2020.10.04   

新『半沢直樹』最終話|驚愕のラストまでを徹底解説。コロナ禍の政治に訴える半沢に期待しないではいられない

 先週(9月27日)最終回を迎えた堺雅人主演『半沢直樹』。終わってしまってから初めての日曜日、半沢のない日曜夜9時なんてさびしすぎる。未だ興奮冷めやらないなか、日曜劇場研究ライター近藤正高さんが、怒涛の最終回を完全に整理、また、前作からの流れと物語構造を解析、次回作の可能性にまで迫ります。

半沢直樹最終回

イラスト/サイレントT

中野渡が半沢と大和田を動かしていた

 先週9月27日、『半沢直樹』がついに大団円を迎えた。前回、半沢(堺雅人)は、与党幹事長・箕部(柄本明)が銀行と組んだ不正の全貌をあきらかにするまであと一歩というところで、思わぬ伏兵に阻まれる。味方についたはずの大和田、さらには中野渡頭取(北大路欣也)が箕部に証拠書類を渡す現場に立ち会ってしまったのだ。半沢は一転して、銀行員生命の危機に立たされる。しかし、証券会社時代の部下・森山(賀来賢人)とスパイラル社長の瀬名(尾上松也)らにはっぱをかけられ、あらためて巨悪に立ち向かう覚悟を決めた——。

 最終話は意表を突かれることの連続だった。それとともに、これまでドラマを見ていて生じた疑問がすべて回収された。まず、中野渡が箕部に渡したのは、不正の決定的な証拠ではなかった。あの場に大和田が居合わせたのも、彼を箕部の懐に飛び込ませ、ひそかに身辺を探らせるための中野渡の策であった。ついでに、あのとき大和田が半沢に箕部に対して土下座を強要したのは、“お芝居”だったという(そのわりには力が入っていたように思うけれども……)。

 ともあれ、中野渡は、旧東京第一銀行をめぐる不正の責任をすべてかぶって自殺した親友・牧野副頭取(山本亨)のためにも、この際一気に膿を出そうとすべく、半沢と大和田を動かしたのである。

 しかし、肝心の箕部側の不正を証明する決定打が見つからない。そこで重要な役割を果たしたのが、先の生放送でも福澤克雄監督より活躍が予告されていた児嶋一哉演じる笠松だ。半沢は笠松を呼び出すと、彼が秘書についていた国交大臣の白井(江口のりこ)に不正をただすため動いてもらえないかと説得する。半沢が見たかぎり、白井は箕部の悪事をまだ知らない様子であった。しかも彼女は、キャスター時代には政界の汚職を報じようとしたところ圧力をかけられた経験を持っており、政界進出にあたってもクリーンを売りにしていた。それならば、事実を知ればきっと彼女は動いてくれるに違いないと踏んだのだ。

 もちろん、箕部にはむかえば白井は地位を失う。それだけに笠松は躊躇し、彼から事実を知らされた白井もすぐには動こうとしなかった。だが、中野渡からも説得を受け、白井は笠松とともに最後の最後で半沢の側につく。その舞台となったのは、タスクフォースの乃原(筒井道隆)が、自分たちのつくった帝国航空の再建計画を銀行にのませるため用意した報告会見だ。乃原はマスコミを集め、白井と箕部の立ち会いのもと、中野渡を呼びつけて屈服させるつもりであった。だが、そこに現れたのは、頭取の命を受けた半沢だった。半沢は、タスクフォースに再三求められていた帝国航空の債権放棄をあらためて拒絶すると、本丸である箕部の不正を暴いていく。当然、これに箕部は激怒。「事実無根だ。とんでもない濡れ衣だぞ。名誉棄損だ。発言を取り消せ謝罪しろ謝れっ!」と彼がまくし立てたところで、会見場に大和田が現れた。そして半沢にあるものを渡す。それは、箕部が海外の銀行につくった隠し口座の入金記録であった。

