2020.11.09   

『養生訓』と猫の写真を組み合わせた新感覚の健康本『ニャン生訓』が話題!【著者に訊く】

 江戸時代の儒学者であり本草学者でもある貝原益軒が記した『養生訓』という書物がある。300年も前に書かれたこの書が今なお読み継がれているのは、普遍的な事実や考え方が示されているからだ。この『養生訓』に猫の写真を組み合わせた新感覚の健康本『ニャン生訓』が発売され、注目を集めている。著者の熊谷あづささんに『ニャン生訓』の読みどころを直撃した。

猫を愛でながら『養生訓』の言葉に触れられる本

 食材の選び方や薬の効能、日ごろの心構えなど、心身の健康という側面から日常の様々な観点を切り取ってその効果や理由が解説されている『養生訓』。『ニャン生訓』は、『養生訓』の中から現代にも通じる教えを抜粋し、見開き2ページの中で現代語訳と解説とともに内容に沿うような猫の写真と猫に関する情報を盛り込む形で展開されている。

 本書は三章立て。第一章「こころ」では、“清福を知るべし”“慎みは畏れを本と為す”“快楽に流されるべからず”他、第二章「食」では、“魚は焼いて食らふべし”“夏は冷たきものを控へよ”“多飲は禍となりけり”他、第三章「暮らし」では、“口を開いて眠るべからず”“踊りで気を巡らせよ”“目をふさぎて落ち着けよ”他と、江戸の健康法は、そのまま現代を生きる我々も、ハッと思い当たることばかりだ。

単行本『ニャン生訓』の表紙画像

江戸時代の健康法と猫の生き方には、コロナ禍を生きるわたしたちに教えてくれることがたくさんある

『養生訓』と猫、この一見意外な組み合わせは、どのような発想で生まれたのだろうか。

「私はもともと猫が好きで、今は2匹の猫と暮らしています。以前から『いつか、猫に関する本を出せたらいいなぁ』と夢見ており、企画書とサンプルの原稿を書いたりしていました。古くからの友人でもある担当編集さんから『何か本を書きませんか?』と声をかけていただいた時に、張り切ってその企画書をお見せしたんです。結果はボツだったのですが、『猫という着眼点はいいので、猫と「養生訓」を組み合わせるのはどうでしょう』とご提案をいただきました」(熊谷さん、以下「」同)

身体のみならず心の健康にも言及している

 大学時代に『養生訓』を読んだことがあるという熊谷さんだが、あらためて読み返す中で新たな発見があったという。

「健康指南書という印象が強かったのですが、身体の健康はもちろん、心の健康にも言及している内容であることに驚きました。私自身、心が不安定な人間なものですから、同じような想いを抱えている方たちに『養生訓』の言葉を届けられたらと思いました」

人気の猫写真家の撮影した猫たち

 企画が成立後は、『養生訓』から現代人に役立つ言葉を探したり、猫写真を検討したりと試行錯誤を重ねながら構成を固め、猫の写真は人気の猫写真家・沖昌之さんが撮影したものに決まった。

「以前からSNSなどで沖さんの猫写真を拝見していて写真集も持っており、最初の打ち合わせの時には写真集にサインをいただいてしまいました(笑い)。『ニャン生訓』でご一緒できたことは今でも夢のような出来事です」

『ニャン生訓』は熊谷さんにとって初めての著作となるだけに、思い入れはひとしおなのだそうだ。自身が特に気に入っているという養生訓を教えてもらった。

「養生訓の教えという意味では“口数は少なくすべし”でしょうか。貝原先生は、言葉を慎んで不必要な発言を控えることが徳と健康を養う道だと説いています。私自身、誰かが何気なく口にした言葉に傷ついたり怒りを覚えたりしてイヤな気持ちを引きずってしまうこともあったりするので。せめて自分は人様を不快にさせないよう、発する言葉には気をつけようとあらためて思いました」

 また、『ニャン生訓』は養生訓の言葉とともに、沖昌之さんが撮影したユニークで愛らしい猫の写真を楽しめる本でもある。

「写真選びもやらせていただいたのですが、興味を惹かれる写真ばかりで取捨選択に悩みました。見るたびにクスッと笑ってしまうのは、“踊りで気を巡らせよ”の養生訓のページに載っているダンスの練習をしているかのような茶トラさんの写真ですね。ほかにも、高い壁を見上げている子猫とか、天を仰いでいるようなカットとか、『ニャン生訓』に掲載されている写真は見るだけで心がフッとゆるむものばかりなんです」

まるでダンスをしているような茶トラ(撮影/沖昌之)

高い壁を見上げる視線がなんとも愛らしい子猫(撮影/沖昌之)

空に向かって手を伸ばす猫

天を仰いでる!?不思議なポーズ(写真/沖昌之)

『養生訓』の言葉に励まされて『ニャン生訓』が完成

 読む人に大きな癒しをもたらす『ニャン生訓』だが、本が出来上がるまでには多くの苦労があったという。

「本には養生訓とその解説、猫の写真、そのページの内容にそぐうような猫の情報の4つが必要なのですが、『これは!』と思う養生訓があっても説得力のある解説ができなかったり、うまく合致するような猫の情報が見つからなかったりと、何度も冷や汗をかきました」

 また、タイトなスケジュールで、一時は1日24時間のうち20時間は『ニャン生訓』と向き合っているような状態だったそうだ。

「何度も書き直しをした部分がたくさんあるんです。睡眠不足と疲労と極度のプレッシャーのせいか、結膜炎と口角炎が1か月以上治らなくて、目薬と塗り薬を机の上に置いて仕事をしていました。20年近くライターとして仕事をしてきたものの、まだまだ未熟者であることを痛感しました」

「己を愛せよ」と猫たちが教えてくれる

 心身ともに過酷な状況が続く中で、熊谷さんの大きな救いなったのが『ニャン生訓』でも紹介している『養生訓』の言葉だという。

「繰り返し原稿にダメ出しを受けると自分自身を否定されたような心境になり、自分を嫌いになってしまいそうになるんです。そのたびに“己を愛せよ”の教えを読み、『自分で自分をダメだと思ってはいけない』と自分に言い聞かせました。また、“呼吸はゆっくりと行い、深く丹田に入れる”、“自分の手で按摩や指圧をするのもよい”といった教えを思い出し、強い焦りや不安を感じた時には腹式呼吸や軽いストレッチをするようにしていました」

ブチの猫と茶トラの猫

さまざまなポーズや表情を捉えた猫の写真に心がほんわかしてくる(写真/沖昌之)

 熊谷さんは、『ニャン生訓』を無事に出版できたのは『養生訓』のおかげだと語る。

「『ニャン生訓』はどのページからでも読むことができますし、読むたびに健康や江戸文化や猫に関する知識が増えていくような作りになっています。不透明な将来や新型コロナの流行など、様々な不安を抱えている方の心に『ニャン生訓』を通して『養生訓』の言葉が届くことを願っています」

著者プロフィール

熊谷あづさ(くまがい・あづさ)/ライター。猫健康管理士。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。ブログ:「書きもの屋さん」、Twitter:@kumagai_azusa、Instagram:@kumagai.azusa

【データ】
書名:『ニャン生訓』 (集英社インターナショナル)
養生訓/貝原益軒 写真/沖昌之 現代語訳・解説/熊谷あづさ
価格:1500円(税別)

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