2020.09.08 |暮らし   

目の見えない人になんて声をかけますか?コロナ禍での安心な誘導法とは…

 今年7月、東京・阿佐ケ谷駅で1人の視覚障害者がホームから転落し、電車にはねられて死亡する事故が起きた。周りにいた人がひと言、声をかけていれば悲劇は防げたかもしれない。

 目が見えないということの大変さを、私たちはどれだけ知っているだろう。それは決して他人事ではない。目の見えない人が生きやすい社会は誰もが生きやすい社会でもある。いま、私たちにできることは?

白杖を持ってあるく人の写真

視覚障害者に声をかけるとしたら…(写真/PIXTA)

視覚障害者の転落事故が発生

 またか――東京視覚障害者生活支援センターで所長を務める長岡雄一さんは、今回の事故に肩を落としたという。

「視覚障害者にとって、ささいなことが命取りになることもあります。いまはコロナ禍にあり、手助けしようと街なかで声をかける人も減っていると聞きます。

 目的地まで付き添うサポートでは体に触れないわけにはいかず、濃厚接触に当たることもあるのでしょう。視覚障害者も仕事や買い物など日々の生活を送らなければならないので、どうしたらいいか、悩ましい問題です」(長岡さん)

 事件は、7月26日午後2時45分頃に起きた。

 50代の白杖(はくじよう)を持った男性がホームから線路に転落。自力で這い上がろうとするも間に合わず、電車とホームの間に挟まれて亡くなった。男性はマッサージ師で、この日はボランティアで高齢者にマッサージをするために阿佐ケ谷駅を訪れていたという。

 国土交通省の発表によると、2017年度までの7年間で列車に接触して亡くなった視覚障害者は10人にのぼる。今年は都内だけで、すでに2人の尊い命が失われた。

 事故が起きたのは日曜の昼間。ホームを歩く人は少なくなかったはずだ。誰かがもう少し早く気づいて声をかけていたらと思わずにはいられない。ホームドアが設置されていれば…という無念の声も聞こえてくる。

 事故が起きたJR阿佐ケ谷駅では応急処置としてホームの端に“CPライン”という赤い線が引かれた。一部の弱視の人でも見ることができ、転落防止に一定の効果が期待されているが、最も必要なのは私たちの想像力だ。

点字ブロックの上で歩きスマホする人も

 自身も目が不自由で、白杖を頼りに歩く日本視覚障害者団体連合の職員・三宅隆さんは、昨今の健常者とのトラブルについてこう話す。

「コロナ禍以前に、周りに関心を示さない、状況や気持ちを想像できない人が多いと感じます。“歩きスマホ”がその典型で、目は見えているのに周りが見えず、ぶつかって視覚障害者が転倒する事故も起きています。また、白杖が少し触れただけで怒り出す人もいると聞きます」

 “歩きスマホ”には驚くべき常習犯も確認されている。

「点字ブロックの上で歩きスマホをする人もいます。自分がまっすぐ歩くために使うなんて、信じられません! これはもはや感性の鈍さの問題ですね」(長岡さん)

 感性の鈍磨は、つまるところ自分には関係ない、他人事と思っているからではないか。

全盲ではなく白杖を持たぬ人も

 視覚障害というと全盲のイメージが強いかもしれないが、実際はそれほど多くない。

 視野の一部が欠けていたり、眼鏡をかけても視力が弱かったり、ある明るさでは見えにくいという人が多く、見え方は人それぞれ。

 また、後天的に視力が悪化した人が多く、糖尿病などの病気が障害の原因になることもあるという。つまり、誰もが視覚障害者になる可能性があるということ。決して他人事ではないのだ。

 街で見かける白杖を使って歩いている人の中にも、中年期以降に視力を失い、必死に訓練をして日常生活を送れるようになった人も少なくない。そこで意外なのが、全員が白杖を持っていたり、介助者や盲導犬と歩いているわけではないことだ。

「日常生活に不便を感じながらも、どうにか生活できる場合は、白杖すら持たない人もいます」(長岡さん)

 特に年を重ねてから目が不自由になった場合、障害を負った現実を認めたくないという理由で、白杖を持つことに抵抗がある人が多いのだという。しかし、それだけが理由ではない。

「視覚障害者と知られることで子供の結婚に支障があると考える人もいれば、障害という弱みにつけ込んだ犯罪に巻き込まれないか心配する女性もいます」(長岡さん)

 安心・安全に日常生活を送るために必要な白杖を手放さざるを得ない厳しい現実がそこにはあるのだ。目の不自由な人が目の代わりとして頼るものは、白杖のほかに、ガイドヘルパーと盲導犬の存在があるが…。

「盲導犬は訓練も飼育も大変なこともあり、数は少ないです。ガイドヘルパーは買い物もしてもらえて最も安心感があります。

 でも、24時間のサポートは難しい上、コロナ禍で休職や離職する人もいれば、利用する側がサービスを拒否する場合もあります。その場合、慣れない白杖をやむを得ず使い始めた人もいるかもしれません。

 また、白杖を持たずに探るように歩いている人がいるかもしれません。困っている素振りがないか、まずは見守ってもらえればありがたいです。その上で、もしも必要だと思ったら、迷わず声かけをしてください」(三宅さん)

コロナ禍での安心な誘導方とは?

【1】袖口などをつかむ

 健常者は自分の体の一部に手を添えてもらうため、視覚障害者の白杖を持っていない方の手首をつかむ。素肌が触れ合わないよう、袖口などをつかむと安心。

袖口をつかんでいる写真

【2】肩かひじを持ってもらう

 袖口を持ち、そのまま健常者側の肩かひじに導き、手を添えてもらう。どちらがよいかは、視覚障害者に尋ねて選んでもらうと親切。

肩か肘を持ってもらっている

【3】半歩先を進む

 視覚障害者に手を添えてもらったまま、「歩きますね」と声をかけて半歩先を歩く。誘導する必要があるので、完全な横並びはNG。歩くスピードは普通の速度で。道を曲がる、障害物を避けたいときなどは、事前に知らせること。

→視覚障害者にかける言葉「大丈夫ですか?」はNG。正解は?

教えてくれた人

東京視覚障害者生活支援センター所長・長岡雄一さん

東京視覚障害者生活支援センター所長・長岡雄一さん

視覚障害者を対象に、単独歩行などの訓練、就職のためのパソコン技能習得などのサービスを提供している。

日本視覚障害者団体連合・三宅 隆さん

情報部部長  視覚障害者の困りごとを集め、行政など必要な機関に要請をしている。自身は小学生の頃に目の障害を発症。

撮影/浅野 剛

※女性セブン2020年9月17日号
https://josei7.com/

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