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生活リハビリに力を入れた介護付有料老人ホーム<後編>

アズハイム光が丘

 前編に引き続き、10年目を迎えた「アズハイム光が丘」を紹介していこう。取材で訪れた日は日比谷花壇とのパートナーシップによる「フラワー・アクティビティ・プログラム」が行われていた。

 1階のリビングダイニングに行くと、ひときわ大きな声で花の特徴を説明している男性がいた。アズハイム光が丘のホーム長・北村将高さんだ。

 この日は12人の参加者にほぼマンツーマンに近い状態でフラワーファシリテーターが付いていた。アズハイムのスタッフもフラワーファシリテーターの養成講座を受講している。1時間で全てが終わり、最後にはそれぞれの作品が全員の前でフラワーファシリテーターの総評を受けるのだが、これが盛り上がる。いつの間にか入居相談員の大友基次さんも参加し、入居者のことをよく知っていないと出てこないコメントをして笑いを取っている。

 フラワーアクティビティは、脳を刺激する効果が研究で実証されているという。参加者の状態を把握しておくことはもちろん、それに合わせた席の配置を行うなど事前準備にも余念がない。視力が落ちてきていても楽しめるように色のはっきりとした花を使うなど高齢者が楽しめるよう様々な配慮がなされている。

 あくまでも楽しむことに主眼が置かれており、個性的な作品が生まれることも多いという。この日はハロウィンも意識してオレンジ色の花が取り入れられていた。十五夜やクリスマス、お正月…など季節も意識した内容にしているという。

 日比谷花壇とはこうしたフラワーアクティビティだけではなく、「フラワーマルシェ」も行っている。これは日比谷花壇が花を提供し、それをアズハイムの軒先で販売する取り組みだ。そうすることで、近隣の住民とのコミュニケーションが生まれ、地域との連携の入り口になるという。地域に根付くための仕掛けの一つとして機能している。部屋に飾るために入居者が購入することもあり、花を起点に様々な効果が生まれているのだ。

「個別ケア」「スタッフの知識習得」…ホーム長の熱い思い

 フラワーアクティビティでは中心となってプログラムをリードしていた、ホーム長の北村さんにアズハイム光が丘の特徴について話を聞いた。

「それぞれ異なる状況、事情でホームに入られた方に入って良かったと思ってほしいです。そのために個別ケアを重視しています。お一人お一人のニーズを掘り下げるために居室担当を置いて、その方をよく理解するようにしています」(北村さん)

「『長野県にもう一度行きたい』という希望を持った車椅子の方がいらっしゃいました。自分が生まれ育った街をもう一度だけ見たいということでしたが、車椅子なのでその方は諦めていたのですね。私が散歩の時にたまたまその話を聞いて、長野に車でお連れしました。夢を叶える個別ケアを目指しています。それぞれの方が望むことを、ご家族の協力もいただきながら引き出しています」(北村さん)

 北村さんの言葉からは、人生を過ごす場所として自分たちを選んでもらったという責任感を強く感じた。そのためにチームワークを重視しているという。スタッフ同士の一体感を念頭におき、半分以上が勤続5年以上とのこと。「介護職離れ」が社会問題化する中、これは高い数字だ。

「もう一つ力を入れているのが、スタッフの知識習得、技能向上です。知識がなければどう対応して良いかが分からず、お互いに不幸になってしまいます。そのために研修に力を入れ、介護福祉士などの資格取得を会社として支援しています。また、金銭的な支援や勉強会も実施しています」(北村さん)

 自ら考え実行する力というコンセプトでスタッフ力の底上げを図っている。正しい知識、資格を取得することがスタッフに自信を付け、個別ケアの実現につながるという。

 新人スタッフへの教育にも力を入れていて、年の比較的近い先輩をメンターとして配置しているとのこと。聞けば社長も気さくな人柄で、差し入れ片手に現場を訪れては職員とコミュニケーションを取っているという。現場の悩みを聞き、若いスタッフの意見も積極的に取り入れる姿勢が見て取れる。

 最後に介護の問題に直面している方、不安を感じている方へのメッセージをもらった。

「介護のことは何でも気軽に相談してほしいです。ここにはケアマネジャー、介護福祉士など介護のプロが揃っています。お茶を飲みに来ていただくのも大歓迎です。地域で気軽に介護の相談ができる、井戸端会議ができる場にしていきたいです。入居を検討しているかどうかに関係なく、介護で悩んでいることがあったら相談してもらえる存在になりたいです。フラワーマルシェや納涼祭もそのきっかけになればという思いで実施しているので、ぜひお越しください」(北村さん)

 アズハイム光が丘はとにかく明るい。それはホーム長の北村さんをはじめ、スタッフの表情、声が作り出している。そして最も印象的だったのが、フラワーアクティビティでの入居者の笑顔だ。フラワーファシリテーター、スタッフ、入居者同士、花がきっかけになって会話が弾む。やはり最終的には人が重要だということを再確認した。

施設_アズハイム15

【データ】
施設名:アズハイム光が丘
公式WEBサイト:http://as-heim.com/hikarigaoka/
所在地:東京都練馬区谷原4-3-23
最寄駅: 西武池袋線「石神井公園」駅徒歩約19分、駅北口より西武バス「成増町」行「谷原中学校」下車徒歩1分
類型:介護付有料老人ホーム(一般型特定施設入居者生活介護)
運営主体:株式会社アズパートナ―ズ
敷地面積:2868.46平方メートル
延床面積:3693.14平方メートル
居室数:83室
定員:89名
入居要件:65歳以上の自立・要支援・要介護者
構造:鉄筋コンクリート造 地上3階建(耐火構造)
開設年月日:2006年5月
料金:Aタイプ(18.20平方メートル 1人入居)の場合──
・プランA/入居一時金(非課税・返還制度有)0円、月額利用料34万5000円
・プランB/入居一時金(非課税・返還制度有)780万円、月額利用料21万5000円
・プランC/入居一時金(非課税・返還制度有)1110万円、月額利用料16万円
月額利用料内訳:家賃、管理費、水光熱費、食費

撮影/津野貴生

【この記事の前編を読む】

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