず、攻め続けていれば相手に隙ができる」と諭す場面があったが、このドラマの場合、物語も出演者も攻めに攻めまくっているがゆえに隙ができ、相手(視聴者)からツッコまれやすくなっているような気がする。思えば、田中みな実の怪演が話題を呼んだ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)にしてもそうだが、最近、視聴者のためわざとツッコミどころをつくっているようなドラマが目立つ。『半沢』も新シリーズになって、その傾向が強くなっているふしを感じる。まあ、あんまり狙いすぎるのもちょっとどうかとは思うが。

 第3話では、気づいたら、大和田が常務に復帰しようとしているのにも驚いた。じつは伊佐山が三笠副頭取に取り入ったのも、自らの出世が目的ではなく、大和田の復権のためだったのだ。副頭取案件で買収計画を進めていけば、最終的に頭取にもうかがいを立てなければならない。そうなれば頭取の窓口として大和田の出番というわけである。常務復帰の足がかりをついに得た大和田は、「これで買収が成功すれば三笠も俺に頭が上がらんよ。我々の計画通り、いや、それ以上だ。君もここまで本当によくやってくれた。にしても、あの君の演技、見事だったよ。うははははは」と、伊佐山と酒を酌み交わしながら褒め称える。プライベートではいとこ同士である香川(歌舞伎役者としての芸名は市川中車)と猿之助がこうして共演しているのを見ると、思わず、屋号である「澤瀉屋!」と声をかけたくなった。

 愛之助扮する黒崎の再登場で始まった第3話は、香川と猿之助扮する大和田・伊佐山コンビの高笑いで一旦締め……と、まさに“歌舞伎回”だった。もっとも、本当にこのまま大和田の思い通りになるのかどうか。彼が半沢と再び直接対決する日が待たれる。

『半沢直樹』(新シリーズダイジェスト)は配信サービスParaviなどで視聴可能(有料)

半沢直樹スピンオフ企画「狙われた半沢直樹のパスワード」は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

『半沢直樹』(前回シリーズ)は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

文/近藤正高 (こんどう・ まさたか)

近藤正高の似顔絵です。イラストはまつもとりえこ

イラスト/まつもとりえこ

ライター。1976年生まれ。ドラマを見ながら物語の背景などを深読みするのが大好き。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけしと北野武』(いずれも講談社現代新書)などがある。

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