2020.09.04   

認知症の母と笑顔でお別れ…コロナ禍の介護帰省を振り返る

 コロナ禍で東京から地方への移動がためらわれる今、離れて暮らす親元への帰省に戸惑っている人も多いのではないだろうか。そんな中、岩手・盛岡に住む認知症の母に東京から介護帰省した作家でブロガーの工藤広伸さん取った行動が話題になっている。工藤さんがコロナ禍の帰省で注意した3つのポイントとは。

介護帰省で1か月半一緒に過ごした工藤さんのお母さん(写真/工藤広伸さん提供)

介護帰省で1か月半一緒に過ごした工藤さんのお母さん(写真提供/工藤広伸)

東京から岩手へ介護帰省した3つの注意ポイント

 6月末から8月中旬までの1か月半、新型コロナウイルスの感染者数が最も多い東京都から、当時感染者ゼロの岩手県へ介護帰省しました。この模様を、自分のブログ「40歳からの遠距離介護」で発信したところ、テレビや新聞など、多くのメディアに取り上げられる事態となりました。

 コロナ禍の介護帰省で注意したい3つのポイントを、自分の経験を基にまとめてみました。

1.介護帰省の前にケアマネに相談した

 1つ目のポイントは、介護帰省する前に、まずは介護の窓口であるケアマネジャーに相談することです。さらに利用している介護保険サービスの事業所の方針と、帰省する人に対する都道府県、市区町村の方針も確認しておくといいと思います。

 介護帰省に関する方針は、都道府県や市区町村単位で統一されておらず、介護事業所単位でもバラバラです。

 わたしは母の担当ケアマネにお願いして、利用中のデイサービス、訪問リハビリ、訪問介護、訪問看護、すべての事業所にわたしの帰省が可能かどうかを確認してもらいました。

 その結果、帰省の許可が下りましたが、どんな理由であれ、感染者の多い地域から家族が帰省した時点で、要介護者の介護保険サービスの利用が2週間停止になるケースや、介護施設での家族との面会を制限しているところもあります。

 感染者の多い地域で暮らしていたとしても、感染リスクの高い生活をしているかどうかは人それぞれです。わたしのように、自宅で執筆の仕事を主としている場合、通勤もなければ、人に会うこともありません。

 こうした自らの状況を細かく説明すると、場合によっては介護事業所の理解が得られるかもしれません。日頃からケアマネや各介護事業所と家族が連携できていれば、その確率はグッと上がると思います。

 中には、何の報告もなく介護帰省している家族もいます。こういうときこそ、ケアマネに報告するなど誠意や行動で示し、理解を得ることで、信頼関係を構築できるように思います。

2.介護帰省中は毎日健康観察をした

 2つ目のポイントは、介護帰省中に自らの健康観察をきちんと行い、都道府県の方針に従って行動することです。

 わたしはWHOのQ&Aにあった『現時点の潜伏期間は1-12.5日(多くは5-6日)とされており』という文言を根拠に、ビジネスホテルで5日滞在したあと、残り9日間は母以外の誰にも会わない生活を送りました。

 同時に母の検温や体調チェックも行い、2週間が経過してから、ものわすれ外来などの通院の予定を入れました。

体温計の写真

帰省中は毎日自分と母の検温は欠かさず行った(写真提供/工藤広伸)

 不要不急の外出には当たらない介護であっても、感染者の多い地域から帰省すれば、受け入れる側の住民の不安や心配は、想像できます。

 さらに、帰省中は通常の風邪をひけないプレッシャーにもさらされます。もし風邪をひいて、近くの病院へ行き、東京の住所が書いてある保険証を提示したら、病院側もコロナ感染の可能性を疑うはずです。

 まだまだ肩身の狭い思いをしながら、介護帰省しなければなりませんし、こうした精神的なプレッシャーは想像以上で、大きなストレスがかかります。

 また、介護帰省する頻度を減らし、1度帰ったら長期滞在するくらいの気持ちで予定を組んだほうがいいです。帰省の都度、健康観察や自粛生活を繰り返していては、疲労が蓄積します。

3.次回以降の介護帰省に備えておく

 最後のポイントは、次回以降の介護帰省に生かせるものです。

 コロナの状況は日々変化しているため、再び県をまたぐ移動自粛要請があるかもしれません。そうした事態を考慮して、先々を見据えた準備をしたほうがいいと思います。

 具体的には、冬に向けた必要量の日用品の確保、衣替え、暖房の準備、いつまでお薬を処方してもらえるかなどです。

 そして、もうひとつ。わたしは、抗体検査キット(3850円のもの)を購入しました。自ら微量の血液を採取し、検査キットに血液を垂らすと、15分程度でコロナ感染履歴が把握できます。感染から12日経過後の精度は95%と言われており、次回はこの検査キットを利用します。

 今までは、自分がコロナに感染しているかどうか、雲をつかむ感覚のまま、介護帰省していました。しかし、次回の介護帰省はこの検査結果があるので、何もない状態よりは安心です。

 また、6月末以降、毎日検温と体調チェックを実施し、すべて専用アプリに登録しています。首都圏での生活履歴として、必要な場合は提示するつもりですし、接触確認アプリ「COCOA」も利用中です。

 介護帰省は勇気のいる決断でしたが、認知症の母と一緒に生活したことで、しばらく会えなかった不安が解消されました。

 帰省に対するネガティブな情報のほうが多いのですが、中には工夫して介護帰省している方もいます。積極的に情報発信できる状況ではないかもしれませんが、こうした情報が少しずつ増えることを願っています。

 次回の帰省は10月中旬を予定していますが、コロナの影響で予定通りにならないかもしれないので、笑顔で手を振って見送る母の姿をいつもよりもしっかりと見て、帰京しました。

 今日もしれっと、しれっと。

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

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