2018.04.29 |サービス   

「手話サービス」東京五輪を見据え増加中、空港でも開始

 いよいよ2年後には東京五輪が開幕される。日本が世界各国から注目を浴び、今後ますます多くの人々との交流の場が増えると期待されている。そこで見直されているのが、コミュニケーションの大切さ。

 駅や空港、銀行や行政の窓口で、視覚的な言葉である手話サービスが広がっているのだ。

羽田空港国内線第2旅客ターミナルのサービスカウンター。遠隔手話通訳サービスを希望の場合、用意された専用タブレット端末を通じて、手話通訳士が、聴覚障害を持つ利用者と空港スタッフとの同時通訳を行う。ANAではこのサービスを今後、国内空港に順次、展開していくことを検討(画像提供/ANA)

代理電話サービスにつづき遠距離手話サービスを始めたANA

『ANA(全日本空輸)』では、一昨年4月に日本初となる空港カウンターにおける遠隔手話通訳サービス(※1)の提供を開始。まずは羽田空港国内線第2旅客ターミナルの北口と南口に新設された『Special Assistance(スペシャルアシスタント)カウンター』に導入された。

※1:遠隔手話通訳サービス
お店やサービスカウンターなどの窓口に聴覚障害のある人が来た際、タブレットを用いて、オペレーターが窓口係員と利用者の言葉を手話と音声で同時通訳するサービス。

「2010年より予約・案内センターなどでは代理電話サービス(※2)を提供してまいりましたが、耳や言葉の不自由なお客様とのコミュニケーション環境をより一層、拡充するため、遠隔手話通訳サービスを用いたサポートをスタートさせることになりました」と話すのは、同社・おからだの不自由なかたの相談デスクアシスタントマネジャーの根本由里子さん。

※2:代理電話サービス
宅配の再配達を依頼する、メーカーに問い合わせをする、病院やチケットを予約する等、聴覚障害者が電話をかけたいときにテレビ電話・チャット・メール・FAXを使ってオペレーターが対応する通訳サービス。

 これまで『ANA』では空港カウンターで聴覚障害のある乗客などが各種手続きをする際、筆談ボードによる案内を行ってきた。しかし、空港という特性上、スピードが最優先される場面も少なくはない。

「例えば、予約や事前の準備は終えられていても、天候などの影響で飛行機が遅延になってしまったり、欠航になってしまうこともあります。筆談の場合、端的に必要な情報をスピーディーに書いてやりとりを行わなくてはいけないんですが、やはり係員もお客様もお互い焦ってしまったり、文章を伝えることだけに気がいってしまい、お互いの表情確認がなかなか取れず、細かな部分まで配慮できないこともあったかと…。そういった点などが、目と目を見て会話ができる遠隔手話通訳サービスで解消されました」(前出・根本さん)

 チケットを紛失した、搭乗手続きがわからない、聴導犬を一緒に搭乗させたい…。そんな細かな相談も、専用のタブレット端末を通じ、オペレーターが乗客と空港係員のやりとりを手話と音声によって同時通訳することで、円滑に対応ができるようになったという。

 しかし、健常者でも突然のアクシデントというのは不安に駆られるもの。また、緊急の場合、電子掲示板は文字を打ち込む時間を要するため、アナウンスが先に流れてしまう。聴覚障害者の場合、周囲のざわめいた様子に何かが起こったことを察してからの行動となるので、どうしてもタイムラグが生じてしまうという課題もある。

「少しでもお客様の不安を解消できるように、今後もそれぞれの求められるサービスを提供していきたいですね。遠隔手話通訳サービスがあることを知らないかたもまだ多いと思うので、多くの人に知ってもらいたいです」(前出・根本さん)

まだまだ足りない手話通訳士

 2年前の4月に「障害者差別解消法」が施行され、障害を理由とする差別の解消と障害者への合理的配慮がさらに求められるようになった。

「企業が障害者を受け入れようとするスタンス、理解が少しずつ深まってきたという気がします」

 そう話すのは、前出の遠隔手話通訳サービスなど、福祉分野におけるソリューション事業を手がける『プラスヴォイス』代表取締役社長の三浦宏之さんだ。昨年は『新生銀行』(新宿フィナンシャルセンター、横浜フィナンシャルセンターの2店舗)が同社の遠隔手話通訳サービスを取り入れた。これは国内銀行初の試み。

「20年前、聴覚障害を持つかたからの相談件数で最も多かったのが宅配業者の不在表連絡への対応に困る、といった内容でした。そんななか、次第に障害者の自立化も進み、最近ではクレジットカードや銀行、保険などのサポートを必要とする声が上がってくるようになった。法律的に第三者の立場では介入できないこともあり、企業開拓を任せられるようになりました。プライバシーの問題については、当然、企業側と守秘義務契約を結んでいます」(三浦さん)

 デバイスの普及やブロードバンド環境が整ったことで聴覚障害者と窓口との繋がりが、社会とのかかわりをより広くしていく。

 そんな間を取りまとめる手話通訳士の数はまだまだ足りていない。これまで、ボランティアを中心として行われてきた“手話通訳”という担い手は公務員に多かったりもした。そのため人材確保の難しさもあるという。

「手話通訳士のなかでも評判がいいのは、利用者の気持ちをきちんと伝えてくれるオペレーター。利用者が怒って伝えるときに、同じように怒った表情で手話通訳をする、そういうスキルは単なる手話技術だけではなく、その人個人の心のあり方も関係すると思います」(三浦さん)

 大事なことは“もっと相手を知ろう”という思い。そんな気持ちをお互いが持ってこそ、はじめて新たな芽が生まれてくるはずだ。

※女性セブン2018年4月19日号

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