 笠松は箕部が会見場に向かった隙に、白井とともに幹事長室のパソコンから隠し口座のある銀行を突き止めていた。これを白井が、金融庁から国税庁に異動させられた黒崎(片岡愛之助)に電話で伝える。黒崎はその銀行から入金記録を入手、即座にデータを大和田に送ったのである。まさに連携プレイ。銀行を突き止める際には、スパイラルの瀬名から提供されたファイル復元ツールが威力を発揮した。

 こうして箕部は決定的証拠を突きつけられたあげく、白井からも半沢と国民に謝罪するよう迫られ、ついに土下座する。このあとマスコミに追われながら、一目散に逃げる姿が滑稽だった。

前シリーズの最終話には出てこなかった「終」

 さまざまな疑問に解答が出た最終話だが、前作のラストで生じた謎……不正を犯した大和田は常務からヒラ取締役への降格にとどまったのに対し、彼をただした半沢がなぜ証券会社に出向させられたのかについても、7年越しに答えが明かされた。

 中野渡が半沢に直々に語ったところによれば、それはまず第一に行内融和のためであり、また出向は半沢に証券の世界を知ってもらうためであったという。この配慮からも、中野渡が銀行内で実権を持ち続けた理由がうかがえよう。今回、不正の追及のため、敵対する大和田と半沢を一緒に動かしたのも、かなり大胆な戦法だが、結果的に銀行を守るだけでなく2人のためにもよかった。何しろ、最後の最後で、大和田は半沢に憎まれ口を叩きつつ、銀行をやめようとしていた彼を思いとどまらせ、銀行の建て直しのためにも必ず頭取になるよう激励したのだから。一体誰がこんな結末を予想しただろうか。

 同時に、今後も『半沢』シリーズを続けるのなら、ここで大和田を半沢と和解させたのはかなり思い切った決断といえる。そもそも原作小説ではシリーズ2作目にしか登場しない大和田を、ドラマでは再登板させたのは、半沢との対立を軸に物語を展開しようとしたからだろう。そのおかげでドラマはおおいに盛り上がったわけだが、大和田がいなくなれば、半沢は今後何をよりどころに活躍するのだろうか?

 いや、おそらく福澤監督をはじめスタッフは、ひとまず先のことは考えず、このシリーズにすべてを注ぎ込んだに違いない。ラストカットで「終」と、前シリーズの最終話には出てこなかった一文字を出したのも、すべてを出し切ったという関係者の思いを込めたのだと筆者は受け取った。

コロナ禍を念頭に置いていた

 今シリーズは、コロナ禍のため当初予定より3か月遅れのスタートとなり、途中にも撮影の遅延から急遽生放送が設けられるなど、かなりイレギュラーな形となったとはいえ、それがかえって話題を呼んだ。逆に言えば、予定どおり放送されていたら、これほどまでには盛り上がらなかったかもしれない。

 コロナがなければオリンピックも無事に開催されていたわけで(考えたら五輪開催が決まったのも7年前、前シリーズの最終回直前だった)、『半沢』はその開幕直前に、おそらく世の中が(少なくともテレビ局は)浮かれた状況下で最終回を迎えていただろう。そうなっていたら、最後まで緊張感が保てたかどうか。また、俳優たちが前作にも増して演技に力が入ったのには、世の中がこんな状況になったことも少なからずあるはずだ。最終話で半沢が箕部を追い詰めたときの以下の決めゼリフにいたっては、コロナ禍を念頭に置いていたことはあきらかである。

「政治家の仕事とは、人々がより豊かにより幸せになるよう政策を考えることのはずです。いまこの国は大きな危機に見舞われています。航空業界だけでなく、ありとあらゆる業界が厳しい不況に苦しんでいる。それでも人々は必死にいまを耐え忍び、苦難に負けまいと歯を食いしばり、懸命に日々をすごしているんです。それはいつかきっと、この国にまた誰もが笑顔になれるような明るい未来が来るはずだと信じているからだ。そんな国民に寄り添い、支え、力になるのがあなたがた政治家の務めでしょう。あなたはその使命を忘れ、国民から目をそらし、自分の利益だけを見つめてきた。謝ってください。この国に懸命に生きるすべての人々に心の底から詫びてください!」

