2018.05.08 |暮らし   

変わる延命治療の考え方、“尊厳ある死”迎えるには

 昨年発表された最新の統計(2016年度)によると、日本人の平均寿命は男性が80.98才、女性が87.14才と過去最高を記録。日本は世界でも男女ともに2位の長寿大国である。だが、そこには、人生の最期をどう迎えるかという問題がつきまとう。すなわち、“命を延ばす治療”を行うか。治療を始めたのならば、やめるかどうかだ。

 延命治療とは、今のところ定義は明確に定まっていないが、一般的に、老衰や病気などで回復する見込みがなく、死期が迫っている患者に対して行う“生命を維持するための医療行為”のこと。

 延命治療として行われることが多いのは「人工呼吸器」、「人工栄養法」、「人工透析」だが、死期が迫っていない患者の病状維持や回復のために行うこともある。

「入院時に意思確認をする病院は多くない」と言う木村病院・木村厚院長に、延命治療について話を聞いた。

「入院時に意思確認をする病院は多くない」と木村さん(写真は木村病院提供)

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ここ10~20年で延命治療に対する考え方が変わってきた

 私が医師になった40年前は、患者を1分1秒でも長く生かすことが重視されていて、がんの末期であろうができる治療はすべて行い、途中で中止することはありえなかった。

 心臓が止まりそうになれば心臓マッサージを行い、血管に管を入れ、人工呼吸器をつけて必死に救命する。亡くなったら、医師も家族も「これでダメならもう仕方がない」と、諦めるという考えでした。

 変化を感じるのは、ここ10~20年です。延命治療をしても容体が回復しないばかりか、患者や家族がつらい思いをすることがある。患者が望まない延命治療をすることで、本人の意思を尊重した“尊厳ある死”を迎えられないのではないか――そんな疑問から、延命治療に対する考えが変わってきました。

 超高齢社会を迎える日本で、これ以上の医療費膨張を防ぎたいという事情も少なからずあるように思いますが、それ以上に、患者の意思が大きな声となり動きとなりました。

 厚労省もそうした動きを受けて、ガイドラインを策定し普及しつつありますが、本質をあまり知らないままに「延命治療はよくない」「延命治療は患者のためにならない」と偏った方向に導くことがないよう注意が必要だと思っています。延命治療にもさまざまな治療法がある。

延命治療、受けるか受けないか…二択ではない

 どんな治療法なのか、それを受けるか受けないかを考え、忘れないでほしいのは「途中で中止してもいい」ということ。延命のための治療を数か月受けたけど効果がないからやめる、遠方にすむ家族が病院に来るまでは人工呼吸器をつけていたいけど家族が看取ってくれるならもうそこまででいい――やるかやらないかの二択ではないんです。だからこそ、本人の意思は重要です。

人工呼吸を「行う」「行わない」など、重症時・急変時の治療方針について意思を確認

 当院では入院のときに、「重症時・急変時の治療方針確認書」(上写真)を書いてもらい、患者や家族の希望をできるだけ細かくうかがいます。難しいのは、認知症などで本人の意思がわからず、家族の意思もわからないケースです。

 身寄りがなく介護施設にいたかたなら、その人がどんな人だったかを施設から聞きます。情報を集めて、医師や看護師、ソーシャルワーカーなど医療チームで話し合い、チーム全体で患者の意思を推定し、時には外部の第三者が同席することもあります。

 延命治療というのは、やめれば命の火が消えてしまうことを意味します。最終判断を下す医師の責任は重い。チームで考え、本人や家族の意思を聞いたとしても、病状や死亡の診断をするのは医師ですから。

「尊厳死」の法制定は必要か

 だから今も現場では、延命治療をやめることについて積極的になれないのでしょう。医師の心の負担を減らし、患者の意思を尊重するために、「尊厳死」法を制定すべきだという意見もあります。

 延命治療をしない、もしくは中止しても、医師が刑事責任を問われないことを定める法律ですが、私は不要だと考えます。さまざまな生き方があり死に方がある。人の生死は法律で決めることではありません。ガイドラインに従って、関係者みんなで話し合って決めるべきです。

※女性セブン2018年5月3日号

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