2016.07.29 |暮らし   

毒蝮三太夫 年寄りは「古都」になれ、若者は「懐古」しろ

“年寄りのアイドル”として人気の毒蝮三太夫。実は福祉や介護に関して大学で教鞭を執っているのだ。その毒舌の裏に隠された、老人を元気にするコミュニケーション術とは!?

毒蝮三太夫全身

「もうじき仏壇に入りそうなババァが揃ってるな」

「佃煮のようなババァだな」

「五百羅漢の土用干しのようなジジィだな」

 ギョッとする毒舌をお年寄りに吐きまくるにもかかわらず、お年寄りからは「まむちゃん!」「まむしちゃん!」と歓声をもらっているのは、「年寄りのアイドル」として不動の地位を築いている毒蝮三太夫だ。

 冒頭のやりとりは、自身がパーソナリティーを務めるTBSラジオ『ミュージックプレゼント』のひとコマ。毎週月曜から金曜まで生中継されるこの番組は、45年にもおよぶ長寿番組で、その現場には毒蝮目当てのお年寄りが毎日わんさか集まってくる。初対面のお年寄りが、彼に心を開くのはどうしてなのか?

「ババァたちにひどいこと言っても許されるのは、オレの特権だよ(笑い)。イヤなこと言っても、相手を傷つけずに笑顔になってもらうには、高等なテクニックが必要。オレの江戸っ子気質というか、育ってきた環境なんかもあるから、誰でもマネできるわけじゃないよ」(毒蝮・以下同)

 長年老人を元気にし続ける毒舌パワーが注目され、近年は「介護」や「老人福祉」の専門家としても講演などに引っ張りだこだ。15年前からは聖徳大学で客員教授として福祉コミュニケーション論の教鞭を執る。

「オレは介護の専門家ってわけじゃない。だけど、45年間毎日年寄りと会って話してきたから、年寄りとのつきあい方はわかってるんだよ」

 喜寿を迎えたとは思えぬ声の張り、背筋にものさしが入ったようなピンとした姿勢で毒蝮節が飛び出してきた。これこそが毒蝮の最大の魅力なのだろう。

「年寄りには、笑顔で話しかける、肩に手をかける、気にかけるという、“3つのかける”が大事。まずは、笑顔で味方だと思わせること。それができれば、だいたいは大丈夫。そして、肩に手をかけて、安心感を与えることも必要だよな。この2つで、みんな安心するよ」

 最近は、携帯だのメールだのが普及して、お互いの顔を見て話す機会が少ないから、他人の顔色を読むのが下手になっていると毒蝮は指摘する。

「アナログが大事なんだよ。オレのやっていることは、“かまい合い”。声をかけて顔色を見て、話を聞いて、また声をかける。昔の隣組の精神なんだよ。最近は周りがオレのやっていることは“言葉で介護”だなんて言ってくれるけど、オレは介護だなんておおげさなものだとは思ってないよ」

毒蝮流年寄りとのつきあい方とは?

 大学での教え子のほとんどは、核家族で育ち、老人が身近にいない環境だ。当然、そのコミュニケーションも学ばねばならないものとなる。

「学生は年寄りとの接し方がわからない。だから、どう接したらいいのかというノウハウを教えているわけ。

“3つのかける”に加えて、年寄りを尊敬すること。どんな年寄りにも生きてきた分だけの歴史がある。それを尊重して、年寄りに“自分が生きていることは役に立っているんだ”と思わせること。有用感って言ってるんだけど、これがないと、年寄りはイライラするんだよ」

 お年寄りは世の中から弱者として扱われるため、マイナス思考になっている人が多いと毒蝮は感じている。

「だから、若い人が“あなたには歴史がある。あなたは先生ですよ”って思わせてあげれば、相手もいろいろなことを話してくれる。そうすれば、戦争の話や年寄りの知恵なんかも知ることができる。温故知新って言葉があるけど、年寄りはその塊じゃないか」

 会話のコツは、お年寄りの話を遮らないこと。

「遮っちゃうと、嫌がられているんじゃないかと思って、話さなくなっちゃうから。正直、年寄りの話は繰り返しが多いし、要領を得ないこともあるよ。だけど、フリでもいいから、興味を持ってあげることが大切。そうすることで、“生きててよかった”って思ってもらえる。たいしたことじゃないだろ?」

 最近、毒蝮がよく言うのが、“年寄りは古都になれ”ということ。古都とは、京都や奈良、鎌倉など、歴史があって人を魅了し続けている街のことだが。

「古都は、古くからの神社や寺があって伝統は守られている。でも、古いだけじゃない。新しさも取り入れて、若い人も集まってくるだろう? 若い人に“京都や鎌倉に行こう”って誘っても、“古くさいからイヤだ。どこがおもしろいの?”なんて言わないよ。それは、ただ古いだけじゃなくて奥深い魅力があるからだよね。

 だから、年寄りも年をとったら清潔にして、笑顔を作って、みんなが寄ってくるような魅力を持つことが大事なんだよ。それがオレの“年寄り古都論”だ」

 毒蝮は、若づくりをすすめるわけでもなければ、若者に愛想を振りまいて迎合しろと言うわけでもない。自分の生きてきた歴史を古きよき魅力に変える努力をしようと、お年寄りに呼びかけているのだ。

「日本人はもともと農耕民族で、自分が耕したところを見ながら、後ろ向きに進んでいくだろう? その耕したところは、歴史ですよ。そもそも日本人は歴史を見ながら進んでいく民族なの。過去に学びながら未来を見る。だから、年寄りは、生きているだけでレジェンド。若い人には、年寄りに対してそんな気持ちを持ってほしい。オレは、“介護”と“懐古”は同異義語だと思いたいね」

 毒蝮流介護の根幹は、「年寄りは生きてきた歴史を魅力に変え、若者は年寄りの歴史から生きる知恵を学ぶ」という懐古の精神なのだ。

「こうやって人と人との生身のコミュニケーションができるようになれば、年寄りも元気になって、寝たきり老人も減り、医療費だって減る。“言葉で介護”っていうのは、年寄りに生きる気力をもってもらうこと。こんないいことずくめのことがタダでできるんだから、多くの人にやってもらいたいねえ」

写真/小倉雄一郎

※女性セブン2014年6月19日号

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