 視聴者の側も、前シリーズから7年、さらにスタートが延びたとあって、ますます期待が高まった。そこへ来て、俳優たちが顔を近づけ合い、ときには手や体を絡め合わせる演技は、3密が禁じられた現状からすれば掟破りとあって、私たちを興奮させた。

みんなに愛される半沢

 それにしても、本作における半沢のほかの登場人物たちからの愛されっぷりは半端ではなかった。前回の第9話で、これまでさんざん無茶な頼みを引き受けてきた同期の渡真利(及川光博)が、半沢からいまさらながら「おまえには絶対に迷惑をかけない」と言われ、「迷惑かけないって何だよそれ。俺はね、おまえのような男こそ人の上に立つべきだと思ってんの。銀行のトップに行くべきだって。だからこそ危ない橋も渡ってきた。そこんとこ、見くびらないでもらえます?」と返していたのには、ちょっとキュンと来た。

 最終話では、元部下の森山から「俺はあなたに出会って初めてこんな男になりたいと思った」と告白され、かと思えば、これまでさんざん争ってきた黒崎にまで「さすが私が狙った、お・と・こ」と言われていた。しかし誰より半沢を信じ、愛していたのはやはり妻の花(上戸彩)だろう。半沢が銀行を追われるかもしれないと打ち明けたときも、彼女は不平を言うでもなく「仕事なんてなくなったって、生きていれば何とかなる」と励ました。半沢の向こう見ずな行動も、こうした周囲の支えあってこそだ。これも、直接的な人付き合いが避けられがちな現状にあっては、多くの視聴者に響いたはずである。

 いずれは、皆の期待どおり頭取に登り詰めた半沢も見たいところだが、年齢からいっても、まだかなり先の話だろう。筆者としては続編に期待しつつも、今回の最終話を見て、それはもう少しあとでいいような気がしてきた。

 さらに7年、いやもっとあとでもいいので、ぜひまた一回りも二回りも大きくなった半沢と再会したい。同時に気がかりなのは大和田である。半沢に「あばよぉっ!」と言い残して銀行を去った彼(イラスト参照)は、一体これからどんな道をたどるのだろうか。

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新『半沢直樹』1話|半沢の変化に注目!もうおじさんで銀行に戻れるかどうか瀬戸際か

新『半沢直樹』2話|まるで幕末の群像劇のようで興奮!若手社員とのチームプレイで銀行に勝負を挑む

新『半沢直樹』3話「待ってました」片岡愛之助登場!急展開に次ぐ急展開をていねいに解説

新『半沢直樹』4話|バブル入社世代から就職氷河期世代へのエール「君たちの倍返しを期待している」

新『半沢直樹』5話|「あなたからは腐った肉の臭いがする」シェイクスピア劇みたいな「帝国航空」編

新『半沢直樹』6話|仲間たちのクビを切るのはつらい、だが会社を守るためには…闘う石黒賢

新『半沢直樹』7話|白井大臣をやり込めたキーワードは半沢の原点「ネジ」!

『生放送!!半沢直樹の恩返し』が期待以上に恩返しだった。俳優たちの演技プランに興味津々

新『半沢直樹』8話|箕部幹事長(柄本明)に震える、現実とのシンクロにもゾクリ

新『半沢直樹』9話|「あなたのしたことは、懸命に働く全銀行員への裏切りにほかならない」今夜最終回、千倍返しだぁっ!!

 

『半沢直樹』(前回シリーズ、新シリーズ)は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

半沢直樹スピンオフ企画「狙われた半沢直樹のパスワード」は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

文/近藤正高 (こんどう・ まさたか)

近藤正高の似顔絵です。イラストはまつもとりえこ

イラスト/まつもとりえこ

ライター。1976年生まれ。ドラマを見ながら物語の背景などを深読みするのが大好き。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけしと北野武』(いずれも講談社現代新書)などがある。

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