2016.07.27 |サービス   

狭き門の特養 デイサービス、ショートステイが入所に繋がる

 厚生労働省の発表によると、「特別養護老人ホーム(以下、特養)」には全国で約42.1万人もの入所申し込み者がいるという(2009年)。特養は原則として症状が重く、手厚い看護が必要な人のための低額の施設だが、介護保険の給付費がかさんでいることもあり、厚労省は2015年度からは要介護2以下の新たな入所者を認めないという入所基準改革案も提示している。

歩行器で桜を見るシニア女性

 ますます厳しくなる私たちの老後だが、困ってから探し始めたのでは遅すぎるのが現実だ。特養の実情から高齢者向け住まいの種類まで、知っておくべき基本的な情報と、上手な介護施設の探し方を経験者に聞いた。

 特養は全国に約7800か所あり、その定員総数は約51万人と充分に思えるが、現在、入所を申し込んでいる人、つまり待機者の数は約42万人にものぼる。なぜ、待機者がこれほどまで増加してしまったのだろうか?

「一般的に入所申し込み者数イコール待機者数だと見られていますが、1人が複数の施設に申し込んでいる場合も多いため、実際の待機者数はおよそ3分の1程度だと考えられています。ただ一方で、『申し込んでも無理だから』と申し込みたくても諦める人もいるので、潜在的な待機人数はもう少し多いかもしれません」と話すのは、介護に関する著書も多い作家の本岡類さん。

 9月18日には、厚生労働省が2015年度から特養の入所要件を要介護3以上にするという方針を提示したが、すでに現場では要介護2以下の入所は厳しいものになっていると指摘した。

 介護ジャーナリストの小山朝子さんも、「申し込んでも、特養は先着順ではなく、より生活が困難な人から入所できるシステムのため、いつ入れるかが把握しづらい。実際は、独居で認知症とか介護する人手が全くないという状況でない限り、要介護3でも難しいですね」とシビアな状況を説明する。

食事の手伝いをする介護士:イラスト

 これほど待機人数が膨れ上がった原因は、社会の変化や制度といった次の3つの問題点があると本岡さんは指摘する。

 まずは、高齢者の想定以上の急増。総務省が発表した「高齢者人口の推移」によれば、65才以上の人口は1990年の1493万人から、2010年には2956万人と、この20年間でおよそ倍に。

 2点目は、2000年より導入された「介護保険制度」。これまで介護サービスの有無や特養の入所などを各行政が決め、“低所得者が福祉の恩恵を受けている”というイメージが強かった「措置制度」から、高齢者主体で誰もが介護サービスを利用できるようになったため、制度の認知度と利用者が急増。NPO法人「特養ホームを良くする市民の会」の理事長を務める本間郁子さんによると、

「介護施設の中で介護保険が適用されるのは、特養と、老人保健施設(以下、老健)、介護療養型医療施設の3つがあります。

 しかし、あくまで自宅に帰ることを目的にした短期的な老健と、医療ケアを必要とする介護療養型医療施設に比べ、要介護1から申し込めるうえ、終末期まで入所し続けられる特養への申し込みが殺到したのだと思います」

顔見知りかどうかが意外に大きい

 3つ目の原因として考えられるのが、施設の新設(増床)などに対する国からの補助がなくなったこと。かつては新設費用4分の3を国の許可のもと、国と都道府県が補助していたが、2001年に誕生した小泉内閣により、各都道府県の裁量で直接補助金を出す形に。そのため、財政難で苦しむ自治体では補助が出にくくなり、なかなか新設が見込めないという状況になったという。

 要介護4の清水裕子さん(仮名、92才)は、息子夫婦と同居しながら在宅介護を受けていたが、2年前から認知症の症状が進んだ。そこで、県内の地元特養に申し込んだところ、数か月で入所が決まった。

 清水さんの息子は、「日ごろから、その特養のデイサービスなど短期の介護サービスを利用し、相談に乗ってもらっていたことがよかったと思います」と話す。

 特養の入所順は、通常、要介護度の高さや独居かどうかなどの条件を点数化して決められるが、それ以外の要素も関係すると本岡さん。

「これだけの待機者数なので、点数は同じという場合も多いからです。その場合、顔見知りかどうかということは意外に大きい。知っている人とまったく知らない人がいた場合、目の前にいる困っている人を推薦したくなるのが人情でしょう。どんな介護が必要かもわかっているわけですから」(本岡さん)

 本来、ショートステイは自宅での介護が一時的に困難になった場合に短期入所して介護を受けるものだが、介護保険サービスを使えば連続で最大30日間、1割負担(要介護度による)で短期入所することができる。

 80才の母親を在宅で介護していた加藤智子さん(仮名、56才)の場合、「出張のときなどに、ショートステイを利用していましたが、だんだん日数が長くなり、今はほとんど入所したまま。特養にいながら特養の空き待ちをしているようなものです」という状況だそう。

「これは介護保険サービスを使えば、連続で最大30日間、ショートステイできることを利用したもの。31日目を自費で利用すれば、自宅に帰ることなく、実質特養入所者と変わらない状態になります。しかもショートステイは基本的に先着順ですから利用しやすい。ただし、状況にもよるので介護サービスの相談や計画を作ってくれるケアマネジャーに相談してみて」(本間さん)

※女性セブン2013年11月14日号

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